第8章17 【星の龍王】
僕の名前はラナ。未来から受け継がれし、希望の名だ。
僕が戦うべきは、この時間ではない。もっと先の時間だ。というわけで、父親如きに苦戦するわけにはいかない。
ラナ「お父さん。僕は、あなたに情けをかけることが出来ない。それでもいいと言うのなら、かかって来るといい。出来ないのであれば、今すぐ降参したまえ」
ウルガ「随分な態度ですね。そこらに倒れているのは、全て私が倒した者達ですよ」
お姉ちゃんに、ヒカリに、ミルさんに、ヴァルガ。その他、結構な数の人が倒れている。
......まあ、ここらは予想通り。これしきで、僕がビビる理由にはならない。
ラナ「退かないと言うんだね」
ウルガ「当たり前です。娘に負けるほど、私は弱くありません。例え、15年のブランクがあってもね」
15年閉じ込められていた割には、マナの貯蔵量と、漂わせているオーラが圧倒的。ヴァルガあたりは余裕で超えているだろう。
まあ、それでも僕には及ばない。だって、忘れがちだけど神だからね。
ウルガ「オーバードライブ」
ラナ「カラードライブ・彩」
オーバードライブ......自分の限界を超える強化魔法。長時間の使用は、どんな者であれその身を滅ぼす。短期決戦を望むつもりだろう。
僕も、長期戦をするつもりはない。短期決戦......受けて立とう。
ラナ「......叩き潰してやる」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
髪の白い少女と、ウルガが宙を舞うようにして戦っている。
あの白髪の少女は、ラナと名乗っていた。でも、出してる雰囲気がお母さんそのものだった。
あの子は、何者なの?
妹のネイは、そこで倒れている。でも、あの子も私の妹なのではないかと思う。理由なんて分からない。なんとなく、そう思うだけだ。
だったら、なぜ妹のネイが2人いるのかと疑問になる。
私には分からない。これも、聞けば分かるのかな?それとも、あの子は......いや、お母さんは死んでる。生きてるはずがない。
ウルガ「......ちっ、なんだと言うのですか。この力は......」
ラナ「そんなので僕に勝とうと思っていたのかい?そうだとしたら、随分と舐めてたものだ。戦う相手は、しっかりと見極めるべきだったね」
ウルガ「......あなた、どこでその力を手に入れたのですか。龍王の力など、普通の人間が手に入れることなどできない......」
ラナ「それは、"普通の"人間に限ったことだろう?生憎、僕は周りから化け物だ龍だロリだなんて言われてるからね。普通っていう自覚はもうないのさ」
ウルガ「......図に乗るな......お前が、お前が......」
ウルガの顔から、さっきまでの余裕綽々としてた表情が消えている。
演技でもなんでもない。本当に追い詰められているのだ。
逆に、ラナと呼ばれるネイ......ネイでいいのだろう。うん。ネイの顔には『余裕』の2文字が似合いすぎるくらいに涼しげな顔をしている。
ラナ「もう諦めたらどうだ。僕自身、殺しは好まない性格だ。白旗を上げると言うのなら、見逃してやらないこともない」
ウルガ「......そう、余裕でいられるのも今のうちです。全魔解放・破滅の夜」
ラナ「はぁ......自暴自棄になったか。世界の破壊。それは、お父さん自身の身をも滅ぼす。まあ、この世界自体が消えてしまうからどうとも思わないだろうがね」
世界が......消える?
イデアル「ネイ!早く止めないとーー」
ラナ「分かってるよ。お姉ちゃん」
あ、ネイでいいんだ......じゃあ、改めてここにいるネイは何者?いや、そんなことより世界の破壊が行われる。お父さんの手によって。早く止めないといけないのに、ネイは動かないし、私達の体も思うように動いてくれない。多分、ところどころの骨をやられてる。
......お父さんは、なぜ世界を破壊しようとするの?
そんな疑問がふっと湧いた。
昔のお父さんに、何かあったのかもしれない。私や、ネイが生まれるよりも前に、何かがあったのかもしれない。でも、私達はお父さんの過去を知らない。ただ、世界を破壊する魔法を使うと言うから止めようとしてるだけ。お父さんの気持ちなんて知ったこっちゃない。
ラナ「......」
ウルガ「......最初から......こうしてれば良かったのですよ」
ラナ「そうだね。僕が来る前に、そうしていればお父さんの望みは叶ったかもしれない。でも、お父さんは少し、この世界を舐めすぎたようだ」
ウルガ「......?」
今日は、なんだか星空がより一層輝いて見える。
ラナ「全天解放・ユニバース・ゼロ・スター」
英雄は、歳を重ね、やがて死ぬ。そして、星へと変わり、新たな英雄の歩みを見る。
ネイの魔法を見て、そんなフレーズが頭に浮かんだ。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
破滅の夜に似合う星空だ。
太陽とは違い、小さく、それでいて多くの数が輝く空。『星界』と呼ばれたこの世界は、確かに星が綺麗な世界だった。
お父さんは、世界の破壊を行った。だが、そこに僕の全てを無に、いや、星に還す魔法を撃つ。高密度のマナ同士の衝撃。マーキュリーが起こしたように、次元分裂が起きる。
ここで、僕が何をしようとしてるのか。
僕に、お父さんを殺すつもりはない。ただ、助けようと思う気持ちはある。
ラナ「待ってろ、お父さん。今、そこから引きずり出してやる」
次元の裂け目に身を落とし、巻き込まれた父の姿を探す。
ここは、宇宙にいるかのように体に重力のかからない空間である。それに、僕の魔法のせいか、星もチラチラと見ることが出来る。
ラナ「いた......」
この空間の中心。太陽みたいな物の近くに、父の体があった。
ラナ「もう大丈夫だ。君は、悪の心から解放された」
ウルガ「ユニ......バー......?」
意識がはっきりしていないようだ。まあ、無理はないか。
僕が父に手を差し伸べ、父はハッキリとしない意識で僕の手を握る。
ラナ「帰ろう。みんなのもとへ」
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
イデアル「ネイ......!」
小さきながら、物凄い勢いで吸い込まれそうな空間から、ネイが戻ってきた。傍らには、お父さんの姿も見える。
ラナ「もう大丈夫だ。お父さんは、悪の心から解放された」
イデアル「悪の......心?」
ラナ「そうだ。お父さんは、悪の心によってこのような事態を引き起こしてしまったんだ。それを知っていた僕は、お父さんの善の心だけを取り出すべく、滅界の魔法を利用して、次元の裂け目の中心にお父さんがいるようにした」
もしかして、それが世界の破壊をギリギリまで見ていた理由?危なすぎるって......
ヒカリ「そういう事なら、もっと早くに言いなさいよ。私でも心配しちゃったわ」
ラナ「ごめんね。でも、悪の心であったウルガに悟られる訳にはいかなかったんだ。敵を欺くには、味方からって言うだろ?」
ヒカリ「まあそうね。で、お父さんは無事なの?」
お父さん......?
......
......
......
考えるのをやめるべきなのだろうか?さっきから、ずーっとヒカリと名乗るネイと、ラナと名乗るネイについて悩み続けている。お母さん、隠し子でも作ってた?いや、そんなわけないない。
ラナ「元々、時間を止められていて15年の衰えは無い。それに、君達が全然攻撃を成功できなかったせいで、これといった外傷もなく済んでいる。あと、僕とヒカリが別れてしまった原因は、この状態のお父さんを見れば分かるだろ?」
ヒカリ「ああそういう事だったのね。まさか、次元の裂け目が人格を2つに分けるなんてね。......だとしたら、悪の心のお父さんは......」
ラナ「時期にやって来るよ。そこの、次元の裂け目から。お姉ちゃん。お父さんを頼む」
イデアル「う、うん......」
よく分からない話を一通り聞いて、私は言われるがままに意識不明状態のお父さんの体を受け取る。
一応、治癒術をかけておいた方がいいか......。
ラナ「ヒカリ、力を貸してくれ」
ヒカリ「貸せって言われても、ワールドメモリーズはしばらく使えないわよ。過労死しちゃうから」
ラナ「構わない。銃が使えればそれでいい」
ヒカリ「分かったわ。後方支援ね」
ラナ「そういう事だ。そこらで倒れている雑魚兵共も、下がっていたまえ。巻き込まれて死んでも、僕は責任を取らない」
これ、本当に私の妹なのかな?どんな育ち方をしたら、こんな風に喋るようになるんだろう。気になる......。
それはそれで置いといて、私も離れた方がいいかな。意識のないお父さんも抱えているわけだし。
「イデ......アル......か?」
イデアル「お父さん?」
「......長い、悪夢を見ていた......。その夢で、君達に迷惑をかけていた......現実だったのなら、すまない......」
お父さん......
「......私が弱かった......この、ろくでもない世界を変えようと思った......だが、私には力が無かった......力を欲した......手に入ったのは、絶望だけだった......」
イデアル「......もう、大丈夫だから。きっと、ネイ達がその心を打ち砕いてくれるから......」
「ネイ......そうか......ユニバー......。良い名を付けたな......」
意識は辛うじて残っている。呼吸は荒くなく、逆に薄くなっている。
力の反動と捉えるべきか。なら、人工的にマナを注入すれば少しは楽になれると思う。
私が、14年間軍で研究してきたこと。戦闘方面よりも、医療方面を研究していた。試すようで悪いけど、治す方法はこれくらいか......
「なぜだ......なぜなんだ......私が、こんな小娘如きに......!」
裂け目から真っ黒に染まったお父さんの姿が現れる。恐らく、あれが悪の心というやつだろう。
「マーキュリー。我が元へ還れ。そして、我が身と1つとなれ......」
落下の衝撃によって、ぐちゃぐちゃになっていたマーキュリーの体が、黒いお父さんの体に吸収されていく。
「親父......作ってくれてありがとな。だが、お前の大切なものは全てぶっ壊す。覚悟は出来てるな?」
奴の目から離れようと、お父さんの体を抱えてシリウス達の元へと走る。だが、走る私に向けて、黒い手が何本も伸びてくる。
あいつの狙いはお父さん。お父さんを捕まえた後に、目の前で私達を粉々にするつもりだろう。そして、絶望を感じたお父さんが、再び悪に呑み込まれる。大体こんな筋書きかな。
ーーだけど、お父さんは渡さない。
《バンッバンッ!》
鼓膜に響く銃声が聞こえて、黒い手が全てドス黒い血を吹き出して地に落ちる。
ラナ「これが最後の戦いだ!ジーク、アマツ、シズ、ラヴェリア!行くよ!」
ヒカリ「お姉ちゃんは全力で逃げて!私がサポートするから!」
私達、『家族』ならば、どんな困難だって乗り越えられる。でしょ?お母さん。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
彩ネイ「「「 おっしゃァ!久し振りに暴れてやるぜ!我ノ力ノ見セ時。我が剣は主の為に!皆さん、落ち着きを持ってください。君達、ちょっと好き勝手しないでもらえるかな 」」」
ヒカリ「あんた情緒不安定なの?」
彩ネイ「「「 違うんだ。この姿になると、龍王全てが僕の体を操れるようになる。5人でね。だから、息が合わないとこうなる 」」」
ヒカリ「それ、絶対1人でやった方が楽でしょ」
彩ネイ「「「 まあ、戦闘に入ればノリと勢いでどうにかなるからさ。安心して見守っていたまえ 」」」
一応、私なんだからさ、もうちょっと頭を使って動けないわけ?
もう1人の私である、ネイの姿は、赤、青、緑、黄、紫、白の6色に染まり、羽とか尻尾とかが普段よりも大きくなっている。まあ、まず、髪色から常識的ではないけど、それにしたってもうちょっとまともなカラーリングが出来なかったわけ?
私の知らないところで、私の体が色々と改造されてる気分だ。今は2人に分かれているのだけれど。
......そういや、私自身もグランメモリを使って改造してたな......似た者同士と言ったところか。似てると言うよりも同じものだけど。
ヒカリ「あと、その喋り方なんなの?ラナ......とか名乗ってたけど、ネイだよね?」
彩ネイ「「「 それについては、そのうち説明しよう。今は、あれを倒すことが先決だ 」」」
ヒカリ「分かったわ。一瞬で終わらせましょ」
一瞬で終わるだろうか?
全身真っ黒に染まり、デストラクションを使ってたエンマの時のようなオーラを放っている。しかも、中身は落下死したはずのマーキュリー。色々と疑問の尽きない相手だな、と私は思う。
「あ"ァァァァァァ!」
奴の咆哮を合図に、私達は動き出した。
人物紹介
マーニ
性別:男 所属ギルド:星界軍
好きな物:月 嫌いな物:雨の日
誕生日:1月31日 身長:177cm 26歳
見た目特徴: 黒髪ロングの女みたいな男(いわゆる男の娘)。しかし、根はしっかりと男をやっている。
星界軍第3部隊隊員。階級は軍曹。ソールと同じように隊長であるデネブのツッコミポジションをやっている。闇魔法を扱い、ネイと同じように月が出ていると魔力が上がる(唐突な月設定召喚。隠してたわけじゃないけど、明かすタイミング見失ってました)。




