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グランストリアMaledictio  作者: ミナセ ヒカリ
第6章 【龍の涙】
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第6章8 【トワイライトソーディアン】

「さあ!第1回戦、バトルロワイヤルの開幕だァー!今回は、解説にケビンさんと、ゲストに王国議会副議長、キリアさんです!」


「午前中に引き続き、午後もよろしく頼むぞ」


「よろしくお願いします」


 モニターに映し出される実況解説の人達。


 もうすぐ戦いの鐘が鳴る。


「第1回戦はバトルロワイヤル形式。各チームから選出された自信のある魔導士達が実力を競い合います!バトルフィールドは王都の予選で使われた然属性エリア!ただ、街の至る所に罠が仕掛けられているため、予選よりも知力を巡らせる戦いとなります!」


 仕掛けられた罠の幾つかはもう見つけておいた。有効に使えそうなものもあったため、敵を誘い出す策も考えている。とは言っても、大体はネイが考案したテンプレに当てはめているだけなのだが。


「さて、まもなく戦闘開始の鐘が鳴ります!会場のみなさんも一緒に、3!」


「「「 2! 」」」


「「「 1! 」」」


「開始です!」


 鐘が鳴った。


「疾風!風神の舞!」


「かかったなアホがァ!」


 ソアラに奇襲をしかけたが、それは意味なしになる。


「殺意の視線はなるべく隠した方がいいよー?」


「なっ......」


 利用しようと思っていた罠に、私が嵌ってしまった。


 ヌルヌルとした液体が足元にまとわりつき、動きを制御しにくくなる。


「ハハハ!足元ヌルヌルだねー!」


「これしきのこと、何ともない。豪炎!」


 所詮は液体、ヴァルのように燃やして蒸発させる。


「おぉ」


「爆炎剣!」


「よっと、あんたが剣で来るなら、私もそれでいこうか」


 空に描かれた魔法陣から剣が1本飛び出してくる。


「よいしょ!」


「ふんっ!」


 見た目の割に、この剣は重たい。


「疾風!」


 足元に風の勢いをつけて押し上げる。


「空中戦か。面白いね」


 剣の形が変わり、槍の形へと変わる。


「もう分かってると思うけど、私の魔法は物の形を自由に変える魔法だよ。人からは錬金術の下位互換って言われてるんだけど、錬成陣を書かなくていいだけ上位互換だと私は思うな」


「......そうだな。戦い方を自由に変えられる魔法は強いな。だが、私の剣も舐めるなよ。形は変えられなくとも、属性だけは自信がある」


「へぇー......」


「桜吹雪!」


「うぇっ!ペッペッ......何これ」


「神木剣!」


「ふぎゃっ!」


 本気では飛ばしていない。見つけた罠の場所へと飛ばす。


「うぇっ......なんだこれ......」


 あの罠から発動したのは、蜘蛛の巣の罠。体を締め付けるようにしてまとわりついている。


「あ、アハハ。これ、解いてくれない?」


「爆炎剣!」


「ブギャァ!!!」


「おおっと!ここでトゥインクルアスタロトのソアラダウン!1人目の脱落者だぁ!」


「思った以上にやりますな」


「一応、グランメモリーズ最強の剣士と聞いていますよ。まあ、ソアラの方の活躍はたくさん聞いてるんですけどね。実力負けですね」


「ええ!ええ!これは大きな盛り上がりを見せてきたぞー!ヒャッフー!」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


ヴァル「お!フウロが勝った!」


ヴェルド「やったな!」


 モニターに映し出されたフウロとソアラの対決。勝者はフウロ。最下位スタートだけは免れたようじゃな。


ネイ「運が良かった。それと、実力もフウロの方が上じゃったな」


ヴァル「あったりめぇだろ!フウロは強いんだからさー!」


ネイ「そうじゃな。でなけりゃ大会には出とらんしな」


エレノア「フウロさん凄いですねー。はぁ、憧れますー」


ヴェルド「あんまりそこから乗り出すなよ。落ちるぞ」


ヴァル「分かってるって。よく見てみたいだけだ!」


 ......。他のモニターに目をやると、そろそろ色んなところで戦いが始まっている頃だった。フウロが戦い出すのが早すぎたわけじゃな。普通なら相手の出方を伺うものじゃが、あえて、そうして開幕直ぐに動かない奴を狙えと言っておいた。余計な体力を消費せずに勝てたフウロは有利な状態でいる。


 もう1つのグラメモ代表ミラは、マジックアルケミストのトーリヤとぶつかっている。


 他は、ハイドロオーシャンズのデラとコールドミラーのカルマ。戦況はカルマが有利といったところか。流石は最強のギルドと呼ばれるだけある。


 シェミスターライトのレクトとダークソウルのフセイ......の戦いは、フセイの圧勝。見つけられた瞬間にレクトが負けた。モニターに映るほどの魔法も見えなかった。


「おおっと!気づかないうちにダークソウルのフセイがシェミスターライトのレイガを落としたぁ!本当にいつの間にぃ!」


 恐らく、黒魔法の類か。


 あの魔法なら、モニターに映ることもなく敵を倒すことが出来る。厄介な相手が紛れ込んでおるな。フウロは勝てるじゃろうか。


ネイ「......」


ヴァル「......?どこ行くんだ?ネイ」


ネイ「いや、ちょっと気になることがあってな。ついて来るか?」


ヴァル「じゃあ、ついて行く。お前、どうせ迷子になるだろうから」


ネイ「な、なんじゃその言い分は!」


ヴェルド「しっかりお守りをしてやれよヴァル」


ヴァル「おう、任せとけ」


 なんでヴェルドがそんなことを言うのじゃろうか......。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「セヤァッ!」


「ふんっ!」


「腕を上げたな。トーリヤ。まさか、あのミラを倒すとは」


「強くなってるのはお前らだけじゃないんだよ!それに、お前の方こそソアラを倒したらしいじゃねえか。しかも、秒殺で」


「......そんなに有名なやつなのか?」


「王都より西側では有名だな。百装のソアラ。知らねえやつはいねえな」


「そうなのか」


 世界はまだまだ広いな。そんな強い奴がまだいたとは。機会があれば、正々堂々と戦ってみよう。


「豪炎!輝水の剣!」


「戦い方も随分と変わってるじゃねえか。そんな魔法の連携なんて出来たか?」


「鍛えてもらった。それにしても、お前はそんな硬かったか?」


「こっちも、体、鍛えてんだよ。ミラちゃん程度の攻撃は効かなくなったな」


 厄介な強さを持ったもんだ。火力重視の私を意識してきたな。


「硬さだけが俺の強さじゃないぜ。錬成!かぁらぁのぉ、豪雨!」


 土壁で周りを囲い、そこに集中豪雨で生き埋めか。こりゃ、ミラじゃ敵わないわけだ。


「神木!雨水の調べ!」


「ほう。天候も操れるようになったか」


「それだけじゃない。雷鳴!雷神の舞!」


「何!?」


「水は雷に弱い。私も、お前対策に習得した技だ」


「クソッ......強く、なったじゃねえか......」


「グランメモリーズを舐めるな」


 1番厄介だと思っていたトーリヤを倒した。残る敵は......


 モニターに映し出される名前は、私とカルマ、フセイ。この3人が残っている状態だ。


 フセイ......聞いたことのない名前だ。最近できたギルドと言えど、大会に出るほどなのだからそれなりの活躍を聞いててもいいはず。


 いや、そんなことを考える必要はないか。邪念は剣を鈍らせる。集中、集中!


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「なあ、気になることって何なんだ?」


「うーん......どう表現したら良いですかね......」


「なんでもいいけどよ、マジでその格好暑くないの?」


 会場に来てからずっとヨミの姿。服だってワールドアーカイブで見た事のあるあいつと同じだし。着物って、冬に着るもんだから暑そうなんだけどな。


「冷気を出しとるって言ったじゃろうが。服の中は快適な温度に保たれておる。なんなら、その手を入れて確かめてみるか?」


「やめとくよ。そこまで変態じゃねえし」


「そうか。そこまで遠慮せんでもええのに」


「遠慮してねえよ。それと、なんだその喋り方は。直せって言っただろ」


「この格好の時はこうしか話せれんのじゃ。しっくりこないんじゃよ」


 なんだその理論は......


「まあ、いつものあっちの姿になれば、口調も元に戻るから」


「気分かよ!」


 相変わらずよく分からねえやつだ。もうどうでもいいや。


「ん?なんだありゃ?」


 人気のない場所なのに、空き缶のゴミが落ちてある。


「全く、人間というのはマナーのなってない奴らの集まりじゃな」


 本当だな。俺もポイ捨てはよくないと思う。


「仕方ない。捨てといてやるか」


「そうじゃな。で、ゴミ箱はどこじゃったかのう」


 そこら辺歩いてたら見つかるだろ。その時に捨てておけば......


「なあ?なんかそれ、煙が出てないか?」


「......?......!こ、これは」


 ネイが投げ捨てると、煙があたりにどんどん拡散されていく。


「ゲホッゲホッ。なんなんだこれは!おい、ネイ!」


 まずい。ネイの姿が見当たらなくなった。


「今だ!捕まえろ!」


 何!?誰かいるのか!


「おい!お前ら何してんだ!」


「大人しくしろ!」


「グハッ!」


 誰かから後ろ頭を押さえつけられる。


 硬い地面に顎が当たって痛い。いや、今はそれどころじゃない。


「......!ネイをどこに連れて行くつもりだ!」


 煙の中から、ネイを連れ去る騎士共の姿が見えた。


「グハッ!」


 急に腹を蹴られて、体が動かなくなった。


「ネイ......」


 思い出した。この煙は、対龍人用の麻酔弾とか、そんなことをネイに説明されたことがあった。現代にはもう残ってない技術だと聞いていたのに......


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「さぁーて!いよいよ第1回戦も大詰め!残るはコールドミラーのカルマ!グランメモリーズBのフウロ!そして、未だ戦い方が分からぬダークソウルのフセイだぁー!」


「意外な組み合わせになったのう。コールドミラーのカルマは分かっていた事として、グランメモリーズのフウロに、ダークソウルのフセイか......」


「面白そうな戦いになりそうですね」


「ええ!ええ!1回戦から凄まじい盛り上がりですよー!」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


「全く、毎年変わらずうるさい解説だ」


「それもいいんじゃないか。会場の盛り上がりがこちらにまで伝わってくる」


「そうかい。グランの剣士も変わったやつだな」


「そうか。まあいいか。それで、フセイと言ったか。お前はどう思う」


「......」


「黙りか。まあいいや。お前ら潰せば俺の勝ち。これ以上ないシンプルな戦いだ」


「そうだな」


 ここには罠が仕掛けられている場所もない。本当に、正々堂々とした勝負だ。そして、これに勝てば1位スタート。仲間の士気を確実に上げることができる。


「......」

「......」

「......」


 これまで以上の緊張感......


「セヤァッ!」


「ハッ!」


「......」


 カルマはヴェルドと同じような魔法の雷属性版。雷を、龍とか剣とかの形にして襲いかかってくる。当たったら感電ものだ。一方フセイは、一瞬だけ見えた闇の斧。


 ヴェルドと同じような魔法なら、対処のしようはいくらでもある。だが、フセイの方は一瞬しか見えなかった。どう対処していくべきか。


「雷雨!」


 ライオスに教えてもらった技。全体に攻撃することによって、敵の戦い方を見極める。


「雷か」


 カルマは雷を素手で抑える。


 そして、フセイの方は、雷が勝手に避けていく。


「雷属性持ちか」


「正しくは、体に貼った氷から地面に流してるだけだけどね」


 そんな器用なことが出来るやつがいるとは。まあいい。それならそうと、戦い方を考えるだけだ。


「......」


「黙りだな。まあいいか。戦い方の分かる奴よりも、分からねえ方からぶっ飛ばすか」


 カルマはフセイから倒すことに決めたようだ。


 戦い方の分からない奴から倒すか......。確かに、不安材料は残しておきたくないしな。私も、フセイから倒すことにしようか。ついでに、カルマも倒すことが出来れば上出来だ。


「サンドラクリエイト・ツインボール」

「桜花・桜の舞!」


「......」


 合わせたわけではないが、2人の攻撃はいい感じの距離でフセイに直面する。だが、フセイは何をしたのか私達の魔法を無力化する。


「黒魔法......お前、どこでその魔法を!」


 黒魔法......?確か、全ての魔法の原種であり、全ての魔法を無力化する力を持った魔法。習得方法は様々だが、普通の人間では習得出来ない。いや、私以上の魔導士、ヴァハトであっても習得するのは難しい魔法だったはず。


 それこそ、ネイくらいの超越した存在でなければできない話だ。


「......」


 この者......一体何者だ!?


「爆炎!」


「......」


 間違いない。カルマの言う通り、これは黒魔法だ。


「なんでお前みたいなやつが、そんな強固な魔法を習得できちゃってるのかなぁ。ダークソウルってそういう意味だったの?まあいいや。雷氷・フリーズボルト」


「止せ!」


「反転」


「グァッ!」

「うぁぁぁぁぁ!」


「暗黒の魂」


 あれは......


 ......


 ......


 ......


「しょ、勝者!ダークソウル!」


 そう実況の声が聞こえた。


「え、えぇっと、2位はコールドミラーとグランメモリーズとなります......」


 2位か......悪くはない出来だ。だが、黒魔法を操る者か......


 悔しいと思うのも久しぶりだ。


「負けた......か......」


「なんて力だ......すみません。マスターシルヴ」


 いつの間にか、ダークソウルの奴の姿は消え去っていた。


 何者だったんだ......

 どのギルドから紹介して行こうかなぁって思って、登場した順でええやん、って思ったんですけど、それだとまとめるのが後々にめんどくさくなるんですよね。次回までに考えときます。

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