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グランストリアMaledictio  作者: ミナセ ヒカリ
第7章 【悪魔の科学者】
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第7章11 【ヒカリ≠ネイ】

 なんで......なんで起動しないのよ......


 完璧にプログラムしたはず。対エンマ用に、最高の機体を用意したはず。それなのに、なんで......


「聖龍の力が戻っても、所詮はこんなもんか」


クロム「グハッ......」


ヴァル「てっめぇ!」


「龍殺しと言えど、大した力じゃねえな」


ヴァル「なっ......」


 ダメ......


 クロムさんも、ヴァルも、そんな力じゃエンマには対抗できない......


 8属性の力を有したあいつは、その力をもって全てを破壊し尽くす。地獄の悪魔。そう呼んでもいい。


ヒカリ「なんで、なんで起動しないの!お願いだから動いてよ!」


「お前は、仲間がこんなんになってるのに、未だにカチカチしてるだけか」


 いつの間にか、クロムさん、ヴァル、セリカ、テミが倒れていた......。


「ま、お前にとっちゃ、こいつらは都合のいい手駒か」


ヒカリ「違う......」


「何が違うってんだ?」


ヒカリ「違う違う!」


「何も違わねえだろ。解放軍にいた時は、悪魔の科学者とか呼ばれてたなぁ。感情の籠ってない瞳で、黙々と人殺しの道具を作り続けるお前の姿は、悪魔そのもの」


 やめろ......やめろ!


ヒカリ「嫌......嫌......」


「またそれか。嫌々言ってても、何にもならねえぞ?周りに向かって、猿だガキだほざいてたが、お前が1番のクソガキだ」


ヒカリ「違う......違う......嫌......嫌......」


「......お前、やっぱ死んだ方が良かったよ」


ヒカリ「っ......やめろ。嫌だ、私は死にたくない......!やめて!」


 ゆったりとした足つきで、私の目の前へと姿を大きくしていく地獄の悪魔。


 死ぬなんてどうでもいいと思ってたのに、いざ死ぬとなると、やっぱり怖い......


クロム「させん......!」


「......ほう。まだ立ち上がれる力が残ってたか」


クロム「っ......ヒカリ、お前は少しばかり仲間を信用することが出来ないだけだ。そのせいで、疑心暗鬼になって出来るもんも出来なくなってる。お前の過去は幾らか聞いた。お前が人を信じられなくなる理由も十分に理解出来た」


ヒカリ「......クロム......さん」


クロム「なぁに、心配するな。俺はお前の味方だ。お前じゃ相手にできない奴でも、俺が倒してやる。なんせ、作者公認最強キャラの1人だからな。都合良くやってやる。だから、お前は俺達を信じてくれ」


 信じる......そんなこと......


ヴァル「そうだ!ヒカリ!俺達を信じろ!何があっても、俺達はお前を信じる!」


ヒカリ「ヴァル......」


セリカ「ヒカリん!私達、まだ戦えるから!」


アルテミス「ヒカリ......私、あなたがどれだけ変わっても、親友として支えるから」


 ......


 ......


 ......


 なんでそんなに私を信じれるの......


 私は、あなた達を2度裏切った。もう、信頼に値する価値などないと言うのに......


クロム「ヒカリ!これはお前の好きな貸しだ!」


ヒカリ「........................オープン・ザ・世界の書庫(ワールドアーカイブ)


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 いつ見ても真っ白な空間に、大量に並んだ本棚の数々。


 人体錬成に失敗した時から、私はここの住人となった。


 ねぇ、ここにならいるんでしょ?


 みんなが求めている、最高の存在が......


 私じゃない、ネイが......


ヒカリ「いた......」


 白色の髪をした胸の大きな少女。


 現実で見ていた、私の偽の体。


ヒカリ「ねぇ、あなたは、本当にあいつらのことを信じられるの?」


ネイ「......」


 その質問に、彼女はこくりと首を縦に振るだけ。


ヒカリ「......聞いていいかな?なんで、あなたは私以上に辛い目に遭って、それでも尚、前を向いて歩いて行けるの?」


ネイ「......」


ヒカリ「どうして、あなたは笑顔でいられるの?」


ネイ「......」


ヒカリ「現実では、あなたの仲間達が苦しんでいる。なのに、なんであなたは姿を現さないの?あなたがいれば、エンマを倒すことは容易なはず。なのに、なんで?」


ネイ「......ヒカリさん。私は、神ではあっても、人々を救うとか、厄災から世界を守るとか、そんな大それた事は出来ないんですよ」


ヒカリ「......」


ネイ「それでも、私は、ヴァル達と過ごす、笑っていられる明日を守りたいから、戦い続けるんです」


ヒカリ「笑っていられる......明日......」


ネイ「はい。私は、ヴァル達と共に、生きていくって決めたんです!」


 曇りなき笑顔。私じゃ、絶対に作ることの出来ない表情。


ヒカリ「......あなたなら、これを使えるかもしれない」


 最高の知識と機体を注ぎ込んで作った、最強の記憶。ネイになら、起動させることが出来るかもしれない。


ヒカリ「後は、頼んだわよ」


ネイ「......はい!」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


クロム「クソっ......」


「だから言ったじゃねえか。お前の力じゃ俺には勝てないって」


 クロムでも太刀打ちできない。なんなの、この化け物......


 それに、書庫に行ったヒカリんは、未だに帰ってこない。


クロム「......っ!」


「じゃあな、聖王。お前の時代はそこまでだ」


 クロムに向けて、禍々しくギザギザとした刃が向けられる。


「ニルヴァーナ!」


エンマ「......!なんだ、これは?」


 今の魔法はネイりんの......


「サブ主人公にラスボス級の相手をするのは大変なようですね」


クロム「ヒカリ......?」


「皆さんお待たせしました。時を操る最強の神、ネイ参上です!」


セリカ「ネイりん......」


ネイ「はい、ネイです」


「ほう、ネイの記憶が戻ったか」


ネイ「さあ!エンマ!あなたの相手は私です!」


「......ふっ、やれるもんならやってみろ!」


ネイ「......ヒカリさん。あなたの知識、お借りしますよ」


《ワールドメモリーズ》


「......?起動した?」


ネイ「えっと、これを腕の部分に挿してっと......」


 何度見ても、自分の体に異物を突き挿して体に取り入れるのは、少々気持ち悪く見える。


セリカ「ネイりん......?」


 メモリを体に突き挿したネイりんの体は、今までに見てきたように、ドラゴンになったり、ユニコーンになったりせずに、太い糸のようなものが髪の毛部分から出てきて、体のあちこちに突き刺されていく。


 そして、変な数字の羅列がネイりんの周りを取り囲んだ後、羽や尻尾など、体の見える部分に光が灯った。


ネイ「......さ、戦いましょうか?」


エンマ「......面白ぇ。やってやろうじゃねえか!」


 早速、エンマがブラックホールをネイりんに向けて放つ。


 それを、ネイりんは避けようとしない。


ネイ「......そんなもので、私にかすり傷1つでも付けられると思ってるんですか?」


 何の動作もなしに、エンマの魔法が消えた。


エンマ「何......!?」


ネイ「次は、私から行きますよ!」


エンマ「なっ......」


 姿が消えた......?


エンマ「っ......っ......なんだこれは......」


 エンマに攻撃が当たる瞬間だけ、ネイりんの姿が見える。


エンマ「クソっ......グランアタック・フレイム!」


ネイ「効かない」


 全ての魔法を消滅させるネイ。無効化するのではなく、当たる前に消している。


ネイ「さて、そろそろこれも使いますか」


 ネイりんの髪の毛から、1つの大型の剣が生成される。


エンマ「なんだそれは......」


ネイ「ふふっ......その体で味わうといいですよ」


 大型の剣にしては、ネイりんが振る速度は早いし、正確にエンマの動きを捉えている。


エンマ「ちっ、でも、所詮は大剣だ!小回りは効かん!」


ネイ「残念です。この武器、2つに分裂するんですよ?」


エンマ「なっ......」


ネイ「ワンタッチ変形です。全部で、8本にまで分かれますよ」


エンマ「ちっ、どんだけめんどくせぇ構造にしてやがんだ」


ネイ「それだけじゃありません。今の私、常に世界の書庫(ワールドアーカイブ)に接続しているので、あなたの動きは全て読み切っています。また、全ての魔法、及び世界の原理を超えたものをノーモーションで使用可能ですよ」


 言ってる事の8割が理解できないが、とにかくすごいということで良いのだろう。


 ただ、ネイりんが言った通りなのかな?ユミの時とかに使っていた、長ったらしい呪文を詠唱しないといけない魔法を、全てなんの動きもなしに放っている。


エンマ「ちっ、ワールドエンド・滅亡」


クロム「まずい!全員伏せろ!」


エンマ「いくらお前でも、これを防ぐことは出来ねえよなぁ?」


ネイ「残念ですけど、それもラーニング済みです」


エンマ「なっ......」


 何か凄いものが来るんじゃないかと思ったが、やっぱりネイりんが全て打ち消してくれる。


ネイ「では、今度はこちらから行きますよ」


「ちっ......逃げるしかねえ」


ネイ「逃がしません。バーストライズ・テラドライブ」


 まず、ネイりんの髪の毛がエンマをぐるぐる巻きにして動きを封じる。そこから、8本に分裂した剣が、エンマの周りを囲むように浮かんでいる。


ネイ「フレイム」


「グアッ!」


ネイ「ウォーター」


「っ......!」


ネイ「トルネード」


「ハッ......」


ネイ「ブリザード」


「くっ......!」


ネイ「エレキ」


「ガアッ!」


ネイ「シャイン」


「っ......!」


ネイ「ダーク」


「ハッ......!」


ネイ「クリスタル」


「ガハッ......」


ネイ「8属性の刃を喰らえ!」


エンマ「う、おぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 何とかして、エンマはネイりんの攻撃を受け止めているが、それも時間の問題。すぐにネイりんに押し切られる。


「オラッ!」


 すんでのところで、エンマはネイりんが持っていた剣全てを弾き飛ばす。


 倒れているエンマに対し、ネイりんが正面に立っている。


エンマ「これなら、俺の方が有利だな?」


ネイ「こうなることを予測していないとでも?」


 いつの間にか、ネイりんは2本の拳銃を構えていた。


エンマ「なっ......」


ネイ「コンソール・ログ・ゼロ!」


エンマ「クソォォォォォォォ!」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


エンマ「............やるじゃねぇか」


ネイ「まだ生きてるんですか」


エンマ「流石、悪魔の科学者制の兵器だ。全然適わねぇなぁ」


 見た目だけを見れば、ただのグランメモリに色とりどりの8個の飾りをつけただけのもの。それを、体に突き挿せば、髪の毛の一部がコードとなって私の体のあちこちに突き挿されていく。


 そして、視界には敵の次の動き、敵の弱点、次にするべき行動など、戦闘を有利にするための情報が次々と映し出されていく。


 オマケに、稲妻のように駆け抜ける速さと、プログラムによるノーモーションの魔法。こんなものを、ただ世界の書庫(ワールドアーカイブ)に接続出来るだけで作ることができるとは......


 ヒカリ......私から見ても恐ろしい存在だ。


エンマ「あーあ、もう体が動かねえし、呼吸も辛くなってきやがった......」


ネイ「膨大なデータの入ったメモリを使った反動ですよ。そのうち死にますね」


エンマ「......まあいいや。俺の目的は達成されたわけだしな」


ネイ「目的?」


エンマ「最後に、1つ......いや、2つ良いことを教えてやるよ」


ネイ「......」


エンマ「ヒカリ、まだ中にいるんだろ?そして、どうせ聞こえてるんだろ?」


ネイ「ええ、聞こえてますよ。今は外に出てきませんけど」


エンマ「......お前の先生、世界を破壊する存在として、暴れ回ってやがるぜ」


 先生......?


ヒカリ(そんな事、もう知ってるって伝えてください)


ネイ「そんな事、もう知ってるらしいですよ」


エンマ「......だろうな。龍を蘇らせてアポカリプスを呼び込んだのはあいつだしな」


ネイ「......」


エンマ「そして、もう1つ。今度はネイに対してだ」


ネイ「私?」


エンマ「これをくれてやる」


 エンマが投げ渡してきたのは、1枚の写真。しかも、色が着いてる......そして、写っているのは、白色の髪をした女性。


エンマ「多分だが、ヒカリは知ってんだろうな。アテナとか、シヴァが自分と血の繋がった家族ではないことに」


ネイ「......?」


ヒカリ(......こいつ、どこでその事に)


エンマ「そこに写ってるのは、お前の血の繋がった姉ちゃんだ。名前は、『イデアル』って言うらしい」


ネイ「血の繋がった......家族......」


エンマ「どこかの世界にいるらしいぞ」


ネイ「なぜこれを、私に?」


エンマ「......どうするかは......お前ら次第だ。じゃあな、俺は一足先に、地獄ってもんを、見てくるぜ」


 エンマの体が消滅して、1本の禍々しいメモリだけがその場に残る。


ネイ「ヒカリさん、どういう事でしょうか?」


ヒカリ(私には、アテナとシヴァという名前の兄弟がいた。途中で、血の繋がってない、赤の他人だってことに気づいたけどね。それで、本当の家族がいるんじゃないかと思って探し続けてたわけだけど......)


 それが、この写真に写っている女性......


ヒカリ(どうするかは私達次第......)


 ......


 ......


 ......

人物紹介

アトラス

性別:男 所属ギルド:なし

好きな物:孫娘のゼイラ 嫌いな物:シドウ

誕生日:8月2日 身長:161cm 64歳

見た目特徴:白髪でほぼグランメモリーズマスターのヴァハトと同じ。ただ、普段から服装がきちんとしている。


 グランアーク現国王であるお爺さん。ゼイラが孫娘であり、ゼイラを守るためなら何でもする自信があると言う。


次回予告

第7章12 章末 【悪魔の科学者】

 いやぁ、第6章の反動か短かったすねぇ。そういや、リーシアどこ行ったの?問題ですが、彼女は実家に帰省しております。なんか、この話をどっかでした気がするんだけど、気のせいだよね?次回は短いので、そこでワールドメモリーズの能力解説しまーす。

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