第1章11 章末 【獣の爪痕】
ヴァル「やっと帰ってきたぁ」
ヴァルがギルドの扉をバーッンと音が鳴るくらいに大きく開け、私達は長かった仕事からようやく解放された気分になった。
ヴァル「それにしても、帰りも馬車とか地獄かよ」
「アハハ」
帰り道も、ヴァルは行きの時に見せたように盛大な乗り物酔いを見せ、見事私とエフィを困らせていた。なので、私はヴァルのその発言に思わず苦笑いをする。
フウロ「簡単に終わる仕事だと思っていたが............まさか、ここまでかかるとはな」
フウロが開け放たれた扉を潜り、真っ直ぐにマスター『ヴァハト』がいる場所に向かった。多分、報告ね。
私達は適当にどっかその辺に腰を落ち着け、少しだけ暇潰しをする。するとーー
ミラ「お帰りなさい。みんな」
ミラさんがお盆にコーヒーカップ4つを並べ、こちらにやって来た。
ミラ「まさか、4日もかかる仕事だったなんて……。あら?その子は何かしら?」
カップにコーヒーを注いでいたミラさんが、私の隣にいたエフィに気づいた。
ヴァル「この空色っ毛の子か?」
ミラ「ええ、そうよ。むしろ、それ以外に何があるのかしら?」
ヴァル「まあそうだな。紹介すんぜ。依頼先の村で出会った獣使いの女の子、エフィだ!」
エフィ「ど、どうも初めまして……!」
ヴァルに紹介され、恐縮したように縮こまるエフィ。だけど、声はハッキリとしていて、パッと見で誰もが抱きそうな内気の女の子って感じをかき消していた。
ミラ「あら、もしかしてうちに依頼?それとも、セリカみたいに入団かしら?」
エフィ「こ、後者で!」
ミラ「そう、分かったわ」
ミラさんはコーヒーを4杯分入れ終わると、何かを取りに戻るようにカウンターの奥に消えていった。入団の手続き書を取りに行ったのね。
「あれだけ大事になった事件をたったの4日で終わらせて、しかも新しいメンバーを連れてくるとは、中々やるじゃねぇか。なぁ、ヴァル」
ふと、野太い声が響いてきて、ヴァルと肩を組むよう腕を回した金髪の男が現れた。
ーー『ライオス』だ。
ヴァル「まあな。俺ら最強の3人が揃えば敵無しだぜ」
ライオス「ほう、その3人には、俺も含まれてるんだろうな」
ヴァル「あったりめぇだろ。誰がヴェルドなんか入れるかってんだ」
ヴェルド「あぁ?最強の3人は、俺、フウロ、ライオスの間違いだろうが」
ヴァル「んだとぉ?」
ーーあ、これ始まるやつだ。
「エフィ、ちょーっとだけ離れてようか?」
エフィ「はい?あの、何か始まるんですか?」
うーん……どうせ、このギルドで生活する限り、この光景は何度か見ることになりそうだからなぁ~。いや、私が過した1ヶ月でここまで思い知らされてるのもどうかと思うけど……。
ライオス「こいつらがうるさくなるのはいつもの事だ。セリカ、それくらいお前もよく理解しただろ?」
「アハハ、まあね……」
ライオス「ようするに、慣れが大事だ。んなわけで嬢ちゃん。よろしくな」
ライオスはゴツゴツとした手をエフィに向けて差し出した。
エフィ「あ、はい。よろしくお願いします」
エフィの小さな手がガッシリとライオスの手に包まれる。体格に差異があれど、まるであの日の私とフウロみたいだ。いい場面なんだから、あの2人ももう少し落ち着いてくれたらいいのに……なぁんて、思ったところで意味ないよね。
このギルドは喧しい方が似合う。むしろ、喧しくないとつまらないんだ。だから、こうやってワイワイガヤガヤしてるところを、寸劇でも見るかのような気分で楽しむのが1番なんだ。
「あ~、ヴェルド様ぁ。今日も美しい~」
「……って、うわぁぁぁぁ!?」
ちょっとボーっとしてたら、いつの間にか隣に瑠璃色の少女『シアラ』がしれっと座り込んでいた。
シアラ「あらセリカさん。おはようございます」
「お、おはよう……って今思いっきり昼なんだけど」
シアラ「ヴェルド様と朝の挨拶を交わしていないシアラにとって、4日前から今この瞬間までずっと朝です!」
「え、えぇ……」
シアラは、簡単に言うと超面倒臭い子。悪い子じゃないんだけど、ちょっと思想がぶっ飛んでいるというか、普通の人とは違うというか……うーん?とりあえず、ヴェルドの事に関してはかなりヤバい人なのだ。こうやって語彙力を失うくらいには。
シアラ「ヴェールドっ様~!」
ヴェルド「アイスブロー!」
シアラ「ギャァッ!」
……シアラは、いい子である。だけど、結構不幸な子。現に今、ヴェルドがヴァルに向けて放ったはずの氷拳が、ヴァルが避けてそのままシアラに当たった。
ヴェルド「あ、悪ぃシアラ。いると思わなかった」
そして、この男も男である。普通、女の子の顔を殴ったのに、まるで友達と接するかのように軽い気持ちの謝辞を述べている。まあ、それはシアラのキャラが問題でもあるんだけどーー
シアラ「私はいつだってヴェルド様の傍に居ますよ。ただ、4日会えなかったのがシアラにはとても残念で寂しくてたまりませんでしたけど............」
ヴェルドの暴力には屈せず、倒れたそのままの姿勢でヴェルドの足にしがみつく。うねうねと蛇みたいに動き、それを見たヴェルドが青ざめた顔に変えるくらいだ。
ーーそう、シアラはいい子なんだけど、すごーく面倒な子なのだ。いい子なんだけどね。
ヴェルド「お前っ!まとわりつくなっ!離っ!れろ!」
必死に足をバタつかせてるが、そんなのお構い無しとシアラはしがみついたままの姿勢を崩さない。ある意味凄い腕力だ。それと、執着心もとんでもない。
まあ、これも含めて一興。私にとってのグランメモリーズでの物語は、まだ始まったばかりなのである。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「なあ、お前、そろそろ次の潜入先は決めたのか?」
「今回のである程度決めることが出来たわね」
「ということは、あそこのギルドにするのか?前回みたいにへそ曲げて帰ってくんなよ」
「分かってるわよ。ーーバカの集まりで、何でもかんでも信じる奴ら。オマケにバカみたいに仲間思い。取り入るには楽なところね」
「あいつら、結構強いけど大丈夫なのか?」
「バレなきゃ平気よ」
「そうか。それにしても、こんな潜入作業意味あんのかよ」
「何よ。私の策が信じられないって言うの?」
「いやそうじゃねぇよ。ーーただな、お前もあいつらみてぇにとは言わねえから仲間のことを信じてやったらどうだ?」
「何言ってるの?私が信じるのは自分と金だけよ」
「はいはい、そうでしたそうでした。......頑張れよ『ヒカリ』」
「言われなくても頑張るわよ。お兄ちゃん」
ー魔獣騒ぎー
それはただの始まりに過ぎなかった。
『グランメモリ』このアイテムを一体誰が作り、そして、なんのために使われるのか............この時のセリカ達には裏で糸を引いていた人物がいることを知ることは無かった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
さてさて、ここまで寝ずによく聞いてくれたものだ。まあ、必修科目とは言ったが、物語の根幹にも触れないような物語だ。聞く意味は無い。でも、これである程度この世界について知れたんじゃないだろうか?
先に言っておくが、これはただのファンタジーではない。初めにも言ったが、これは世界に愛された少女と、夢の世界を生きた少年とが、悲しみの連鎖を断ち切らせるための物語だ。
物語は始まったばかりに見えるかもしれない。けれど、もう既に物語はクライマックスへと突入している。それはなぜなのか。まあ、答えはそのうち分かってくるはずさ。根気強く僕の長話に付き合ってくれたらだけどね。
「さて、部外者がこの空間に居続けるのはあまりよろしくない。僕は一旦、席を外すよ。何、ただお茶の席を変えるだけさ」
最も、君達が僕について来れるかどうかは保証しないけどね。
言語紹介
属性:この世界には火、水、風、然、光、闇、氷、無の基本属性と呼ばれる魔法の種類があり、その他にも様々な属性がある。ちなみに、治癒魔法は然属性の部類に入る。
次回予告
第1章12 章末 【獣の爪痕】
なんか、15話もかかりませんでしたね。(ディラン戦もうちょっと苦戦させるべきだったか?)
まあ、この作品、第2章から本番ってところがあるんで、とりあえずは、次回で第1章 【獣の爪痕】は終わりとなります(まあ、次回はエピローグなので実質今回で終わりです)
そんな事よりもリゼロアニメ第2期制作決定ってマジ!?




