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グランストリアMaledictio  作者: ミナセ ヒカリ
第8章√NH 【星界の家族】
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第8章13 【向き合え】

マーキュリー「は、はは......やっと......殺せた......」


ヒカリ「しっかりしろよ!おい!」


ヴァルガ「っ......」


ヒカリ「目を開けろ!死ぬぞ!お前が死んだら、ウルガって奴が復活するんでしょ!?死なないでよ!」


ヴァルガ「......最早、ここまでだ」


ヒカリ「っ......何言ってんのよ。まだ、あんたには聞いてないことがいっぱいあるのよ......」


 ヴァルガの体には、もう見てられないほどの傷跡。あちこちから血が垂れているし、火傷跡もたくさんある。私の力じゃ、回復させることが出来ない。


 カチッ......カチッ......


 相変わらず、このメモリは反応を示してくれない。私には、何もすることが出来ない。


 マーキュリーは、狂ったように笑っている。


ヴァルガ「......ヒカリ......いや、ラクシュミー」


ヒカリ「......何よ」


ヴァルガ「ラクシュミーって名前は、俺が付けたんだ」


ヒカリ「知ってるわよ。だから、その名前が嫌いなのよ」


ヴァルガ「......ははっ。良い名前だと思ってたんだがな......」


ヒカリ「......」


ヴァルガ「いい加減......己と向き合ったらどうだ?......名前も、自分の罪も、全て引っ括めて......」


 ......あんたに言われたくないわよ。


 知ってるのよ。自分が嫌なことからは逃げてばかりだってことくらい......


 でも、仕方ないじゃない。


 逃げるしかなかったんだから......そうでもしないと、私自身がどうにかなっちゃいそうだったんだから......


 『ラクシュミー』って名前も、あんたが名付けたから嫌いだったわけじゃないのよ。ただ、その名前でいる自分が腹立たしかったから。そんな可愛い名前、私には不釣り合いだったから......罪を犯した自分に、その名前でいられるわけがなかったからなのよ......


ヴァルガ「......すまんな、親父らしいことが何も出来なくて」


ヒカリ「......なら、生きて、生き残って、少しは父親らしいことをしてよ!......お父さん......!」


ヴァルガ「......ははっ......やっと、『お父さん』って呼んでくれたな」


ヒカリ「......お父さん......お父さん!」


 ゆっくりと目を閉じていくお父さん。体を揺らしても、もう荒い息遣いが聞こえるだけだ。


ヒカリ「......お願い......死なないで」


ヴァルガ「......」


 死んだように眠りにつきやがって......まだ、息をしてるのを私は知ってるのよ?


ヒカリ「......必ず、助けるから」


ミル「っ......ラクシュミー、あんた......」


 師匠が目を覚ました。お父さんと同じように、体に酷い怪我を負っている。


ヒカリ「......師匠、あとは任せてください」


ミル「......覚悟が......決まったんだね」


ヒカリ「......はい!」


 まだ猶予はある。こいつを、一瞬で仕留めれば、2人ともを助けることが出来る。


《ワールドメモリーズ》


ヒカリ「......覚悟を決めろ。私は、悪魔の科学者だ!」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


イデアル「全軍突撃!敵を殲滅せよ!」


「「「 うぉぉぉぉぉ! 」」」


 私が総指揮。迷いはあるが、その迷いを表には見せない。


 私は、軍の隊長として皆を導く必要がある。今まで部下だったのに、急にその上ってのもおかしな話だとは思うけどね。


 待っててね。生き別れの妹、ネイ。必ず、もう一度会いに行くから。


△▼△▼△▼△▼


 殲滅軍の内部は、死体の数々で埋め尽くされていた。


 恐らく、プルトの報告にあった『ヴァルガ』って人が殲滅させていたのだろう。血の匂いが鼻をツーンと刺激させてくる。


 外から見れば、天をも突き破るほどの高さだったが、走っていけばそこまで高いとは感じない。


 本来なら、この死体の数々が私達が上に辿り着くまでの時間を割いてくるはずだったのだろう。ヴァルガには感謝しかない。


シリウス「自分らの本拠地だというのに、こんなにも上に行くのがダルい設計にするとは、頭が悪い奴らなのか?」


イデアル「恐らく、上りも降りも、魔法を使って一瞬なのでしょうね」


シリウス「なるほどな。我らを入れにくくして、自分達は外に出るのも、内側に入るのも自由というわけか」


 まあ、ヴァルガがいなければ、私達は上に行くことが叶わなかったであろう。こうして、全力ダッシュで駆け上がることは、夢のまた夢でもあっただろう。ならば、私達はこの好機を生かすしかない。


 上に上がれば、ウルガが復活してるかもしれない。でも、そいつが暴れ出す前に押さえることさえできれば......


シリウス「隊長、足を止めるな。考える事があるのかもしれないが、今は上を目指してひたすらに駆け上がるだけだ」


イデアル「......はい」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


ヒカリ「......接続、世界の書庫(ワールドアーカイブ)


マーキュリー「っ......まだやろうってのかよ......もう、これで親父は復活するんだ......。ただ、やるってのならーー」


ヒカリ「死んで......」


 足に取り付けてあった2丁の拳銃を両手に構え、マーキュリーの首元を狙うように的を合わせる。


 私は、剣をネイみたいに上手く扱うことが出来ない。だって、振ったことがないんだもん。じゃあ、なんでこのメモリ専用の機械剣を作ったのかって?


 今にして思えば、心のどこかでネイが戻って来ると思ってたからかもしれない。でも、私が起動させることが出来たのなら、それ用に拳銃も特別なものを作っておけば良かったかもしれない。


 ーーでも、私にはこの2丁の拳銃で十分だ。両方とも、グランメモリの力を引き出すことが出来る。


マーキュリー「死ねぇ!」


ヒカリ「......右腕、左足」


マーキュリー「っ......」


ヒカリ「左腕、右足」


マーキュリー「っ......」


 昔の感覚はまだ残っている。


 敵の四股を撃ち抜き、まずは動きにくい状況を作り出す。


マーキュリー「っ......痛ぇ......」


ヒカリ「痛いと思うでしょ。私も、同じ思いを何度も味わった」


 お兄ちゃんに連れられて、色んな戦場を駆け回った。そこで、たくさんの死体を積み上げて、私は経験を積んでいった。


 私は、最強の軍師であり、悪魔の科学者。私が生きる意味は、戦争を終わらすことにある。そうだと思っている。だから、この世界での戦争も、私の知恵と力で終わらせる。


 マーキュリーの体力、マーキュリーの怪我の具合、マーキュリーが次にとる行動、その全てが手に取るように分かる。だから、マーキュリーが動こうとする度に銃の引き金を引く。


 このメモリを作ったのは私。ネイが使うよりも、私の方が上手く扱える。


マーキュリー「っ......」


ヒカリ「もう立てないの?」


マーキュリー「......クソが」


 検索。マーキュリー、ウルガ、関係。


 ......なるほど。


ヒカリ「あなた、ウルガが本当の父親だと思ってるの?」


マーキュリー「......何を言ってるんだ?」


ヒカリ「ウルガ。彼は、世界の破壊者であり、元は龍を従えた龍契士だった」


マーキュリー「あぁ......?」


ヒカリ「ウルガは、元々、ヴァルガ、コスモ、ユニバー、ミルキーウェイ、サターン、ネプチューンの6人と旅をする旅人だった。それは、まだウルガが正常であった時の話」


マーキュリー「......」


ヒカリ「......やがて、ウルガは旅をするうちに1人の女性と恋人関係になる。その相手が、ユニバー。後に、ウルガを異世界へと封じ込めた者」


マーキュリー「......母さん?」


 彼にどう伝えるべきか。


 書庫で見たものは、彼に伝えるにはあまりにもショックの大きいもの。


 ーー何を考えてるんだ。相手は敵だ。わざわざ、相手の心のことなんて考えてやる必要はない。


ヒカリ「......あなた、自分がどうやって産まれたのか知ってる?」


マーキュリー「......知らない」


ヒカリ「あなたの出身。それはーー」


「あなたは人体錬成によって生まれた者」


 私が言うよりも先に、誰かがその事実を伝えた。


マーキュリー「俺が......人体錬成によって......生まれた......?」


「ええそうです。あなたは、人体錬成によって生まれた、言わば人造人間というものです」


 マーキュリーの背後に男がいた。


 全身、黒いオーラで包まれており、人間らしさというものを1つも感じない。


マーキュリー「......俺が......俺が」


 言われたことを疑いもせず、マーキュリーはその場に崩れ落ちる。


ヒカリ「......お前、ウルガか」


「ええそうです。ヴァルガの力が弱まったことにより、無理矢理こじ開けることが出来ました」


 無駄話をしている暇はなかったはずだ。なのに、なぜ私はマーキュリーに対して、真実を伝えようとしたのだろうか。


 そんな事をせずに、さっさとマーキュリーを撃ち殺して、お父さんを助けていれば、こいつがやって来ることなどなかったはず。


 何を考えているんだか......


ウルガ「ふむ。15年閉じ込められていましたが、案外体は衰えないものですね。これくらいなら、魔法でどうにかできそうです」


ヒカリ「させない」


 ウルガの心臓に向けて照準を合わせる。そのまま、引き金を引いて、ウルガの心臓を貫く。


ウルガ「なるほど。高価な物をお持ちですね。ですが、その程度のエネルギー弾で、私の心臓を貫けると思っていますか?」


ヒカリ「なっ......」


 私が撃った弾丸は、ウルガに当たった時に弾けて消えた。


ウルガ「......あなた、マーキュリーに真実を話そうとしていましたね」


ヒカリ「......」


ウルガ「なら、私がどういう者なのか、あなたは知っていますよね?」


ヒカリ「......」


 マーキュリーに伝えようとしていたのは、人体錬成によって生まれた人造人間であること。記憶を植え付けられ、ウルガの息子だと思い込んでいた。


 ーーそして、そのマーキュリーを作り出したウルガ。かつて、ユニバーと共に過ごしていたが、娘が2人産まれていた。子供がいたのに、なんでマーキュリーを作ったのかまでは分からない。


 娘が2人。その娘が誰なのか。


ウルガ「知ってる顔ですね。そう、私には娘が2人いた。片方は10歳くらいの時まで一緒に暮らしていました。そして、もう片方は私が異世界に追放される前にユニバーの体に身篭った子」


ヒカリ「その娘の名は......」


△▼△▼△▼△▼


 もうすぐ最上階。


 上に登るにつれ、段々と空気が薄くなっていってるのが分かる。道中、敵の生き残りがいたが、それらは他の仲間達が食い止めている。


 私は、第1部隊のみんなと共に、上へ上へと走っている。そして、最上階にたどり着いた時、そこには青みがかかった緑髪の少女が立っていて、ボロボロな状態になっている男と女がいた。


ウルガ「私の娘の名。丁度来ましたね」


ヒカリ「っ......お姉ちゃん!?」


 唯一立っている女の子が、私を見て「お姉ちゃん」と......


ウルガ「揃いましたか。我が娘達」


ヒカリ「っ......お姉ちゃん!今すぐここから出ていって!」


イデアル「出ていってって......」


 何?どういう事......?


ウルガ「イデアル、そして、ネイ。君達は、私の血を受け継ぐ者。ユニバーの娘です」


イデアル「......私が、あなたの娘?」


                   △▼△▼△▼△▼


 1番聞かせたくなかった人に聞かせてしまった。


 ......私とお姉ちゃんは、この戦争の根源、『ウルガ』の娘。顔立ちからして、お姉ちゃんはお母さん似で、私はウルガ似の顔。


シリウス「どういう事だ?イデアルが、そいつの娘?」


ペテルギウス「有り得なくはない話ですねぇ。元々、イデアル様の経歴は不明な部分が多かったようですし、それよりも、そこにいる緑髪のあなた。あなたは、何者ですか?」


 なんかヤバそうな雰囲気を出している男。ペテルギウスとか言ったかな。


 律儀に答えるわけでもないが、この人達は味方。それと、お姉ちゃんはネイの予想通り立ち直っているようだ。


 あと、全然気づかなかったが、今の私は、かつて悪魔の科学者と呼ばれていた時の人間の姿になっている。


 それに、ネイや、龍王達の声も聞こえない。何かが起きてる?


ヒカリ「......私の名前はヒカリ。見ての通り、今はウルガと交戦中」


ペテルギウス「なるほど。味方ですか。それと、イデアル様のことを『お姉ちゃん』と呼んだのは?」


ヒカリ「......」


 つい、衝動的に言ってしまったが、私にとっての姉はアテナだけ。この人を、「お姉ちゃん」と呼んでもいいのか......


ウルガ「どうしたんですか?生き別れの姉妹の感動的な再開でしょう?邪魔しませんから、何か話すことでもあるんじゃないですか?」


ヒカリ「......」


イデアル「......ネイ......なのよね?」


ヒカリ「......ごめんお姉ちゃん。ちょっとだけ待ってて」


 今は、ゆっくりと話すことは出来ない。


 私は、ウルガを倒すべく、銃の引き金を引いた。

人物紹介

アルレシャ

性別:女 所属ギルド:星界軍

好きな物:紅茶 嫌いな物:コーヒー

誕生日:10月27日 身長:154cm 22歳

見た目特徴: 水色ロングの普通な女の子(最近、この設定多くない?)バストサイズD(最早適当)。


 星界軍第2部隊隊員。階級は中尉。水属性の魔法を扱い、天候を変えることができる。ちなみに、モブ。今後もう出ないと思う。


次回予告

第8章14 【母】

 まあ、なんだかんだあってヒカリちゃんとネイりんが分離してしまったわけですけども、これもユミと同じように元に戻るとかはありません。それぞれが別個体として話に絡んでいきます。つまり、ヒロインはネイりん。異論は認めぬ。

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