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グランストリアMaledictio  作者: ミナセ ヒカリ
外伝 【夢幻の道】
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外伝9 【覚悟と信念】

 最上階へと続く階段を、今私達は登っている。


 メンバーは私、シンゲン、アルフレア、ベルディア、ゼータ、イグシロナ、ガンマ。そして、不安定な状態になっているネイ。


 姉さんの話によれば、私が拐われた後にネイさんは何かをして血溜まりの中で蹲っていたらしい。


 多分、予想でしかないが、暗殺者の人格がその後ネイを襲った敵を斬り殺した。それを、意識が戻ったネイが血溜まりの景色を見て何かしらの異常を起こしたんだろう。


 難しい話だが、ネイにとっては耐えられない景色だったという事だろう。


 ああ、それとアマテラスさんも付いてきてるんだった。死者として奴を倒すって。


 ......


 ......


 ......


 死者の魂がこの世界に集まるのは、リエンドがそうしているから。


 死者蘇生を餌に、死者を自由に操っている。許されることじゃない。


 もう見える未来はリエンドを倒したものの、目覚めると白と黒の戦争が始まる直前。あの日に巻き戻っていた。


 リエンドには何かしらの仕掛けがある。倒したところであの日に戻ってしまう。それでも、この創世の剣を使えば奴もきっと倒せる。そうでなければ、あの場で終焉の刃を渡したことを後悔してしまう。


 もう時間は繰り返させない。


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 ......


 ......


 ......


 ......


 ......


「来たか。デルシア」


「......」


「まさか、未来から創界神(グラン・ウォーカー)が来るとは思わんかったが、まあ、支障はない」


「リエンド!」


「この裏切り者が。折角死者と生者を入れ替えてやると言っておるのに、なぜ抗う?」


「そんなの、ただの方言だろ!お前は私達を生き返らせるつもりなどない!」


「なぜそう言いきれる?」


「......お前が、時間を繰り返しているからだ。生き返らせるつもりなら、最初の1周目で事足りてるはずだ」


「そうか。お前も、前回の記憶が見えるか......」


「お前は何が目的なんだ!」


「目的?そうだな......。まずは、我を龍の姿に出来たら続きを教えてやろう」


「全員、戦闘態勢に入ってください!敵には、物理攻撃が効きません。魔法が使える姉さんとアマテラスさんを重点的に援護してください!」


「「「 了解! 」」」


「朝焼けの輝き!」


「セーフティーフィールド展開!」


 霧に包まれたこの空間に、あたりをよく見渡せる光と、傷を自動で癒してくれる光に満ちた地が広がる。


 よく見えなかったリエンドの姿があらわになる。


 見た目は、アマテラスと同じように生者そのもの。だが、イグシロナが投げたナイフが貫通していくところを見ると、本当の幽霊なんだと分かる。


「雷雨!」


「フィアシールド!」


 なるべく、アマテラスさんと姉さんを守るために、魔法に近いような技で防御陣を張る。


 リエンドにこれが有効かどうかは分からない。だけど、私達にできるのはこれくらいだ。


 ......


 ......


 ......


 ゆっくり目を閉じて見えた景色は、リエンドの呪いによる攻撃。当たれば数分で死ぬ。


 ......


「みなさん!呪いの弾が飛んできます!全力で避けてください!」


「ほう。見えているか」


「何度も繰り返した時間で、あなたの攻撃は全て見ています!」


「なら、分が悪いのは我の方か......」


 奴に奥の手はもう存在しない。


 3万と少し過ごした時間の中で、隠し球だと撃ってきた技の対処法も全部見えている。


「お前ら、あと5分くらい待っててくれ。とびきりデカいのをぶち込んでやる......」


 アマテラスが両手で魔法陣を描いている。それも、複雑な術式が幾重にも重なったものを。


「母さんを全力で守れ!奴の呪いを弾くんだ!」


「我の攻撃は呪いだけではない。これもどうかな?」


 あれは、火と水と風の合わせ属性による攻撃。対処法は、光と闇のマナを合わせたものを同威力で当てるだけ。


「姉さん、合わせてください!」


「ええ、任せておいて!......シャインスパーク!」


「獄閻王波!」


 この剣にも、魔法を使う機能が備わっている。とびきりの闇魔法を姉さんの光魔法にぶつけて撃つ。


「対処法は完璧なようだな。ならば、これはどうだ?」


 今度は辺り一面を覆い尽くす刃の数々。


 これは、前回の周でも苦戦していた。だが、その苦戦した私達のお陰で対処法も見えている。


「イグシロナさん、ゼータさん、暗殺隊のみなさん。刃1本1本にナイフを当ててください!」


 普通の人間なら難しい技。でも、彼らはそれをいとも容易くやってくれる。


 あの刃1本1本は、当たればその鋭利な刃で全てを斬り刻んでくる。だが、ナイフ1本でも当てればあの刃は消えてゆく。


 過去の私達が、今の私達にバトンを繋いでくれた。


 過去の記憶を頼りに、前哨戦は消耗を少なく突破してみせる。


「リエンド!その化けの皮を剥がせー!」


「......ふっ。見事なり」


※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 霧が晴れる。辺りが全て見渡せる。


 見えなかった空には、夜空が広がっており、星々の輝きが見える。


「......なっ」


 その夜空に構えるは、巨大な龍。これが、リエンドの本体。


 1万と数千回、こいつに全滅させられた。


「では、話の続きをしようか?我の目的。それは、我自身が創界神(グラン・ウォーカー)になる事。そのために、何度も何度も時間を繰り返した。あいつの世界を崩すために。しかし、奴は中々折れない。流石は創界神(グラン・ウォーカー)と言ったところだな」


「そのために、私達の時間を......未来を......」


「そういう事になるな。だが、安心しろデルシア。我の目的が叶った暁には、お前の願いを全て叶えてやろう。そこにいる兄弟達と一緒に過ごさせてやろう。戦争のない平和な未来を作ってやろう」


 その言葉は嘘ではない。


 リエンドなら、本気でそうするだろう。だが、他人が敷いたレールの上を走っていて何が楽しい?いや、楽しいとかそういう問題ではない。それでいいのだろうか?


 そんな未来で。


 確かに、戦争のない未来。兄弟達と過ごす明るい明日。どれもいいものである。でも、自分の未来は自分で決める。それが私だ。


「断ります。私達の明日は、私達で創る!」


「そういう事だデカ物。お前に選択権はない」


「デルシアの道は、例え親でも邪魔させないわ」


「血の繋がったお前より、俺達の方が家族らしいってことだ。お前の言うことなんか聞けねえんだよ」


「デルシア様の道は、誰にも邪魔させません!」


「年寄りの言うことなんざ聞かねえよ!俺も、俺の道は自分で決める」


「デルシアに救ってもらった命。今ここで活かしてみせます!」


「ガキ共がワーワー、ワーワーやかましいな。折角希望に満ちた未来を作ってやると言っているのに」


「そんなもの、私達は望まない!」


 神にねだらなければ作れないほど、平和は難しいものじゃない。


 私達、1人1人が平和を願えば、世界は平和になる。私はそう信じてる。


 だって、争いあっていた白と黒の兄さん達が、今こうして同じ敵を相手に戦ってるんだから。


「ならば、もう一度時間を繰り返させてやるまでだ」


「させない......」


 リエンドの攻撃は先程までとは比べ物にならないほど激しさを増してきている。


 次の繰り返しまであと30分もない。


 早々に決着をつけなければ......


「もう攻撃は通じるよな?雷雨・閃光の刃!」


「黒炎・呪怨の剣!」


 物理技は通る。魔法も効く。だが、リエンドの鱗が固すぎて攻撃が効いてる感じがしない。


「援護は任せて!」


 リエンドの攻撃に合わせて放たれる、姉さん、ゼータ、イグシロナの攻撃が上手いことリエンドの攻撃を封じる。


「......仕方あるまい。お前らに良い物を見てやろう」


 良い物......?


「確か、ミューエと言ったな?この世界を脱した、裏切り者の娘」


 ミューエ......?


 ズタボロの状態で、両手両足を縛られた状態。カゲロウにやられたのだろう。


「返してやる。十分痛めつけてやったしな。創真の姫は」


「ミューエさん!しっかりしてください!ミューエさん!」


 心音はまだ聞こえる。死んではいない。


「姉さん!」


「任せてちょうだい」


 カンナには及ばないが、姉さんの治癒術でも回復できる。


「創真の姫は邪魔者だ。だから、その姿にしておいてやったぞ」


「リエンド......」


「安心しろ。次の周では元に戻ってる。だが、もう二度とこっちの世界には来れんようにしてやるがな」


「次の周はもうありません」


「いいや。もう一度繰り返させてやる」


 私の剣で、リエンドを倒す!


「デルシア!援護は任せろ」


「お願いします!」


 リエンドに直接攻撃を仕掛けても、大したダメージが入っている様子はない。シンゲン兄さんの援護ありでも、戦いづらい状況だ。


 周りに、あの灰色の獣がいないだけまだマシだ。ただ、その獣は全部表の世界に行っているのだろう。


「せやぁっ!」


「セイッ!」


 龍らしく、固い鱗に覆われている。金属ではないのに、ぶつかり合った時に「キンッ」と固い金属音が鳴り響く。


「私達のナイフは、全く効いてないようですね」


「そんな柔らかい金属では、我の体には傷一つ付かん」


 前の周でも、こいつ相手に物理はあまり効かなかった。やはり、魔法で攻めるしかない。だけど、魔法部隊はことごとく後ろに引く形になっている。


「ならば、創世の剣で......!」


 この、もう1人のグラン・ウォーカーにもらった剣なら、あの固い鱗も剥がせるはず。


「なんだその剣は」


「嘘......」


 まるで効いてない。


 終焉の刃に匹敵すると言われていたのに、閻王の刃と何も変わらない。


 やはり、終焉の刃でないとダメなのか。全てを終わらす剣でなければ......。


「そんな剣で我を倒せると思うな」


 リエンドの攻撃が激しすぎる。回避するだけでも精一杯だというのに、一切効かない攻撃も重ねていかないといけない。


「雷雨!」


「呪怨!」


 2人の魔法も思ったより効いてない。


「......」


「諦めるなデルシア!まだ、俺は膝をつかんぞ!」


「弱い人間程、よく虚勢を張る。これだから生者は争いしかせん」


「関係ないだろ。生きてようが死んでいようが、物を考えて動くのは生き物の務めだ!」


「ならば、その頭を粉々してやる」


「......」


 何も考えられなかった。ただ、兄さんを庇うようにして、私の体が前に出た。


 これは......死者の無念......?


 ......


 ......


 ......


 長い間隔が、私にゆっくりと死を悟らせた。


 こんなところで倒れるわけにはいかないのに。


 まだ、リエンドに致命傷ですら与えていないのに。


 申し訳ないという気持ちと共に、悔しいという気持ちも湧いてくる。


 兄さん、姉さん......。ミューエ......


 ......


 ......


 ......


「こんなところで倒れるつもりか?」


「まだ、お主の刃は輝いておるはずじゃろ?」


 なんだ、この声は......


 ......


 ......


 ......


「デルシア、起きて。デルシア、起きなさい」


「......ミューエさん?」


 ミューエが、さっきまでの無惨な姿と打って変わって綺麗な状態でそこにいた。


「いつまで寝てるつもりだったのよ」


「......」


 ここは、どこだ......?


「どこだって?何を言ってるの。ここは、創真王国でしょ。自分の国なのに、忘れちゃったの?」


 ......


 ......


 ......


 何を言ってるんだ?

人物紹介

邪龍・リエンド

性別:一応男 所属ギルド:なし

好きな物:なし 嫌いな物:なし

誕生日:不明 身長:人型の状態で185cm。龍の状態で15m 歳は不明

見た目特徴:人型の状態では、白髪の青年。龍の状態では、ポ○モンでいう、ボー○ンダの横が細くなって全長がかなり伸びた感じ。デルシアも同じ。フェノンは、リ○ードン型。天空龍のウラノスって言っとけば大体伝わる。


次回予告

外伝10 【夢と現実】

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