第4章1 【再会の時】
白く、本棚が並んでいる空間。
ここに足を運ぶのも何度目になるだろうか。
「来たのはいいが、何を調べればいいのか考えてなかったな......」
こんなにもたくさんの情報がある中で、知りたいことをどう調べればいいのかが分からない。
「とりあえず、適当に本でも読んでおくか......」
特に意味はないのだが、そうすることで、あいつが未来からやって来るのではないかと、変な期待を持っている。
「頭が痛くなるようなタイトルばっかだな......」
改めて思うが、ここの本はタイトルだけで読む気が失せるものばっかりだ。
「知りたいのは、邪龍に関することだけなんだが......」
普通の図書館なら、作者の名前とか、本のタイトルを五十音にして並べられているが、ここの本にそんなルールはない。一応、本を戻すと勝手に元の場所に戻るのだが......
「あ、あった......」
『聖王伝承』
恐らく、タイトルからして初代聖王に関するものだろう。邪龍を封印したのは初代聖王とエクセリアだし、何かあるかもしれない。
「試しに読んでみるーー」
本を開いて言葉を失った。
「なんじゃ、この文字......」
タイトルは読める文字なのに、本文は全くもって読めない文字ーー古代イーリアス語だろうか?ーーになっている。
「たかが800年だから、言葉もそんなに変わってねえと思ったんだが......」
いや、読めねえよ。何書いてあるかさっぱり分からねえ。翻訳機。翻訳機はねえのか!
「そういや、古代イーリアス語って解読が全然進んでなかったっけ......」
この本は読むのに向いていなかった......
それならそれで、読める本を探せばいい。ヨミなら、あの『検索』とかいうので読みたい本を探すのだろうが、俺にはできないらしい。
歩いて探すしか......
「この書庫ってどんくらいあるんだ?」
見渡す限りの本、本、本。
歩いても歩いても壁が見えない。
「世界の記憶って言ってたもんな......そら、壁も見えねえほど広いってことか......」
本当に、この中から知りたい情報をーーいや、知りたい情報がなんなのか分からないけどーー見つけられるのか?
「ん?」
ふと、誰かの視線を感じて後ろを振り返る。
「気のせい......か?」
確かに感じた気がするのだが......。いや、ここには俺以外入って来れないし、気のせいか。気にせず情報収集だ。
そう思って、また前に進む。
「あぁ?」
やはり、誰かの視線を感じる。後ろを振り返っても、横を見ても、上を見たってどこにも、誰もいない。
そう思って、また前を進もうとしてすぐさま後ろを振り返る。
「あ......」
振り返った先に、葡萄染色の髪をした少女が立っていた。
「ネイ......」
服装は違えど、あの髪、角、羽はネイそのものであった。
「ひっ......」
ネイが逃げ出す。
「あ、待て!」
慌てて追いかける。
ネイの体力なら、余裕で追いつくだろうと思っていたが、この書庫が迷路みたいになっているので中々追いつけない。
「クソ、あいつ......」
生きていた。それだけは分かった。しかし、なら、なぜ逃げる必要がある?
ヴェルドあたりが相手なら、まあ、気持ちは分かるが、俺だぞ?俺、あいつに何もしてないよな?な?
と、自分の心に問いかける。
「あ、いた!」
角を曲がりに曲がった場所でネイを再び見つけられた。
「ひぃ......」
ネイが再び逃げ出す。しかし、ここは本棚と本棚の間が丁度一直線の通路になっている。
「逃がさねえよ!」
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
ようやく、ネイの襟首あたりを掴めれた。
無駄に可愛げのある服装をしていたおかげで、襟首が掴みやすかった。
「は、離せ!お主!」
喋り方はヨミと同じになってるのか......。一体、何があったんだ?
「なんで妾の名前を知っておるんじゃお主!というか、離せ!」
おっと、心が読まれていたようだ。
「離せって言われて俺が離すと思うか?離したらお前逃げるだろ」
「変な事言ってないで離せお主!首元が苦しいのじゃ!」
「あ、悪ぃ。んじゃ、こうするわ」
そう言って、代わりにネイの長い髪を掴む。
「お主、それ何も変わってないと思うのじゃが......」
「お前が未だに逃げようとしてるから痛いんだよ。走ろうとするのをやめろ!お前の髪を千切ってしまうだろ」
そう言うと、ネイがようやく逃げるのを諦めた。
「はぁ、生きてたなら生きてたで俺達のところに来いよ。みんな悲しんでーー」
「うるさい。妾は死んだ。お主らのところには帰れん」
俺の言葉を遮ってそう言ってきた。
「お主、ここにどうやって入ってきた?ここは妾以外、立ち入ることができない空間。どうやって入ってきた」
「んなもん、森を歩いてたら勝手に入ってこれたよ。つか、お前の方こそなんでここにいるんだよ」
「妾はここの司書。ここが妾の居場所じゃ。というか、なんでお主がここにおるのじゃ!」
やべぇ。会話が無限ループしかけてる。
「知らねえよ!」
最初の時は勝手に入ってきてしまった。あの時のヨミの顔と似ている。
「あの時のヨミって誰のことじゃ!ヨミは妾1人だけじゃ!」
だろうな。だって未来のやつなんだもん。ツクヨミは時間が違うだけで1人だろうな。
「未来?いくら妾とて、時魔法など......」
ネイが落ち着いて、何かを考え出した。
「まあよいお主。今回は見逃してやる。さっさと出ていけ」
「はいはい、そうですか」
「痛い痛い!引っ張るなお主!その手を離せ!」
「お前も一緒に帰るんだよ!」
力任せに、ネイの体を引っ張る。流石に髪の毛を引っ張り続けるのは可哀想だと思って腕に変えたが。
「なんでお前がここにいるのかは分からねえけど、生きてるのならみんなのところに顔出して、お前には帰るべき場所があるんだよ」
「嫌じゃ」
ネイが俺の手を振り解いて、冷淡な声でそう言った。
「どうしたんだよ。お前らしくねえぞ」
「妾らしくない?」
「ああ、そうだよ。だって、お前はみんなのことを嫌ってはいても、そんな冷たい目はしてなかった。それに、そんな喋り方じゃねえし......」
「他にも、何か言いたそうな目をしておるな。人間」
「ーーお前が邪龍になって自殺する前になるけど、俺のことだけは信頼してくれてたじゃねえか。なのに、なんだその目は......」
「自惚れるな人間。妾はお主らと同じ生き物ではない。故に、お主らと共にいることはない」
「......お前に......何があったんだ」
「......記憶が、全て蘇った。ただ、それだけの話じゃ」
「フェノンの記憶がか?」
「それもあるが、蘇った記憶はそれだけではない。ここにあるもの全てが妾の記憶じゃ」
「この......、本全てがか......?」
「そうじゃ。全部で6兆年分。凄まじい量じゃろ?」
確かに、凄まじい量ではある。それに、6兆年って......
「お前、どれだけの前世の記憶があるんだ?」
「1人だけじゃ。それが、妾。ツクヨミ」
「は?6兆年も生きられるわけねえだろ。例え、龍だとしても、10万年が最高だって話なんだし......」
「言ったじゃろ?妾は人間ではない。いや、元は人間だったかもしれない。でも、人間ではない」
「何言ってるか......全然分かんねえぞ」
「要するに、不老不死ということじゃ。それでも、邪龍として暴走してた時に、聖王と聖龍の力で死ねたのじゃがな......何が狂うたか。記憶が戻っては意味がなくなった」
何を言っているのか分からない。
「出ていけお主。ここは人間が入っていい場所ではない」
「出ていけって言われて、お前一人を残して出るわけねえだろ。お前が生きてるんだから、お前も連れて帰る。行くぞ」
そう言って、再びネイの手を取る。
「あまり、妾を怒らせない方が良い。妾の感情は遅れてやってくる。気づいた時には、周りに誰もいない」
ネイの方を見る。ネイが左手で俺に向けて、黒色の玉を作っていた。
「何を......」
そこから先のことは覚えていない。
ただ、気づいた時には、ギルドの救護室で眠っていた。
次回予告
第4章2 【警告の時】
第4章の幕開けじゃー!予定では、第2章くらいの長さで終わらせたいと思っております。第4章もよろしくお願いします。
後、ネイりんの服装が変わってるという描写がありましたが、今までがワンピースっぽいやつで、今は、スカラカットネックソーに無地の羽織を来ている状態です(無駄な情報。キャラの服装なんて小説に必要ない)要するに、最初がリ○ロのエ○○アの紫ベース版で、今がバ○○リの有○の初期服に何か羽織ってるってことですよ!(色々とアウト)




