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グランストリアMaledictio  作者: ミナセ ヒカリ
第6章 【龍の涙】
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第6章34 【反撃の狼煙】

「ほう、龍を倒す者が現れましたか。実に興味深い。あれを成し遂げたのは、やはり彼女でしょうか?」


「こんの、ヤロー!」


「おや、次はあなたですか」


「おわっと......」


 ジークからある程度は聞いていたが、こいつ、メチャメチャ強い感じがする。


 なんて言えばいいのか分からないが、あいつの周囲に漂うマナの量、全てを見極めているかのような瞳。そして、ネイが手も足も出なかったという事実。


「あなたも、私に挑戦するつもりですか?」


「当たり前だ!お前を倒さないと、この戦いは終わらねえからな!」


「動きは、あの少女よりも格段に良い。ですが、私相手にその速度で抗うことは出来ませんよ」


「戦闘中にベラベラ喋ってんじゃねえ!」


「ふふっ......」


 右に、左に、拳を振っても、一切当たらねえ。フェイントも仕掛けてるってのに、全て読み切ってやがる。


「グハッ......」


 そして、一瞬の隙にほんのちょっとの攻撃。これが痛すぎる。


「火の......龍殺し(ドラゴンスレイヤー)でしたっけ?」


「ああ?」


「あなたは、下にいるドラゴンを倒さなくて大丈夫なんですか?」


「問題ねえよ!もう2体も倒されてんだし!」


「なるほど。ですが、いつまでも有利な立場でいられるわけではありませんよ?」


「ああ?どういう意味だそりゃ......」


「アポカリプス。彼が、ここにやってくれば、例え龍が全滅していようが関係なし。世界は終わるのです」


「そうはさせねえよ!てめぇをぶっ飛ばして、龍も全部ぶっ飛ばす!それでゲームセットだ!」


「そうなるといいですね。ですが、あなたは私を止めることが出来ますか?答えは簡単。あなたには出来ないでしょう」


「何言ってんだてめぇ......俺がぶっ飛ばす!ぶっ飛ばすからにはぶっ飛ばす!」


「......なぜ、彼女がこんな男を選んでしまったのでしょうね」


「ああ?」


「いえなんでもありません。さあ、始めましょうか?」


「......っ」


 何言ってんのか全っ然分かんねぇ......


 つか、なんでこいつがネイの事を知ってんだよ。あいつの秘密を知ってるのは、俺達、グランメモリーズのメンバーだけだったはず。どこから聞きつけたんだ?


「地獄龍の鉄砕!」


「まだまだです」


「なっ......」


 地獄の豪炎に包まれた拳を、なんの魔法も使わず、素手で受け止めやがった......


「そう言えば、言ってませんでしたね。私、魔法を受け付けないんですよ」


「はぁ?」


「近くに、似たような存在があるのではないですか?と言っても、今はそこまでの力はないようですけど」


 ネイ......


 でも、あれは神だから出来ることであって、異常な雰囲気を漂わせているだけのこいつが、そこまでの力を持ってるとは思えない。


「お前、何もんだ?」


「ヒカリ・ラグナロク。かつて、そう呼ばれていた者ですよ。今の私に名前はありません」


「意味が分かんねぇ......」


「いずれ理解出来ます。それまで、生きてると良いですけどね」


「っ......クソっ!」


 無理矢理に掴まれていた腕を振りほどく。


「おい坊主!そっちはまだか!こっちは絶賛苦戦中だ!」


「俺だって苦戦中だ!邪魔すんな!」


「あ、悪ぃ......」


 足場がイマイチ安定しねぇな。そのせいで、力も入れにくい。


 あいつ......若干自分の体を浮かせてるな?通りで動きが早いし、変な揺れで鈍ることもないわけだ。


「......?おや、龍の消滅が始まったようですね」


「消滅?」


「恐らく、精霊魔導師でしょうか?よくもまあ、こんな方法を見つけたものです。感心しますね」


「何言ってんだてめぇ」


「どうやら、私の負けのようです。ここは、大人しく引いておきますか」


「......!待て!逃げるのか!」


「逃げるのではありませんよ?これはゲーム。今回のセットは、あなた達が取ったというわけです。......おや?案外そうでもないかもしれませんね」


「ああ?」


「あなた達が、この逆境をどうやってひっくり返すのか。楽しみにしてますよ。先の未来で」


 そう言い残して、ヒカリと名乗る男は消えた。


「なんだったんだ......」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 ヴァルが上で戦っているのと同時刻。


ノア「つまり、時を戻すことによって、龍の召喚をなかったことにするのですね?ベルメル様」


ベルメル「はい!ですが、儀式には時間がかかります。それまでの間、私達3人を守り切って欲しいのです」


 かつての仲間、コールドミラーに頼みかけるベルメル。その表情には、僅かな不安を抱えていた。


レイヴン「それで世界が元通りになるのなら、俺はなんだって構わない。ノア、今の俺達は龍に対して有利な立場になっている。3人を守るくらい簡単な事だ」


ノア「そのようでございますね。では、儀式をするのなら早めに。私共でも、長時間耐え続けるのは無理でございます」


カルマ「別に、俺達があれを殺ってしまっても構わんのだろ?」


ベルメル「ええ。それが可能ならば、それでお願いします。ですが、龍はそんな簡単には死にません」


レイヴン「任せてろ。滅龍の力、今こそ真価を見せる時だ」


ベルメル「......よろしくお願いします」


 ベルメルの想いは伝わったようだ。


 なら、ここからは私達の仕事ね。


ベルメル「セリカ様、術式の詠唱を、ネイ様は時の魔術の発動を」


セリカ「任せて!」


ネイ「やります」


セリカ&ベルメル「「 喚霊・我、精霊と契約せし者。汝、我らの声を聞き、その扉を開きたまえ 」」


 12体の精霊の同時召喚。術式は違うが、ここまではネイりんとやったのと一緒。


セリカ&ベルメル「「 全霊解放!時ノ雨! 」」


ネイ「新月の世界」


「な、なんだ......!これは......!」


ノア「滅神奥義・氷魔繚乱(ひょうまりょうらん)


レイヴン「滅龍奥義・怨波絶霊激(おんはぜつれいげき)


ソアラ「ワンハンドレッドソード!行っけー!」


エスメラルダ「双剣乱舞!」


シズク&ディーネ「「 氷華水蘭(ひょうかすいらん)! 」」


 龍の時間を巻き戻しつつ、他の面々が追撃を仕掛ける。


「グッ......アァァァァァァァ!」


 龍は抵抗出来ない。みんなの魔法によって。


セリカ&ベルメル「「 はぁぁぁぁぁぁ! 」」


「くっ......無念......」


 龍が消えた......


ベルメル「......セリカ様、次に行きます!」


セリカ「うん!」


 気づけば、残る龍は上にいる2体と、地上に1体。これらの時間を巻き戻せば、全てが終わってくれる。


 そう信じて、私は走り出す。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


リアム「滅龍奥義!光波絶命斬!」


ゼブン&ゴア「「 水地然氷! 」」


デラ「虚無の光!」


ジン「闇炎の激浪」


スー「風魔砲雷!」


「っ......」


リアム「終わりだ!シアンノヴァ!滅龍奥義、光波絶命斬!」


「ぐっ......アァ......ァ......ァ......」


 やった......のか......


「中々やるようだな人間。だが、これで終わりではない。龍は、奴はこの世界を滅ぼす......」


リアム「何言ってんだ......」


「よく聞け人間。奴が、ここに向かっている。お前ら人間では、奴に抗うことは出来ん」


リアム「何が来るってんだ!」


「......ふっ、俺は消える。お前らに、奴に抵抗する手立ては無くなる。果たして、どうなる事やら......」


リアム「おい!待て!最後まで言ってから消えろ!」


 俺の願いも虚しく、龍は消えた。俺のこの手によって......


 何かが来る......


 アポカリプス......確か、この戦いの最初に言われていた計画に、アポカリプスの討伐だとかなんだとか言われていた気がする......


リアム「......クソっ!」


 まだ終わらねえのかよ......


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


シオン「滅龍奥義・淵龍破断(えんりゅうはだん)!」


ブラッド「ブラッディシルバー」


レクト「怨念波弾!」


レイガ「アイスクリエイト・タイガー!ドラゴン!」


ピアナ「滅神奥義!新羅水豹!」


 シェミスターライトの一斉攻撃によって、龍が膝をつく。


セリカ&ベルメル「「 喚霊・我、精霊と契約せし者。汝、我らの声を聞き、その扉を開きたまえ 」」


ネイ「新月の世界」


セリカ&ベルメル「「 全霊解放!時ノ雨! 」」


「っ......どうやら、あなた方人間の方が、1枚上手だったようですね」


 光龍・グランネルヴァは、「やっと終わった」というふうな表情をして、ゆっくりと消えていった。


セリカ「地上のドラゴンは、これで全部?」


ベルメル「恐らく......姿が消えたドラゴンは、他の龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の皆様がやってくださったのでしょう」


 ネイりんの力によって、この街にいる魔導士は、全員龍に対して攻撃が効くようになっている。それのお陰で、強い魔導士が集まっているところは、他よりも楽に倒すことが出来たのだろう。


 ならば、残っているのは空にいる2体。うち、火の方はネイりんの内側にいたドラゴン。時間を戻すのは1番最後で良さそうだ。


ネイ「......ゲーム......オーバー......」


セリカ「え......?」


ネイ「......時間切れ」


ベルメル「どういう事ですか?」


 突然、ネイが発した言葉。ネイの顔に浮かぶ動揺......。


 私の脳裏に、嫌な予感が過ぎった。そして、恐らくそれは現実のものとなる。


ネイ「......アポカリプスの......襲来......世界は......終わる」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 男は消えた。ジークと戦っていた龍は、動きを止めた。多分だが、龍王とやらがいなくなったからだろう。


ジーク「おい坊主......俺、少しばかり、嫌な予感がするんだが......」


ヴァル「ああ、嫌な予感がするのは俺も同じだ」


 あの男が最後に残していった言葉......


 「あなた達が、この逆境をどうやってひっくり返すのか。楽しみにしてますよ。先の未来で」


 奴は消えた。自分の負けだと言っていた。だけど、俺達はまだ逆境に立っている。


 どうやってひっくり返すのか......。


ジーク「......おい!坊主!あれを見ろ!」


ヴァル「なんだ?急に......って......」


ジーク「来ちまったよ......世界の厄災、お嬢を殺した龍......」


ヴァル「アポカリ......プス......」


 漆黒の体に、巨大な図体。この距離でも感じる禍々しさ。


 時間切れ......アポカリプスが来る前に、全ての龍を討伐しきれなかった......


ジーク「クソっ......ありゃ、俺達龍王でどうにか出来るもんじゃねえぞ!」


ヴァル「んなこたァ聞いてねえ!どうすんだ!?厄災が来ちまったぞ!」


ジーク「知らねえよ!とりあえず、お嬢のところだ!お嬢に話を聞くしかねえ!」


ヴァル「あいつでも倒せねえ相手なんだろ!?聞いたところで動揺してるだけだろ!」


ジーク「まだだ!まだ、あの聖王がこの近くに来てんだ!あいつの力を借りれば......」


ヴァル「エクセリアでも倒せねえ相手って説明だっただろうが!つか、あの王様近くに来てんのかよ!大会中、一切顔見せなかったけど!」


ジーク「とりあえず、ここでグチグチ言い合ってても仕方ねえ!行くぞ!しっかり掴まれ!」


 ネイが勝てないってだけで、こうも動揺しちまうんだな。どんだけあいつ頼りに生きてんだよ!クソっ!


 世界の終焉が訪れる......俺達人間に抗う手段はない......

人物紹介

エレノア・ライトラル

性別:女 所属ギルド:グランメモリーズ

好きな物:王都のスイーツ 嫌いな物:辛い物

誕生日:12月25日 身長:160cm 18歳

見た目特徴:ちょっと色の薄い金髪ショートヘア少女。白を基調とした服装で、カチューシャを着けている。バストサイズはD


 光、風、氷、雷の4属性を扱うトワイライトの魔導士。ところで、トワイライトとは、光と闇を除いた基本属性の中から、3属性を同時に扱うことの出来る人の事を言う。ちなみに、エレノアの家名に『ライト』が付いてるので、セリカの親戚です。

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