第3章6 【聖魔の神殿】
「ではミルさんお元気で」
「あぁ、また近くに寄るようなことがあればいつでも来い」
「はい、そうさせていただきます」
そうやってミルと挨拶を交わし、アルテミスと共に出発する。
昨日は色々とあったが、まあ、生きて帰れたし、アマツも手に入れたしで十分な成果はあっただろう。ただ、唯一気掛かりなのはミルが昨日合流したあたりからずっと怖い顔をしていたことだが...
そんなこんなでネイとアルテミスはギルドに帰った。途中の船旅で遂にネイが吐いたなんて話はもう要らないであろう。
ーーそして今、私達はなぜか雪山の洞窟に閉じ込められています。
「あの......セリカさん......なんで今、こんな状況になってるんでしたっけ......」
ネイは頑張って笑顔を作りながらセリカにそう尋ねる。
「なんでだろうねーこんな予定じゃなかったのになーハハ」
セリカが体を震えさせながらそう答える。
ギルドに戻ってすぐにセリカが『聖魔の神殿』の調査依頼を受けたとか言ってなぜかネイとヴァルが一緒に行くことになった。
なんでそんな場所の調査を......と思ったが、この場所、古代兵器が眠っているらしい。そのせいか、依頼の達成報酬がかなり高く、かなりお得なクエストだとセリカは思っていたらしい。
そして、登山は全部ジークに任せて神殿に着いたと思ったら足場の床が崩れて落下。なんとか怪我は少なく、全員無事ではあったが、どこだか分からない場所に閉じ込められる形になってしまった。
「あの......セリカさん......大丈夫ですか?」
「多分......大丈夫じゃ......ない......」
セリカはここに来てからかなり寒さで震えている。素人が登山を舐めるな、とはよく言うがセリカの場合舐めすぎだった。最低限の厚着で来るとは......登山で体も温まる......などと考えていたのだろうか。
セリカの様子があまりにもだったのでネイは着ていたコートをセリカに羽織らせたが、そもそもネイが来ていたコートが認識阻害用の物であり、防寒用の物ではなかったのであまり意味がなかった。
それでも無いよりかはマシだと思ったのだが......
「ネイ......りんの......魔法で......温め......られ......ない......の?」
ふと、何かを思い立ったのか、セリカがそう問いかけてくる。
「そんなことしたらマナ不足で私が死にます」
1度その方法は試みたのだが、あまりにもな寒さのせいか、火属性魔法は殆ど意味をなさなかった。
なら、上級魔法......と考えるのだが、それを継続的に出し続けたらマナ切れでコアが削れて死ぬ。この案は却下となった。
「セリカはちと根性が足りねえんだよ」
私とセリカの会話にヴァルがしれっと口を挟んでくる。
「ヴァルの魔法でどうにかって考えは......」
「最初に話したが、火傷つけていいってんならやってもいいけどな」
「それは......困る......」
セリカが顎を鳴らしながらそう言う。
「......それで、奥の方はどうでした?」
「ダメだな。行けるとこまで行ったが、最終的には行き止まりだった。やっぱ、帰るならここ登るしか方法ねえよ」
「そうですか」
「あ、それと、奥の方なら少しはここよりかは暖かい方だったぜ」
「そうですか。なら、そっちに場所を変えますか」
「そうした方が良さそうだよな。セリカがこんなだし......」
セリカはさっきよりも震えが強くなってるのでは?と思うほど震えてる。鼻水が凍ってもおかしくないのでは......
まあ、震えが来ている分セリカは大丈夫だろう。こんなところで震えが収まったとか言われたら、もう手に負えない。
「場所を変えるのは良いとして、どうやって脱出するべきか......」
ヴァルがセリカを抱えながらそう言う。
「ギルドのみなさんが気づくのは早くても3日ですかね......それまでセリカが耐えてくれれば天に任せるという方法もありますが......」
「多分、無理だな」
「後は、偶然私達と同じようにこの神殿を調査やらなんやらに来た人が偶然見つけてくれるとか......」
「前者よりも確率低いだろ」
「ヴァルが壁登りして助けを求めに行くとか......」
「あの岩ツルツルしてて掴めねえんだよなぁ」
「私が飛んで、ってのは無理です」
「なんで最後だけ出来ないことをわざわざ口にした!?」
ヴァルがこちらに振り返りながらそう言う。
「みなさんが未だに私の羽が飛ぶようだと勘違いしてらっしゃるので......」
「つってもお前、『天龍族』だっけ?飛べるんだろ?」
「『飛龍族』です。そして、飛べません」
「そんな大層なもん付けててなんで飛べないかねー」
「あのですねー、羽があるって言っても人の体重で空を飛べるわけないでしょ!?ましてやエンジンとか動力源なんてないのですから」
「じゃあ、なんで鳥と龍は飛べるんだよ!」
「鳥は飛ぶために中身すっからかんだし、龍は9割魔法の力で飛んでます!まあ、龍ほどの大きさの羽なら私一人飛ぶことは出来るでしょうが......」
「「 はぁ...... 」」
なんか色々と言い合って2人同時にため息が出た。
「こんなところでいがみ合ってもキリがねえな」
「そうですね......」
それからしばらく、沈黙が保たれた状態で先へ進んだ。
「?」
ふと、横にあった窪みが気になり、歩みを止める。
「どうした?ネイ」
ヴァルが振り向きざまにそう言って近づいてくる。
「ここ」
私は窪みを指差しヴァルに示す。
「ただの窪みじゃねえか」
「ちょっと、ここに軽く拳骨してくれませんか?」
「なんで?」
「気になるから」
ヴァルの問いには短く返す。
「分かったよ。んで、どれくらいの威力でやりゃあいいんだ?」
「軽く、ここの岩を破壊するレベルで」
「了解。ちょっと離れてろ」
そう言い、ヴァルはセリカを私に預ける。
ヴァルは右の拳に炎をまとわりつかせる。
「炎龍の......鉄砕!」
思い切り、壁に拳骨をかまし、岩が崩れ落ちる。そして、崩れた先にあったのは......
「何だこの扉?」
崩れた先の方、そこには古びた扉が設置されていた。
「多分、ここに古代兵器があるとかなんとか話してたからそれ関係のものじゃないかと思います」
「はぇー、ってなんでそんなものの存在に気づいたんだよ!」
「なんとなくです」
私はヴァルの問いにセリカを返しながらそう答える。
「なんとなくって......」
ヴァルが後ろの方でそう言っていたが、私は構わず扉を開けようとする。
「鍵が......かかってる?」
扉を押せど引けど開く気配がしない。もちろん、スライド式かと思って横にも引いてみたのだが......
「ここにロック解除用のパスコード入力装置があるな」
ヴァルが言うように、すぐそこにボタン入力式の解除キーがあった。
「これ......壊れてますね」
パッと見で分かるほど、その解除キーは破壊されていた。
「どうすんだ?せっかく隠し通路見つけたと思ったら先に進めねえぞ」
「ヴァルは開けれない扉があって、そこに何か用事がある時はどうします?」
「ああ?んなもんちゃんと鍵かなんかを探すか、屋主が来るまで待つか......」
「なら、質問を変えます。その開かずの扉の先に助けを求めてる人がいるならどうします?」
「ぶっ壊すな」
「じゃあ、壊してください」
「なんでそうなる!?」
「自分で言ったんじゃないですか...」
「つってもこの先に助けを求めてるやつなんていねえだろ!」
「この扉を開けないと多分、セリカが死にます。そう言われたら?」
「よし、壊そう。セリカをもう一度頼む」
ヴァルは即座にセリカを私の背中に預け、先ほどと同じように右の拳に炎をまとわりつかせる。
「炎龍の鉄砕!」
先ほどと同じように、ヴァルは扉に向けて拳を打ち込む。ただ、先程と違うのは......
「ッ......痛ってぇ......」
ヴァルは右の拳を抑えながら呻き声を上げる。
「バカですか。鉄扉相手にあんな低火力な攻撃で壊せれるわけないじゃないですか」
「そういうことはもっと早くに言え!」
「常識でしょ!?」
あまりにもバカすぎる......
「ったく......次は全力でやりゃあ良いんだろ」
「やりすぎて中にあるものまで焼かないでくださいね」
一応、そう言ってみたが、ヴァルがそんな都合よく威力を調整することはできないであろう。
最悪、歴史的に貴重なものを壊す可能性が......これ以上考えるのはやめよう。
「地獄龍の......鉄砕!」
今度は、先ほどよりもかなりデカい技で扉を殴りつけた。
「クソっなんだよこれ。壊れねえじゃねえか!」
ヴァルの魔法は中々に強かったが、扉はそれよりも強かった。
「......どうすんだ?もうこれ以上は出来ねえぞ?」
ヴァルが右の拳を抑えながらそう言う。
「んー......なら、分解してみますか」
「分解ってどういうことだ?」
ヴァルがすかさず疑問をなげかけてくる。
「錬金術で壊します」
「そっちの方を先に試せよ......」
「そうしても良かったのですが、錬成陣を書く道具が無かったので......」
「ん?その腕にまではめてるストッキングにでも書いてねえのか?」
「そんな都合のいいことはありませんね。見ての通り、なぜか記憶がある時から着けてるストッキングですから」
私は両の手を広げ何も書いてないことをアピールする。
「チョークとかそんなもん何も持ってねえぞ。それに、火の跡付けようとしたってその鉄扉、焦げた跡すら付かねえぞ」
「そうですよね......さて、どうしましょうか......」
それから、何をするでもなく、ただ沈黙が流れた。
考えても考えても何も思いつかない。
破壊するのはダメ。錬金術は錬成陣を書けないという問題でダメ。コード解除に関しては元から解除キーが壊れてるのでダメ。
(ーー1ツ、可能性ガアル)
「アマツ?」
(デキルトイウ保証ハナイガ、ヤルダケヤッテミルカ?)
「そうですね。お願いしまーー」
「ヴァル、我ガ合図シタラ扉ニ向ケテ先程ノ鉄砕ヲ打チ込メ」
「あぁ、分かっ...」
ヴァルがそこで、口を閉じる。
「って誰だオメー!?」
次の瞬間、ヴァルがそう叫ぶ。
「我ハ我ダ。ソレ以上デモソレ以下デモナイ」
「いや、そうじゃねえよ!お前誰だよ!明らかネイじゃねえだろ!」
「我ガ名ハアマツ。以上」
「ジークとは別の契約龍ってことか?...でもいつの間に......あぁ、この間まで行ってた世界でか」
「ソレデ、我ノ策ニ協力シテクレルカ?」
「その喋り方聞き取る方がダルいからやめてくれねぇか?」
「無理ダナ。我ハ言葉ガ苦手デアル。呑ミ込ンデクレ。ソレハソウト返事ヲ聞カセロ」
「あー、分かったよ。それで、何をすればいいんだ?」
「我ガ合図シタラコノ扉ニ向ケテ先程ノ技ヲ打ッテホシイ。ヤレルカ?」
「あぁ、分かったよ」
「ウム、デハ」
アマツは鞘から剣を抜き出し、前方に向けて構える。
剣はレイピアのような形へと変わる。
「氷牙・令輝鬼神」
扉とその周囲をものすごい勢いで凍らせる。
「今ダ!」
「地獄龍の鉄砕!」
氷結した扉に向かって高威力の技を撃ち込む。それで壊れてくれるという確証はなかったが、見事に砕け散った。
「コレデ完了ダナ」
そしてアマツは仕事が終わったとばかりに意識をネイに戻す。
「全く、アマツも無茶な方法思い付きますね......」
「あぁ?お前......ネイ......か?」
「そうです、ネイです」
「さっきのあいつ、なんだったんだ......」
「私の新しい契約龍のアマツです」
「そんなやつ、どこで......って前まで出かけていた世界でか......」
ヴァルが勝手に自問自答で納得するが、まあ、合ってるので良しとしよう。
「それより、ちゃんと中身......ありましたね」
私は部屋の中を指差しそう言う。
「かなり埃っぽいが、どうすんだ?」
ヴァルが部屋の中を覗きながらそう問いかけてくる。
「どうするもこうするも、入るに決まってるでしょ」
「そうか......」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「なぁ......いつまで歩き続けるんだ?」
ヴァルは前を歩くネイの背中に向かって問いかける。
「さあ?それっぽい部屋にでも辿り着いたら......ですかね」
なんとも曖昧な答え方をしてくる。
「ーーはぁ......」
思わずため息が出てしまった。
それから、一言も話さず、ただネイの後ろを黙って歩き続けた。
どこまで行っても変わり映えしない薄汚い廊下。
「......」
ふと、天井を見上げる。
(なーんか、ここ、さっき見たような......)
「おーい、ネイー」
「な、なんでしょう!?」
ちょっとした呼びかけだったのに、えらく大袈裟な反応をされる。
「なあ、お前本当に『それっぽい部屋』に向かって歩いてんのか?」
ずっと気になってたことをネイに問いかける。
「え、えっと......」
なぜか、ネイの様子がえらく挙動不審になり、ダダ汗が出ているように見える。
「まさか......こんな広くもない建物内で迷ったとか言うなよ」
「アハハ、そんな......まさか......まさか...よね......」
ボロが出たな。
「何やってんだお前!こんなんじゃいつまで経っても先に進まねえじゃねえか!どうしてくれるんだ!」
「べ、別に......ちゃんと途中にあった扉は全て開けて中確認したし、無駄な時間じゃなかったでしょ!」
「そんなもん最初だけだったろ!途中から扉見つけても中に入らなかったじゃねえか!絶対途中で気づいてたってことだろうが!」
「うぅ......」
ネイが1歩その場を引く。
「仕方ないじゃない。私......多分だけど昔から方向音痴なんだから......」
「昔はどうでもいいよ!今道に迷ってどうすんだ!」
疲れからか、ストレスからか......結構な八つ当たり発言をしてしまう。
「ヴァル、ちょっとうるさい」
後ろからセリカが迷惑そうな声を上げた。
キャラ別能力紹介〜セリカ編〜
十二級精霊の内、7つの精霊を扱う十二級精霊魔導師。
使える精霊は以下の通り
・カグヤ(刀で戦う)
・ネメシス(斧で戦う)
・エキドナ(双剣で戦う)
・セイレーン(歌で状態異常解除や、支援魔法を掛ける)
・ホウライ(木属性魔法と操縦魔法を操る)
・ソラ(拳で戦う)
・アルラウネ(治癒魔法による援助)
次回予告
第3章7【古代科学者の物語】
え〜、これは多分、1話完結ができたんじゃないかと思いますが、モチベが上がらないので、キリのいいところで投稿となります。




