表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
グランストリアMaledictio  作者: ミナセ ヒカリ
第6章 【龍の涙】
141/404

第6章2 【海の心】

 翌日


「うーみだー!」


 こんなビーチに来たのに、1度も遊ばずに帰るのはもったいない。善は急げ、思い立ったが吉日、という事で、完全に目覚める前のネイに「海に行く」とだけ伝え、答えを聞く前にさっさと退散した。


 完全に目が覚めていたら、「ダメです」とか普通に言ってくる。だから、思考能力の低下してる目覚めに言うことにした。言ってしまったもん勝ちだ。


「遊んでていいのかよ......」


「だって、当たりくじ引いたのに他とほとんど変わらないって嫌じゃない。それに、修行ばっかりだと疲れて倒れるよ」


「そうか?俺はまだまだいけるけどな」


 そう言いながら、ヴァルは空に向けて炎を吐き出す。


「ま、2人とも水着に着替えてるし、遊ぶ気満々じゃん」


「お前が着替えて来いって言ったんだろ」


 そうだったっけ?ただ、海に行くとだけしか伝えてないんだけどな。


「セリカさん、着替えてきましたよ」


「お、エフィとシアラも似合ってるねー」


「ヴェルド様ぁ、どうですか?この格好。というか、ヴェルド様の筋肉はいつ見ても美しいですねー」


「おっと」


「ぶはァ!」


 これは、いつも通りだ。


 シアラがヴェルドに抱きつこうとして、ヴェルドは一歩後ろに避ける。そうすると、シアラは程々に温まった砂にダぁイブ。


「酷いです......ヴェルド様......」


「おいヴェルド。シアラが可哀想だぞ」


「「 そーだそーだ 」」


「俺が悪者かよ!」


 だって、いつまでもそうだとシアラが可哀想じゃん?


「あれ?そう言えばネイりんは?」


「「 ......さあ? 」」


「俺も知らねえな」


 あれ?いくら寝ぼけていたとは言っても、確かに伝えたはずなんだけどな?


「あ、あそこに羽らしきものが!」


「え!?」


 あ、ほんとだ。木の影に隠れているようだが、その羽と尻尾で存在がバレバレだ。


「ネイりんそんなところに隠れてないで早くこっちおいでよー!」


 聞こえているのか、咄嗟にネイが体を丸める。


「ねえヴァル。ネイりんって、一応私達には心を開いてくれたはずだよね?」


「ああ。ヴェルド除いて基本は親しくなったつもりだが」


「何か、恥ずかしがってるのかな?ちょっと連れて来る」


 ネイりんを理解するにはまだまだ時間がかかりそうだが、なぜここで木の影に隠れる必要があるのだろうか?特に何もないと思うんだけど......。あ、あれか、龍の羽がどうとかっていうコンプレックスか。


「ネイりん、何してんの?こんなところで」


「ひっ」


 何を恐れているのだろう。ヴェルドなら分かるけど、私だよ!?


「ネイりん何してるの?」


「うー......」


 あれか。肌を見られるのが嫌なタイプか。普段、胸元だけは開いてるくせにーー多分、ヴァルの目線を集めるためーー他の露出は控えめだからな。


「仕方ないなぁ。じゃあ、私のこれ貸してあげるから」


 そう言い、私が着ているリゾートワンピを渡す。


「え?水着の上から何か着てもいいんですか?」


「......」


 えぇ..................


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 いや、まさかネイりんがここまで色んな意味で常識知らずだとは思わなかった。


 別に、水着の上から何着ようが本人の勝手なのに......。


 てなわけで、ネイりんは自分で持ってた足首にまで伸びるパーカーを着て参加。そんなに露出を減らしたいのなら、いっそスク水でも着てしまえと思ったのは内緒である。


 まあ、ネイりんは海で遊ばず本を読んでいるのだけれど......荷物番とかも必要ないのに。


「ネイー、本ばっか読んでないでこっちおいでよー!」


「いいですよー。私はこれでいいのでー!」


 ダメだこりゃ。典型的な引きこもりタイプが海に来てみたけどやっぱダメだったわってタイプだ。


「しゃあねえ。俺が連れてくる」


 ヴァルがネイの元に行って、あーだこーだ話をしている。ヴァルの声はこちらにまで聞こえてくるが、ネイりんの声は一切聞こえてこない。


 やがて、何かを決心したのかヴァルはネイりんの隣で寝始める。


(失敗したんだ......)


 失敗したのはいいとして、そしたらなぜ隣で寝ることになるのだろうか。


 あ、ネイりんが寝てるヴァルの口元に顔を近づけてってストーップ!


「ネイりんストーップ!」


「......どうしたんですか?セリカさん」


「どうしたもこうしたも、あんたそのまま口付けするつもりだったでしょ!」


「......べ、別にそんなつもりじゃ」


 そんなつもりだったんだ。


「......ヴァルは、寝てる顔が少し子供っぽいなって思って......」


「それネイりんもだよ」


「わ、私が子供だって言いたいんですか!」


 はい。正しくその通りでございます。


「......みんな子供子供って、私は偉大なる魔女様ですよ」


「怠惰だけどね」


「世の中基本、怠惰が本気を出したら1番強いんですよ!」


 確かに、本気になったら強いんだろうけど、ネイりんいっつも寝てるからなぁ。


「なら、俺と勝負してみるか?」


「ヴェルドですか。いいですけど、1週間くらい動けなくなっても知りませんよ」


「やれるもんならやってみやがれ」


「私、ヴェルド様に1票」


「私はネイさんに1票です」


「私も、ネイりんに1票かな?」


「2対1で俺の負けかよ畜生!」


 え?そういう事だったの?


「まあいいや。2対1をひっくり返してやる!」


「ゴーゴーヴェルド様ぁ!」


「期待してないけど怪我しない程度にヴェルドは頑張ってね」


「おっしゃあ!喰らえアイスニードル!」


「......」


 右手1つで氷の棘を粉々に砕かれた。


「......あ、アイスランス!」


「......」


 上位技でも、やはり右手1つで粉々。もうこの時点で勝ち目がないように見える。シアラもなんか悟ってるし......。


「クッソ......アイスグラウンド!アイスバスター!」


 相手の地面を氷にして避けにくくしたあと、範囲の広い砲撃。


「......」


 まあ、これもまた簡単に避けられる。なんなら、地面を炎で溶かして無意味だとヴェルドに悟らせる。


「遠距離がダメなら、近距離でどうだ!」


 両の手を凍らせて、ネイりんに直接殴りかかる。


 まあ、知ってた話だが、数発避けたネイりんが、ヴェルドの手首を掴んで背負い投げ。ユミじゃないのに器用なことが出来るなと思った。


「シアラ、ネイ様に票を変えてよろしいでしょうか?」


「お前が俺を信じなくてどうなるんだよ!」


 シアラさえも諦めている。


「横でギャーギャーうるせえな。何やってんの?」


「ヴェルドがネイりんに喧嘩売って、それを買ったネイりんが舐めプ中」


「そうか。ヴェルドもよくやるな」


 ヴァルは初めからネイりんに票を入れるみたいだ。


「ヴェルド、女に対しても容赦がねえな」


「容赦はないですけど、一切攻撃が当たってませんね」


「だね。あれは、ネイりんの圧勝だわ」


「ヴェルド様......弱い......」


 いや、ヴェルドは強いと思う。ネイりんが強すぎるだけだ。


「オラッ!」


「......」


 あーあ、足も掴まれちゃったよ。それに、左腕まで掴まれてるし、何も出来ないな。これで終わりか。


「口からの攻撃にも気をつけろよ!アイスブレス!」


「......!」


 あ、やっと攻撃が当たった。


「......フルヴァーナ!」


「おわっ......!」


 急に力を出したネイりんによって、海の中へとドボンしたヴェルド。


「......うっ」


「どうしたネイ!」


「痛た......」


「ヴェルド様!」


 明らかな異変。

 突然自分から攻撃を仕掛けたネイりん。


「......ネイ、なんだこの焦げたような痕」


 ヴェルドが当てた魔法は氷属性。ドライアイスみたいに冷たいものだったら分からなくもないが、あれはそれ程の冷気を出していない。


「これ......滅魔法が効いてる痕だ」


「滅魔法?」


「ほら、俺が使ってる龍殺しの魔法だ。あれは龍を殺すための魔法。効く相手には絶大な威力を誇るんだよ」


「......?じゃあ、ネイりんは、その滅魔法でそうなってるってこと?」


「そういう事だ。俺の攻撃でこうなるなら分かるが、ヴェルドがなんでだ?」


 確か、ヴェルドはただの氷属性の魔導士だったはず。


「知らねえよ。俺はただの氷の魔導士だ」


「んなわけねえだろ。ネイがこうなってるんだぞ!」


「知らねえもんは知らねえよ。俺に、何か潜在能力があるって言うのか?」


「......ありますよ。ヴェルドに、潜在能力」


「......!大丈夫か!ネイ!」


「そんなに慌てなくても、これくらいはどうって事ないですよ。所詮、覚醒しきってない滅魔魔法を喰らっただけですし」


「滅魔?悪魔殺しか」


「ずっと言おうと思ってたんですけど、ヴェルドには悪魔殺しの才覚があるんですよ」


「そうなのか」


「俺はそんなもん知らねえよ」


「知らなくても、実際に力があるからそうなんですよ。実際、私に攻撃が効いてる時点でそういう事ですよ」


「ん?でも、だとしたら、なんで滅魔魔法がお前に効くんだよ。お前、龍と神だろ」


「一応、邪龍ですからね。アンデット属性くらい持ってるんですよ。治癒術効かないのはそういう事です」


 あ、なるほど。だから、エフィの治癒術じゃ回復できないんだ。って、ネイりんがアンデット!?


「だとして、なんでそんな大事なことを俺に黙り続けてたんだよ。それ知ってりゃもっと強くなれたかもしれねえのに」


「そうなったら困るからですよ」


「困る?なんで」


「だって、滅魔の力は滅龍とか滅神よりも強力ですから。最悪、私が殺されかねないから気づかれないよう黙ってたんです」


 なるほど。天敵を作らないためか。となると、ネイりんがヴェルドを嫌い続けるのもなんとなく分かった気がする。


 そりゃあ、誰だって自分を殺す存在を近くに置いておきたくないだろう。クロムのことも、ネイりんは若干嫌っていたし、ヴァルは特別だな。グリードは......関わりが薄いから問題ないのか。


「って事は、これで俺はネイの上に......」


「調子に乗らないでください」


「グハッ!」


「いくら、私を殺す手段を得ようとも、その攻撃が当たらなければ私は死にません。まさか、今のが本気だと思ってるんじゃないでしょうね」


「そうは思ってねえよ」


「言っておきますけど、私は怠惰ですから本気は出しませんよ。本気を出すのは、世界を壊す、ただその時だけです。魔王って呼んでも構いませんよ」


 うわぁ、明らかな敵意だ。そんなにヴェルドが嫌いなのか。


「ま、まあ、2人とも落ち着いて、次はビーチバレーでもしようか?」


「いや、次は俺がネイに挑む番だ。遊びでも修行は修行だ!」


「じゃあ、ヴァルは私に1発攻撃が当たったら勝ちでいいですよ」


 ヴァルに対して甘すぎないか?


「おっしゃあ!行くぜ地獄龍の鉄砕!」


「クハッ......!」


 あ、今わざと当たったな。


 全員が心の中でそう呟いた。それと同時に、ヴァルに対して甘すぎだとも思った。


「中々に情熱的な一撃でした。さあ、もっと!もっと来てください!」


「......なんか熱冷めたんだけど、どうしたらいい?」


「知らね」

「知らない」

「知りません」

「知らないです」


 結論。ネイは変態。ヴェルドは悪魔殺し。シアラも変態。ヴァルはアホ。これでいいや。

【海の心】とかいう洒落たタイトル付けてるけど、マジで何も関係ないです。思いつかなかったからそれっぽいの貼ってるだけです。次回あたり、新キャラ出るから紹介できそうかな?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ