外伝1 【選ぶべき道】
ーーーーーーーーー選択ーーーーーーーーー
人生には、事ある毎に『選択』という名の道を選ばせられる。
あの時、ああしてれば良かった、こうしてれば良かった。
その『選択』が、後悔に変わる時もあれば、成功、はたまた転機になることもある。
どんな『選択』をしようが、結果は必ずついてくる。その結果に納得できなかったとしても、時間を巻き戻すことはできない。
その時その時の『選択』が、『未来』を象っていく。
さて、今回その大きな『選択』が迫られる少女は、どのような道を選ぶのか......
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
シンゲン、サツキ、レイ、カイリ、クウガ、カンナ、アルフレア、ベルディア、オメガ、ロウラ、ゼータ、シータ、ミューエ、イグシロナ、ガンマ、ネイ、カイナ、アイリス、セルカ......
みんなみんな、失いたくなかった......
なのに、何を間違えてしまったんだろう......
「ーーーー」
世界の崩壊が始まる......
私が、たった一つの『選択』を誤っただけで......
「もう、何も失いたくなかったのに......」
全てを守りたかったのに......
また、家族みんなで仲良く過ごしたいと思ってたのに......
2つの家族に仲良くしてもらいたかったのに......
全て、叶うことのないまま終わってしまった。
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「......る......あ」
耳元で、誰かが囁く声がする。
「でる......あ、でるし......」
ああ、私の名前を呼んでるんだ......
「デルシア」
「ん......んん......」
「もう出る時間よ。いつまで寝てるつもりだったの?」
目の前の金髪の少女、『ミューエ』がやれやれといった顔でそう言う。
「ごめんなさい......」
まだ眠いと感じる瞼をこすり、目をパッチリとさせる。
「あれ......?」
また、『涙』が出てる。
寝起きで出るようなやつではない。別に、悲しくもなんともないのに、ボロボロと涙が止まらなくなる。
「また変な夢でも見てたの?」
ミューエが屈んできてそう言う。
「夢......?」
「ほら、前に言ってたじゃない。『みんなが死んでしまう夢を見た』って」
そういえば、そんなことを言った気がする。
今回も、そうだったのだろうか......
分からない。見ていた夢は、目覚めると同時に薄くなり、やがて何も思い出せなくなる。
「まあ、それはいいとして、そろそろ戦争が始まるわ」
ミューエが真剣な顔になってそう言う。
「うん。分かってる」
もうすぐ、始まってしまう。
私を育ててくれた黒月王国のみんなと、私が生まれ、途中から再び過ごし始めた白陽王国のみんなとが、戦争を始めてしまう。
「止めに行かないと......」
「デルシア、一つだけ言っておくけど、両方とも取るなんて選択はしちゃダメよ。必ず、どちらかを選ばないといけないのよ」
「......分かってる」
「本当に分かっているのかしら。まあいいわ。行きましょう」
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黒月王国と白陽王国。
月と太陽、黒と白、洋と和。
見た感じだけでも様々な対の要素がある国。
この2つの国は、グラン対戦の頃から現代に至るまで戦争を繰り返してきた。
といっても、白陽から攻め入ることはない。常に、黒月からの進行を受け、白陽はそれを迎撃する形だった。
その2つの国が、後に「陽月の開戦」と呼ばれる戦争を始めるのは、もう間もなくのことであった......
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「黒月に宣告する。我ら白陽王国は貴様らの進行を悪とし、我らが領土及び我らが民を侵した罪として黒月にはそれ相応の天罰を受けてもらうものとする。よって、ここに黒月との開戦を宣言する!」
「白陽に告げる。我らが黒月は、長きに渡る争いを終わらせるため、今日この日をもって白陽の歴史を終わらせにかかることにした。よって、ここに白陽との開戦を宣言する」
両陣営の長となるシンゲンとアルフレアがそれぞれに開戦を告げる。
「かかれ!」
「白陽を潰せ!」
両陣営が同時に突撃を開始する。
陽月の平原中央部で、両軍が衝突する。
剣と刀、銃と魔具、騎馬と天馬がぶつかり合い、互いに殺し合いを始める。
1750年11月24日、後に陽月の開戦と呼ばれた戦いが火蓋を切って落とされた。
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「我が名はシンゲン、白陽王国軍の大将であり、王子だ!貴様ら黒月の悪徒を成敗するためやって来た!その場にひれ伏して全員その首を捧げろ!」
「わざわざ出迎えご苦労さんだ白陽の王子よ。だが、生憎我々は貴様らなどに捧げる首はどこにもない。捧げるのは貴様らの首だ」
両国の大将が陽月平原の中央で対峙する。
「貴様ら黒月に奪われた我が同胞の無念、ここで晴らさせてもらう!」
「残念だが、貴様らの無念はそのままの形を残して消え去ることになる。嫌なら尻尾を巻いて逃げろ。逃げたところで、どこまででも追いかけてやるがな」
「貴様の首を奪えたのなら逃げ出してやろう。それまでは我らは退くことが許されん」
シンゲンの刀とアルフレアの剣がぶつかり合い、甲高い音を上げる。
その音に合わせて両軍の部隊が戦闘を開始するーー
「いい?ゼータ。私達は後ろからの支援に徹するのよ。そして、ある程度のところで私が魔法陣を起動させるから、そこからオメガ達を投入してちょうだい」
「了解しましたベルディア様」
「なんとしてでも勝つのよ。デルシアを取り戻すためにも......」
黒月王国第に部隊のベルディアとゼータ。彼女らと黒月王国暗殺隊による白陽への奇襲計画が進められてゆくーー
「クウガ、我らはシンゲン殿と黒月の王子が戦っているところを天馬で飛び越えて敵の本拠地まで行く。天馬騎士隊は奇襲の準備、弓兵隊はシンゲン殿の支援に、全員散開!」
「「「 は! 」」」
「サツキ殿。第一部隊部隊長のレイも連れて行こうと思うのですが、どうですか?」
「そうだな。確かに彼女の奇襲能力は高いが、本拠地が落とされては意味がない。彼女ほど1人で一個小隊を潰せれるような実力者はいない。ここに留まらせておこう」
「了解しました」
「クウガ、我らはなんとしてでもこの戦いに勝つ必要がある。白陽のため、そして、デルシア姉様の迷いを晴らすためにもだ」
「分かっておりますサツキ殿。私はいつ何時でもあなたの傍で仕えさせていただきます」
白陽陣営でも、黒月への奇襲に向けて準備が推し進められていっていたーー
「我らがこの戦いにーー」
「俺達がこの戦いにーー」
「私達がーー」
「我らがーー」
「「「「 この戦いに勝つ! 」」」」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「デルシア、もう始まってしまったわ」
「兄さん......」
戦いの地、陽月平原に辿り着いた時には、もう既に両軍が衝突していた。
中央ではシンゲン兄さんとアルフレア兄さんが激突し、シンゲン側の後方からは天馬騎士隊、アルフレア側の後方からは幾重にも重なった魔法部隊が互いに奇襲をかけようとしている。
いや、アルフレア側には暗殺部隊もある。
真正面から戦う白陽陣営、次の相手の行動を読み、それに備えた攻撃を仕掛ける黒月陣営。
黒月の方が少しばかり有利に事が運ぶようになっている。
「デルシア!」
シンゲンがアルフレアを押し切り、こちらに向かって名前を呼んでくる。
「惑わされるなデルシア!お前の家族は俺達だ!」
今度は、アルフレアがシンゲンを押し出してそう叫ぶ。
「何を言うか貴様ら!デルシアは我らの家族だ!」
再び、シンゲンとアルフレアが刀と剣をぶつけ合う。
「デルシア、まさかそっち側に行ってしまうの?」
奇襲を仕掛ける予定だったはずのベルディアが、本来の役目を放置してアルフレア側の戦場に立っている。
「姉様!まさか、そちらに行ってしまうのか?」
サツキまでもが、私の姿を見て歩みを止める。
「デルシア!」
「デルシア」
「デルシア?」
「姉様!」
みんなが、私の『選択』を待っている。
私が生まれ、人質生活が終わった後から一緒に暮らし始めた白陽のみんなが......
人質として引き取られたのに、本当の家族のように接してくれた黒月のみんなが......
「私は......」
白陽の家族の方にいくか......、それとも黒月の家族の方にいくか......
選択肢は既に掲げられている。あとは、私がどちらを選ぶか......
「デルシア、私はあなたがどちらに着こうとついて行くつもりよ」
隣に立つミューエがそう言ってくる。
頼りになる親友だ......。だから、尚更私の選択肢は重くなる。
「私は......」
みんなの視線が集まる。
たった1人の選択肢に対して、みんな気を張りすぎだと思う。
どちらかを選べと言われても、私はどちらともを取りたい。
私の本当の家族も、偽の形の家族も、みんなみんな大事な存在だから......
「私は、どちらも選べません!」
みんなに聞こえるよう、大きな声でそう叫んだ。
「なっ......デルシア、それは自殺行為だぞ!」
アルフレア兄さんが面食らったかのような顔でそう言う。
「デルシア、今なら許してやる。我らのところに来い!」
「できません!私には、どちらかを選べと言われても、どちらも選ぶことはできません!みんな、私にとって大事な家族なのですから!」
迷うことなんてない。私は両方の手を取る。それだけのことだった。
「もういいデルシア。俺がお前の迷いを晴らさせてやる」
アルフレアがシンゲンを薙ぎ倒す。
「迷いを晴らさせるのは我らだ!貴様らに我が妹はやれん!」
シンゲンも負けじとアルフレアに攻撃する。
ずっと、私を気にしていた全員が、再び戦いを始める。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「本当に、バカな子に育ったわね。両方とも取らないなんて、アルフレアの言う通り自殺行為よ。今からでも遅くないからどちらかを選びなさい」
「ごめんなさい。でも、私には、どちらか片方を選ぶことなんてできません」
「戦争を止めるなんて無理な話よ。こうなってしまった以上、どちらかが倒れるまで戦争は続くわ」
それは分かっている。でも、なんとかしてこの戦いを止めさせたい。どうすれば......
「デルシア様!」
「イグシロナ!」
黒月で私の世話係を担当していたイグシロナだ。あの時から殆ど変わっていない。
「デルシア様がどちらにもつかないと聞いたもので、アルフレア様には連れ戻すと嘘をついてやって来てしまいました」
「なんでそんなことしてまで来たんですか?」
「私はデルシア様の味方でございます。デルシア様がご自分の意志を表明なさられた。私はそれに従うまでです」
「ありがとうございます。イグシロナ。あなたが味方でいてくれることに感謝します」
「当たり前のことでございます。それで、両陣営の戦争を止めるための策が一つだけあります」
「本当ですか!?」
「ちょっとイグシロナ!」
ミューエが私の正面に立つイグシロナを引っ張り出す。
「私はこの子にどちらかを選ぶよう説得してるの!何勝手にデルシアの意志のままにやろうとしてるの?」
「このまま戦争を続ければ、必ずデルシア様が大事になさられてる方のどなたかが死にます。デルシア様はそれを拒んだ。その覚悟、立派ではございませんか。どちらかを選んでも、必ず後悔する選択です。なら、できるだけ後悔しないようにするのが当たり前ではございませんか」
「それはそうだけども......」
「ミューエさん、心配してくださってとても嬉しいです。でも、もう決めたことなので止めないでください」
「......分かったわ。私はいつまでもあなたについて行くつもりよ」
ようやく、ミューエが折れてくれた。
「それで、話がかなりズレてしまいましたが、作戦の方です。両陣営の部隊をそれぞれ1つずつ壊滅させましょう。それで、少なくとも我らに注目してくださるはずです」
「それ以外にないのですよね?」
「今の戦いを、何の準備もなしに止める方法はこれくらいしかございません」
「分かりました。やりましょう」
正月前には完結させます。
色々と悩みましたが、ループものでやりたいと思います。
次回予告
外伝2 【歯止めの刃】
次回からキャラ紹介もしていきます




