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グランストリアMaledictio  作者: ミナセ ヒカリ
第6章 【龍の涙】
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第6章15 【雷の神殺し】

「本日第3試合!ハイドロオーシャンズゼブン選手&ゴア選手VS、トゥインクルアスタロトディーネ選手&シズク選手の試合開始だァ!」


ゼブン「行くぞゴア」


ゴア「承知。兄者」


ゼブン&ゴア「「 水地然氷 」」


「おおっと!いきなり2人の合わせ技!4属性の攻撃がディーネ選手とシズク選手に襲いかかるー!」


「タッグバトルらしい技ですな」


「ええ。私はこういうのを見たかったんですよ」


「国王も絶賛の合わせ技!果たしてディーネ選手とシズク選手の運命や如何に!?」


ディーネ「こんなのでやられないってば!」


 ディーネもシズクも余裕な顔で攻撃をかわしていた。


 ゼブンとゴアも、「これは挨拶代わりだ」という表情で次の攻撃を始める。


ディーネ「シズクちゃん。うちらもやるよ!」


シズク「はい、任せてください」


ゼブン&ゴア「「 水豹地変 」」


ディーネ&シズク「「 大海原の舞! 」」


 合わせ技に対して合わせ技をぶつける。巨大な魔法は、爆発を起こしてあたりに飛散する。


ディーネ「もういっちょ!」


ディーネ&シズク「「 大海原の舞! 」」


ゴア「兄者」


ゼブン「ガイアウォール」


ゴア「水神の氾濫」


 ゼブンが守り、ゴアが攻撃する。


 2人同時に攻撃しているディーネとシズクには、その分隙が多くなる。ゴアはそこを狙った。


ディーネ「やるね。うちらの弱点も見切っとるってわけか。なら、2人別々にやる?」


シズク「いえ。こういうのは、火力で押し切るのが大事ですよ」


ディーネ「OK!シズクちゃんがそう言うなら、全部合体技で決めたるさかい。よう見ときぃよ?」


ゴア「兄者、どうする?」


ゼブン「気にするな。俺達は俺達の戦いをするだけだ」


ディーネ&シズク「「 氷華水蘭! 」」


 大海原の上に、ぽつんと咲く氷の華。その華は、あたりの生命を吸い付くし、自らの養分としていく。


 水、氷、地、然という、生命と関わりの深い属性を扱う2人にとっては、この攻撃の対処は難しい。なぜなら、ディーネとシズクの魔法は、それら4属性の魔法を吸収する力を持っている。


 簡単に言ってしまえば、ハズレくじを引いたということ。厳しい戦いになるのは確実だ。


 だが、ゼブンもゴアもそう簡単に負けはしない。


ゼブン「氷壁」


ゴア「水雲」


ディーネ&シズク「「 氷華乱舞! 」」


 ゼブンとゴアは、2人で守りを固めるが、それよりもディーネとシズクの攻撃の方が強い。


「激しい魔法と魔法のぶつかり合いだー!」


ディーネ「シズクちゃん、どんどん押し切るよ!」


シズク「任せて。トゥインクルフィールド」


 トゥインクルフィールド。この技は、トゥインクルアスタロトのメンバーのみに作動する技。攻撃力、防御力、素早さ。各能力を上昇させ、更に体力まで回復する。


ディーネ「行くよー!必殺!絶冷水神!」


ゼブン&ゴア「「 アースブレイク 」」


 ディーネ1人の技に対して、ゼブンとゴアが同時に地属性の破壊魔法で対抗する。だが、ディーネの方が若干強い。


ゼブン「粉塵」


 ゴアに当たるはずの攻撃を、ゼブンが全て受け止める。


ゼブン「やれ、ゴア」


ゴア「承知。ガイアブレイク」


ディーネ&シズク「「 氷華乱舞! 」」


 ......


 ......


 ......


 激しい魔法と魔法のぶつかり合い。正統派の戦いを制したのは......


「ゼブン選手、ゴア選手、共に戦闘不能!よって勝者!トゥインクルアスタロトのディーネ選手とシズク選手だァ!」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「さて、本日最後の第4試合!グランメモリーズAライオス選手&レラ選手VS、ダークソウルケンセイ選手&マセイ選手だァ!」


「本日、1番気になる戦いですな」


「ええ!それでは、試合開始ですっ!」


ライオス「サンダーフィールド!」


ケンセイ「......」


マセイ「......」


 ほう。2人とも、"何もしない"を取るか。面白い。


ライオス「雷雨!」


レラ「ちょっと、そんないきなりバンバンやって大丈夫なの?」


ライオス「今のはほんの挨拶代わりってやつだ。これくらいでくたばることはない」


レラ「本当かな?」


ライオス「いいから、黙って試合に集中しろ」


 ダークソウル謎の魔導士。ネイやマスターの言葉通りなら、黒魔法と呼ばれる原種の魔法を使ってくる。


 トワイライトの称号を持つエレノアが、手も足も出なかった相手だ。油断は出来ないし、観覧席の方からの不正も有り得る。


レラ「変身!タイガー!」


ライオス「雷神の共鳴!」


ケンセイ「......」


マセイ「......」


 何の反応も無しに魔法を全て防いでいる。


 これが、黒魔法と呼ばれるやつなのか......


ライオス「レラ!合わせろ!」


レラ「OK!任せといて」


ライオス「テラ・サンダー」


レラ「タイガーシュート!」


ケンセイ「......」


マセイ「......」


 どうにも戦いづらい。敵は攻撃をしてこないが、こちらの攻撃は当たらない。なんというか、戦っているという実感が湧かない。


 チラッとマスターの方を見るが、マスターもこの状況には悩みを見せている。どう戦えばいいのか。この黒魔導士相手にどうすればいいのか。


 ならば、黒魔法では防ぎ切れない魔法を使えばいい。


ライオス「滅神奥義!雷牙迅零!」


レラ「滅神魔法!?」


 前に、あの巫女軍師に言われたことがある。俺には神殺しの才能があると。


 そう言われた時から物凄い勢いで鍛えた。神殺しの魔法を扱える魔導士を探し、転々と技を伝授してもらった。そうして完成したのが、この滅神魔法だ。


ケンセイ「......」


マセイ「......」


 それでも、あの2人は俺の魔法を喰らっていない。一体どうなってるんだ?ネイの話では、黒魔法に滅魔法を防ぐ術はないということだ。この世界に魔法をもたらしたとか言うあいつが言うんだから間違いないはずだ。


 ......何か、何か仕掛けがあるはずなんだ。その仕掛けを何としてでも見つけ出す。


レラ「どうするの?ライオス。あいつら、どんな攻撃でも無効化して来るよ」


ライオス「まだ待て。慌てるような時ではない」


レラ「そうは言っても......」


ライオス「奴らの仕掛けを見つけ出す。それまで、殺られるなよ。雷神の罰制!」


ケンセイ「コードD104発動」


マセイ「了解。コードD104発動」


 なんだ?急にあいつらが動き出した。と思った次の瞬間、俺の足元に巨大な魔法陣が描かれていた。


ライオス「なっ......」


ケンセイ「コードD104・ブラックシャウト」


マセイ「コードD104・ブラックシャウト」


 聞いた事のない呪文。ミイの事件の時に、ネイが使っていたようなのと同じ感じがする。


ケンセイ&マセイ「「 マスターアクセイ、準備完了です 」」


 奴ら......今なんと......?


ケンセイ&マセイ「「 コードD104・ブラックシャウト発動 」」


 周りに暗闇が拡がってゆく。何も見えない。何も聞こえない。何も感じない空間。


 ブラックシャウト......暗闇に閉じ込めたということか。......奴ら、マスターの力を借りていたのか。あの、チラッと聞こえた言葉が本当なら、不正はマスターの力を試合中に使っていたということになる。恐らく、黒魔法と呼ばれるものは、魔法を全て理解したマスター......アクセイだったか、が使っており、コードと呼ばれるものは、何かの合図。


 不正に気づいても、こんな状態になってしまえば、それを試合中に報告することも出来ない。だが、ここで諦めるつもりはない。


(ライオス、聞こえておるか?)


「......誰だ?」


(妾じゃ)


 ツクヨミか......


「試合中だ。何の用だ」


(ほぼほぼ負けておるのに、試合中とは何じゃ)


 まだ負けてはいない。


「用を言え」


(......よいか。お主も気づいたと思うが、この黒魔法はあのギルドのマスターが使っておるものじゃ)


 ああ。何となく気づいている。


(この暗闇に包まれてしまった以上、彼奴らが解除するまで脱出はできん)


「諦めろと?」


(そうではない。滅神奥義の1つ上。壊神奥義ならばこの暗闇を打ち破れる)


 そんな魔法、ありとあらゆる滅神魔法の使い手を尋ねたが、聞いた事がない。


(今から、お主の頭に使い方をインストールしておく。どうするかは、お主次第じゃ)


 言葉が切れると同時に、俺の頭に訳の分からない術式が書かれていく。初めは何か分からなかったが、次第にその術式の正体が分かるようになってくる。


「関わりは少ないが、あいつは化け物だ」


 どうするかは俺次第。なら、ここであいつらの不正を暴いてやる。


「壊神奥義!雷破終焉!」


 溢れんばかりの雷が、俺を通して暗闇を明るく照らしていく。


 これは凄い。体中のマナをごっそりと持っていかれたが、威力は申し分ない。


レラ「ライオス!?」


ケンセイ「......!?」


マセイ「......!?」


ライオス「......見たかダークソウル!どんな不正を働こうが、俺には通用せん」


「ら、ライオス選手!巨大な暗闇から帰ってきましたァ!そして、不正とは何でしょうか!」


 仮にも実況なのに、そんな事に気づいてなかったのか。呆れる。


ライオス「......そこか!」


ケンセイ「......!?」


マセイ「......!?」


 傍から見れば、誰もいない方向に撃った雷。しかし、その雷は壁に当たることなく消え去っていく。


ライオス「いい加減姿を見せたらどうだ?マスターアクセイ」


アクセイ「なぜ分かった」


 大人しく出てくるもんなんだな。てっきり、しれっと逃げ帰るかと思ってた。


ライオス「お前と同じように、魔法の全てを理解してる化け物がいてな。そいつに教えてもらったんだ」


アクセイ「......」


ライオス「どうすんだ?不正は誰の目から見ても確実。大人しく引くんだったら見逃してやってもいいが......」


ケンセイ&マセイ「「 ダークブレイク 」」


ライオス「テラ・サンダー」


 どうやら、ここで見逃してもらうつもりはないらしい。徹底的に俺達を締め上げる気だ。


ライオス「レラ、下がっていろ。こいつらは俺1人でやる」


レラ「大丈夫なの?」


ライオス「信じてろ」


「だ、ダークソウルの皆さん!これは明らかな不正です!退場をお願いひぃっ」


 アクセイが実況席に向けて、闇の魔弾を撃つ。国王も座っていると言うのに、肝の据わった奴だ。


アクセイ「お前らを、徹底的に叩き潰してやる」


ライオス「やれるもんならやってみろ。おっと、後ろ2人はもう戦えそうにねえな。コードなんちゃらとかいうのは使えないぜ?」


アクセイ「チッ。フセイ、ソウセイ、キュウセイ、来い。コードS256だ」


 観覧席の方から、3人の魔導士が降ってくる。


ライオス「壊神奥義!雷破終焉!」


 降ってきたところに合わせて、とびきりの魔法をぶち込む。


アクセイ「チッ......」


 体中のマナが消えていく。あと1回使えるかどうか微妙だ。


レラ「ライオス、私のマナを受け取って」


 どこで覚えたのか知らないが、レラが自身のマナを全て俺に渡してくる。


アクセイ「滅神奥義、混沌の幕開け」


ライオス「壊神奥義!雷破終焉!」


 2つの魔法がぶつかり合い、あたりに地響きを起こさせる。


ライオス「アァァァァァ!」


アクセイ「フンっ............」


 そんな掛け声では、力は入るまい。俺の勝ちだ。


ライオス「セラァッ!」


アクセイ「......!?」


 ......


 ......


 ......


「だ、ダークソウル全メンバーが倒れております......」


「今だ!捕らえろ!」


 騎士団の連中が、奴らを拘束してゆく。


アクセイ「いつ......気づいた......」


ライオス「......さあな。いつ気づいてても、結果はこうなっていた」


アクセイ「......」


「え、えーっと、色々ありましたが、グランメモリーズA!ライオス選手&レラ選手の勝利です!」


 なんだか、素直に喜べない勝利だな。まあでも、これでエレノアの仇が取れたと考えれば、それでいいか。


 グランメモリーズの観覧席を見ると、自称俺の護衛隊三バカが手を振っており、ネイが少しだけ微笑んでいる気がした。


 別チームなのに、手を出して来やがって。まあいいか。


「マスター、勝ったぞ」

人物紹介

ディーネ

性別:女 所属ギルド:トゥインクルアスタロト

好きな物:ティータイム 嫌いな物:変な喋り方をする人(同族嫌悪ってやつか)

誕生日:1月6日 身長:162cm 23歳

見た目特徴:水色の髪色。ショートカット。バストサイズC。露出多めな服装(だから、文章じゃ表現しづらいって)


 トゥインクルアスタロトの中で、独特な喋り方をする少女。水と氷属性の魔法が得意である。


次回予告

第6章16 【氷のナルシスト】

 今回の回は、ライオスを活躍させたいなって思って書いた話です。でなければ、ここまで強くしません。

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