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グランストリアMaledictio  作者: ミナセ ヒカリ
第6章 【龍の涙】
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第6章24 【呪術の番人】

「「「 うわぁぁぁぁぁ!!! 」」」


 ドン!


 デン!


 ガン!


 チン!


ヴァル「お、重てぇ......」


 上からバッタバッタと人が降ってくる。落ちてくる度に、俺の体へととんでもない負荷が......あ、重たいとか言いたいわけじゃないよ。


セリカ「ここどこ?」


 見覚えのある景色......あれだ、なんかの鉱石が張り巡らされているあの洞窟だ。


ヴァル「そういや、城の手前で落ちてたもんな......」


エフィ「どうします?上の方はとっくに塞がれてますよ」


レラ「というか、ここって何なの?」


 ああ、説明すると長くなるな。どうしよう......。


ヴァル「あれだ。俺とセリカとネイが落ちて、あの王女様どもに捕らえられた場所だ」


ミラ「ああ、なるほど。そこね」


 今ので理解出来たのか?


セリカ「......とりあえず、出口を探しましょ?」


ヴァル「あるのか?出口」


セリカ「さあ?でも、隅々まで探したってわけじゃないんだし」


ミラ「まあ、何とかなるわよ。魔法だって使えるんだし。ほらヴァル。自慢の嗅覚で出口をさがして」


 あのさぁ、俺の鼻はそんな便利なもんじゃねえんだよ。この状況なら、風の音を聞き分けられるネイの方が......


ヴァル「お、こっちから新鮮な風の匂いが」


 ヤバい。こんな澄んだ場所だと、綺麗な空気の匂いが分かる。どうしよう。まあいいや、出口が分かるならそれに越したことはない。


ヴァル「よぉーし、こっちだー!ついてこい!」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


フウロ「風神の舞!」


エスメラルダ「双剣乱舞!」


 高速に回転する剣と剣が、甲高い音を立てている。


 モデル業を営んでいると聞いたが、自身を鍛え上げる時間は十分に確保しているようだ。剣に無駄な動きが一切ない。


フウロ「お前、その剣の動き、どこで覚えた?」


エスメラルダ「モデルやってる同業者に、この手の使い手がいてね。教えてもらったのよ。モデルをしながら」


 なるほど。無駄な生き方は一切していないというわけか。剣一筋の私と互角に渡り合う剣の強さ。


フウロ「私も、モデルをやれば強くなれるだろうか」


エスメラルダ「馬鹿なこと言わないでよ。あんたは、その剣の強さ一つで十分でしょ!?」


フウロ「いや、人生というのは、欠片も無駄にしたくはない。出来ることはなんでもやってみるべきだと思う」


エスメラルダ「好きにやりなさいよ。あなたの人生だわ。だけど、それならここで手を抜く訳には行かないわね」


フウロ「......水神の舞!」

エスメラルダ「布陣・剣鬼!」


 あたりに散らばる大量の短剣。その全てが、私に狙いを定めて飛んでくる。


フウロ「雷雨!」


 所詮はただの剣。雷を当てて撃ち落とす。習得してよかったライオスの技。


フウロ「次はこちらから仕掛けさせてもらう!氷炎乱舞!」


 ヴァルとヴェルドが見せた、炎と氷を同時に操る技。出来ないと思っていたが、あの2人が出来たところを見ると、私にも出来るようになっていた。


 エスメラルダの2本の剣と、私の剣。お互いに、剣に対する愛は深いようだ。剣についている傷と、それを治した痕。戦えば、エスメラルダの剣にもその痕が付いているのが分かる。そこから、剣への愛を感じる。


 普通の人なら、ボロボロになって、錆びれた剣は捨ててしまう。でも、私は物を大事にする。大事にし過ぎるほどに。


フウロ「......そろそろ決着を付けよう」


エスメラルダ「OK。必殺技で勝負よ!桜羅双乱舞!」


フウロ「火、水、然、風、雷。アトリビュートブレイク!」


 ......


 ......


 ......


エスメラルダ「......流石ね。その剣に付いてる、何度も治した痕。私のより凄いわね」


フウロ「お前も、中々に物を大事にするんだな。今回は、私の剣への愛が強かっただけだ」


エスメラルダ「......じゃあ、次は私のボロ剣で負けを認めさせてあげるわ」


 私の勝ちだ。


 また1つ、剣に傷がついた。大会が終わったら、いつもの鍛冶屋に持っていかないとな。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


セリカ「ねぇヴァル。本当に、こっちの方角から新鮮な......風の香りだっけ?を感じてるの?」


ヴァル「言い訳させてもらうと、その風が吹いてくる方角が変わってるんだよ。だから、さっきから方角が定まらねえ......」


 何それ......結局は、その鼻はダメだってことなんじゃないの?


ミラ「困ったわねぇ。これじゃあ、日が暮れちゃうわよ」


レラ「その日は見えないけどね......」


エフィ「大丈夫ですよ。きっと、何とかなります」


 みんなお気楽でいいなぁ。私は、鍵が全部無くなってることがどうにも気がかりだって言うのに。


ヴァル「お、何だこりゃ?」


 雑誌......それも、モデル雑誌。ヴァルが拾ったのは、丁度エスメラルダが表紙の回だ。


ミラ「なんでこんな物がここにあるのかしら?」


エフィ「ひぇっ!」


 突然、エフィが尻もちをついて倒れる。


ヴァル「どうした、エフィ!」


エフィ「あ、あの......こ、これ......」


 エフィが指さした方向。


ヴァル「骸骨......?」


 大分、岩と同化するように黒ずんでいるが、間違いなく人体の頭のような骨格の骨である。


ミラ「ここに落ちてる雑誌と、人体の骨......ここに落ちて出られなかった人かしら?」


レラ「1度入ったら出られない、正に脱獄不可能の迷宮って感じだね」


 たまたま持ち合わせていたのが、このモデル雑誌か......


セリカ「20日目、今日も外に出られそうにない。私は、ここで生涯を終えてしまうのだろう。だから、ここに書き記しておく」


ヴァル「何読んでんだ?」


セリカ「この雑誌に、なんか手書きで書いてある文章」


レラ「へぇ......なんて書いてあるの?」


セリカ「ちょっと待ってね。『この洞窟に落とされてから、飲まず食わずで20日間生き続けた。水のない環境で、これだけ生きられたのは、最早奇跡だと思う。もし、ここに落ちてくる者がいるのなら、呪術師に気をつけよ』」


ヴァル「呪術師?」


エフィ「処刑人かなんかでしょうか?」


セリカ「さあ?文章はここで終わってるね」


 呪術師か......。大分時間が経ってるから分かんないけど、確かにこの遺骨には、所々に傷痕が残っている。それに、この雑誌が割と最近のものであるということから考えるに、その呪術師は普通にいると考えられる。


ヴァル「何にせよ、早くしねえと死ぬってことだな。急ごうぜ」


ミラ「そうねぇ。この雑誌は、何かのために貰っておきましょうか」


レラ「いるの?これ」


ミラ「だってこれ、2年前に発売された限定版じゃない。傷物だけど、お値打ちものよ」


 そうなのか......知らなかった......。いや、でも要らなくない?こんなの、魔法の1発だって防げやしない。


ヴァル「......?何か、生き物の匂いを感じるぞ。人だ」


セリカ「もしかして、私達以外にも落とされた人が?」


ヴァル「......全員、俺の後ろに下がれ」


 どういう事?でも、ヴァルは真剣な顔。おふざけではない。


「あら?随分と鼻がいいのねぇ」


ヴァル「誰だテメェ。ここに落とされた奴じゃねえな」


「ふふ、ふふ。そうよ、私は、呪術師。人を呪い殺すのが仕事......」


ヴァル「要するに、処刑人って事か」


「ええそうよ。私は死神。シヴィニア。別名、深淵の呪殺者・ハーデスとも呼ばれているわ」


 聞いた事のない名前......当たり前か。処刑人なんて、表に立って仕事をするわけじゃないし。


エフィ「あっ......うっ......」


セリカ「どうしたの!?エフィ!」


 突然、エフィが腹を抱えて倒れる。顔が真っ青になっていて、まるで食べてた物に毒でも盛られてたみたいだ。


シヴィニア「ふふ、ふふ。その子、簡単に呪いが効くのね......」


ヴァル「テメェ!今すぐ呪いを解け!」


シヴィニア「解く?無理よ。呪いは、発動したら最後。解くことなんて出来ないわよ?」


ヴァル「なんだと......!?」


シヴィニア「呪いは、かかれば最後。死ぬまで効果は持続されるわ」


 なんて事だ。って事は、エフィはずっとこのまま。私達の中に、治癒術を使える者はいない。せめて、私の元にアルラウネの鍵だけでもあれば......


ヴァル「呪術ってのは、発動者殺せば解除されんだろ?なら、俺はお前を殺す!」


シヴィニア「良いわ。その目。殺せるものなら殺してみなさい」


ヴァル「地獄龍の鉄砕!」


シヴィニア「アハハハハ」


 ヴァルの攻撃を易々とかわしている。


ミラ「ヴァル、私達も援護するわ!変身」


レラ「変身!」


 ミラが悪魔の姿に、レラが天使のような姿へと変わる。


ミラ「サタンブレイク!」

レラ「エンジェルバリア!」


シヴィニア「悪魔の攻撃に、天使の護り。良いわ。もっとそういうのを頂戴!」


 ......なんか、ネイと似てる部分を感じる。気のせいだろうか。


シヴィニア「はいタッチ」


ヴァル「っ......!」


シヴィニア「どんな呪いをかけてあげようかしら?そこの可愛い子と同じ?それとも、頭痛?腰痛?筋肉痛?」


ヴァル「腰痛以外でお願いします」


シヴィニア「分かったわ。腰痛ね」


ヴァル「痛ってぇ......!ネイ乗せて歩いてた分が今になってやって来たぁ!」


 これ、なんていう状況?わざとやってるの?


ミラ「サタンブレス!」


レラ「エンジェルスピア!」


シヴィニア「残念。筋はいいのだけれどねぇ。私には当たらないわ」


ヴァル「氷龍の翼撃!」


シヴィニア「っ......」


 やっとシヴィニアにまともな攻撃が当たった。


シヴィニア「......良いわ。この痛み。良いわねぇ」


ヴァル「ドMかよ......そのキャラはネイだけで十分だ。......悪ぃ、やっぱお前そのまんまでいいわ。ネイには清楚系ヒロインになってもらうし」


シヴィニア「......よく分かんないけど、私はあなたを呪い殺す。その覚悟は出来てるかしら?」


 私も、ヴァルが言ったことの意味が分からなかった。そこだけは同情する。ただ、殺すという部分は同情できない。


ヴァル「めんどくせぇなこいつ!攻撃が当たらねぇ......」


シヴィニア「あなた、いい筋してるわ。でも、そんな速さじゃ私には当たらない」


 この状況、どうすれば......


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


ヴェルド「シアラ、お前、なんで俺についてきてんだ」


シアラ「シアラはヴェルド様と運命を共にするのですよ」


ヴェルド「やめろ。俺はそんなつもりねえんだよ。離れろ!」


シアラ「えぇ、シアラがいた方が、敵をたくさん倒せると思いますよ?2人1組で移動した方が、前と後ろで戦うことだって出来ますし」


 ぜってぇフウロの言葉を丸パクリしただけだろ。お前がそんな考えを持ってるわけがねえ。俺と一緒にいるための口実だ。


「おやお2人さん。デートの途中か?」


ヴェルド「誰だテメェ」


「忘れたとは言わせんぞ。ネイちゃんの既婚者が」


 悪ぃ。それ俺じゃねえわ。人違いだわ。


ヴェルド「何を間違えてんのか知らねえけど、俺はあいつにさらさら興味はねぇ。つか、俺が言うのもあれだが、この状況見てよくそんな言葉が出たな」


「......すまん。あまりにもあの光景が脳裏にチラつくもんだから間違えた。今のは忘れてくれ」


 忘れるも何も、気持ち悪すぎて忘れられねえんだけど。


ヴェルド「まあいいや。ここで会ったが運命。ポイントにさせてもらうぜ」


レイガ「俺の名前はレイガ。氷の造形魔導士だ」


ヴェルド「俺の名前はヴェルド。氷と炎の造形魔導士だ」


 こいつ、シアラには興味ねえんだな。既婚者はダメとかそういうこと言ってたし、この状況をそうだと認識してんだろうな。まあ、変な要求してくるよりかは、黙って戦ってもらった方が良い。


レイガ「1対2か。分が悪いな。ピアナ、お前も出てこい」


ピアナ「『俺1人に任せてろ』って言ったのはどこの誰よ」


レイガ「すまない。流石に、相手が2人では分が悪いと思ってな」


ピアナ「はぁ......もう分かったわよ。お似合いカップルには申し訳ないけど、私達が勝たせてもらうからね!」


 いや、カップルじゃなく、ストーカーする立場とストーカーされてる立場の関係なんですが......。

人物紹介

エクセリア

性別:女 所属ギルド:コールドミラー

好きな物:最強であること 嫌いな物:コールドミラーに歯向かう者

誕生日:11月1日 身長:170cm 23歳

見た目特徴:黒髪ロングの普通な見た目の女の子。バストサイズはFという、中々にデカい。


 コールドミラーのリーダーであり、転移術の使い手。格闘術を心得ており、その技量はヴァルをも凌駕する。

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