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グランストリアMaledictio  作者: ミナセ ヒカリ
第3章 【記憶の結晶】
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第3章30 章末 【記憶の結晶】

「ーーというのが、大体の報告内容だ」


 クロムの説明は、大雑把だが、かなり分かりやすい。しかし、今の私達にはそれを理解する頭がない。


「......ネイが死んでしまったあとでこんな話をしても聞かない、ってのは分かってた話なのだが......」


 クロムがため息をついてそう言う。


「あれから、自警団の皆がネイの遺体を探しているが、これといった手掛かりはない。ただ、ヒカリの時と違うのは、ネイが消滅した可能性があることだな」


 クロムの言うように、ネイの遺体は見つかっていない。否、見つからないと言った方が正しいだろう。


 あの時に見た景色は、1本の剣が落ちてくるだけだった。ネイが体の傷を自動的に治せれるのだから、体が残っていては復活してしまう。そのために、体が無くなっているのだろう。


「ーー死にたくないって泣きながら言ってたのにな......」


 ヴァルがボソッとそう呟く。


「動き出すのが遅かったんだな。もっと早くに邪龍教の討伐を始めていれば、姉さんも死ぬことはなかった」


 今回の犠牲は、なにもネイだけではない。聖王セレナを始め、天馬騎士隊や戦場となった村の人々。それと、邪龍教を信仰する信徒。


 帝国内部では今、ラストが1人で「めんどくせぇ」と言いながらも戦後処理を進めている。戦うことが好きな彼にとっては地獄そのものだろう。


「たかが宗教1つを潰すのに、ここまで手間がかかるとはな」


 ライオスが目を瞑ったままそう言う。


「その宗教が国家と結びついてたんだ。仕方あるまい。それに、奴らはまだ潰れてなどいない。これからは、生き残りの掃討作戦に入る」


「それも、俺達が手伝うのか?」


 ヴェルドがそう問いかける。


「いや、お前らの力を借りるほどではない。グランアーク王国騎士団の連中と一緒に、各地に逃げ去った教徒を一人残らず捕まえていくさ」


「途方もない作業だな。どんくらい逃げたか分かんねえんだぞ?」


「分かってるさ。邪龍教を完全に潰せるのはまだまだ先になる。さて、お前らに報告することはこれくらいだ。俺はこれからちょっと城に行ってくる」


 そう言って、クロムはギルドの扉を開けてアランと共に出て行く。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 結局、あいつを守ってやることができなかった。


 散々泣き散らすあいつに言って聞かせたのに......


 街には戦争の被害などどこにもない。


 当たり前の話だ。戦場はほとんどラグナロク帝国だった。


 ツクヨミが言っていた未来とは違う結末になってしまった......


 邪龍にはならず、かと言ってツクヨミになるわけでもない。


 一体、何が正しい歴史で何が間違った歴史だったというのか......


 あの書庫に行ってももうツクヨミはいない。聞くことが出来ない。


 もっと、色々と聞いておくべきだった。


 もっと、ネイを大事にしておくべきだった。


 もっと、早くに気づいていれば良かった。


 他に、違う道が必ずあったはずだった。


 後悔はどれだけでもできる。しかし、後悔したところで何も返ってこない。


「ネイ......」


 俺は、お前に言いたいことがあった。


 いつの間にかあいつのことが、少し好きになっていた。


「もっと早くに伝えていれば......」


 仮に、伝えたとしても、根が張りきれていない思いだ。すぐに見破られる。


「それでも、あいつは喜んでくれたのかな......」


 俺の足は自然とあの森に向かっている。


 あの日、ツクヨミと出会い、色々なヒントをもらえた場所に。


「エターナルとリジェネ......」


 この2つのメモリを持っていれば、自由に行き来できる。


 あの書庫に、何かヒントがあれば......


 歴史を見る書はツクヨミが肌身離さず持っていた。それでも、あの書庫にはたくさんの『記憶』があった。


 何か、得られるかもしれない。


 その小さな希望を持って、あの書庫へと向かう。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「最近の帝国の動きを知っているかい?」


「ああ、邪龍が復活したとかなんとかって話だよねぇ?」


「そうそう。邪龍教っていう怪しい集団が復活させたとかなんとかで1回世界崩壊の危機が訪れたらしいんだよ」


「そんなのあたしゃ気づかなかったよ」


「私もだよ。なにせ、聖王を新たに受け継いだクロム王が一夜にして倒してしまったらしいからねぇ」


「そりゃたまげた話だ」


 街の老婆達の会話が耳に入ってくる。


 クロムが倒した。確かに、その通りだ。でも、実際に倒したのはネイだ。ネイが倒さなければ、今日にでもまた、復活していたかもしれない。


 絶対という確信はない。このまま、ネイが何事もなく人生を遅れたかもしれない。その可能性だって十分にあった。むしろ、そっちの方がずっと大きいように思ってた。


 でも、ネイの目にはそうは見えていなかったのだろう。だから、ネイは自殺を選んだ。あの時のヒカリのように......


「生きてれば、まだ方法はたくさんあったのに......」


 なぜ、2人とも死んでしまったのか。その答えが未だに分からない。


 「死にたくない」そう言っていたのは嘘だとネイは言った。でも、本当にそうだったのだろうか......


 あの時のネイは、生きることに未来を感じていた。なのに、なぜ、あの場で死ぬことを決めたのか......


 何か、他に要因があるんじゃないかと思う。


 だって、そうじゃないと


「ネイが死を選んだ理由が説明できないから......」


 今日は12月21日。


 本来なら、年明けにみんなで白陽王国で使われている「着物」なるものを着て、年始を過ごそうと思っていたのに......


 今の心境では、そんなことはできないな。

次回予告

第4章【時の歯車】1【再会の時】

はい、というわけで第3章はこれにて終了。そして、第1部最後の章となる第4章【時の歯車】はまんまこの続きとなります。第4章は比較的短めに終わらせる予定です。(早ければ今月中に終わる)

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