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託されたこの世界に奇跡あれ  作者: オリタ ソラヨシ
第1章 灼熱の戦姫編
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第2話 運命の歯車は再び回り始める



ー こちら第一小隊。任務完了。

ただ今帰投中奴らの反応はない。どうぞ。ー


ー こちらオシリス。了解した。引き続き警戒にあたりつつ帰投せよ ー


本部に報告を終え、一気に緊張がほぐれ和気藹々と盛り上がり始める第一小隊。


彼らは〝オシリス 〟と呼ばれる対AI兵器戦闘部隊であり、その実態は十分な発言力と権利力を兼ね備えた防衛軍である。


任務を終え無人中型輸送機で本部がある城塞都市の一つ〈ヤマト〉に帰還している最中だった。


今回の任務は最終試験を乗り越えた新人兵士のオベリスクを使用しての始めての初の実戦任務である。


「よし!お前達!初任務はこれで完了だ!辛かったろう…よく頑張った!よしそうだな…セドリック!感想を言ってみろ!」


大きな声で新人兵士であるセドリックに絡むのは部隊長であるバルコニーだ。いかにもどこかの学園マンガで出てきそうな熱血教師のような風格をもち、身長百九十センチあるゴリマッチョの大男である。階級は三佐と実力は折り紙つきなのだが、本人の希望により今は新人のオベリスク教育をしている。


「はい!辛かったですが、とても達成感がありました!もっと精進して頑張っていきたいと思います!なぁ!2人とも!」


初任務明けなのに疲れた様子もなく、以上テンションが高いセドリック。


セドリックはロシア人と日本人のハーフで金髪で両サイドを刈り上げている。身長は百八十五センチと充分な身長をもち、ライドスーツ越しでも分かる引き締まった肉体。シュミレーターでは最高得点を叩き出すという筋金入り脳筋野郎である。


「はぁ…よくあれだけ戦っておいてなんであんたはそんな元気なの?ほんとアホ脳筋め…。」


そう愚痴をぶつけるのは新人兵士である佐々波ハルカだ。


黒髪のボブショート、キリッとした瞳に小さくコンパクトな鼻。どこか幼さが残るが可愛らしい唇がベストマッチ!している美少女である。


しかし、この任務が始まってからというもの寝る暇もなく、結果二徹しているため目の下には大きなクマができている。そして、予想以上に辛かったのか目に光がなく可愛らしさの一欠片もない。


「まあまあ、そんな事いうんじゃねぇよ。あんなに辛いとは思ってなかったよ俺も。だからってハルカさんよぉ…少しは隠そうとしようぜ?」


そう言って笑いながら声をかけるのは新人兵士である荒村 鉄平。鉄平はハルカの小さな頃からの幼馴染でよくこうやっていつも何かしらのフォローをいれハルカを宥めている。


鉄平は短めに切られた黒髪。鼻筋が高く、全体的なバランスが良い顔立ちである。ヤンチャそうな雰囲気が漂っているが、とても熱血漢あふれる青年だ。


「鉄平さぁ…。あんた、普通にしてればちやほらされるくらいの顔立ちなのにアイツと同じで脳筋なんだから、今の私の気持ちなんてわからないでしょ?」


「何それ褒めてんの、貶してんの!?

でも、脳筋と言われるとなぁ…。何も言い返せねぇな。」


「自覚あるのかよ…。」


ハルカはまたため息を溢す。

ようやく待ちに待った任務に出れたと思ったらとんでも無く辛かった。

体のあちこちが悲鳴をあげている。


「あぁ…しんど…。」


心の声がダダ漏れ状態のハルカは襲い掛かる眠気と格闘していた。そんなテンションの低い彼女に対してセドリックは御構い無し話しかけてくる。


「ハルカ!今日の君の戦いは今まで一番良いと僕は思う!しかも、同じ小隊になれた。それでだ、今夜どうだい?帰ったら飯でも奢るよ?」


「ん?あぁ…はいはいありがと。でも私疲れてるから帰ってシャワー浴びて寝たい。以上。」


「釣れないなぁ…。仕方がない!次の休日にまた誘いに行くとしよう!」


(本人いる前でそれ言う?)


とハルカは心の中でツッコミをいれる。ハルカの呆れ顔を見た鉄平は彼女の心情を察したのか、苦笑いを

している。


見ての通り、セドリックはハルカに好意を寄せている。勿論、ハルカも気づいてはいるが恋をしている暇があるなら休みたいし、そもそも恋なんてどうでもいいと思っている。そんなありふれた会話を楽しんでいる3人を懐かしそうにバルコニーは見ていた。


バルコニーは新人の頃、この初任務の際に同期だった仲の良い友を2人とも失っている。だからこそ彼は二度とそんな事が起きないよう実力をつけると教育者としての道を歩む事を決めていたのだ。


「バルコニー隊長?どうかしましたか?」


「いや、何でもない。あ、そういえばセドリック。もう少しオベリスクの使い方を改めろ?いつもボロボロになって帰ってくるって技術部がカンカンに怒ってたぞ。」


「えっ!そうなんですか!すみません…気をつけます!」


そしてまた笑いが起こる。


その時だった。

いきなり緊急警報が機内で鳴り響き始める。


第一小隊に再び緊張が走る。原因を調べようと、バルコニーが無人操縦システムのある操縦席へと移動を開始した次の瞬間。


〝ズバァァァアン!〟


大きな音を立て無人輸送機の片翼にあるエンジンが爆発した。


完全に制御を失った無人輸送機は地上に向かって降下を開始する。


3人は必死に自分の座席にしがみついた。


確認に向かったバルコニーは何度か激しく機内の壁に打ち付けられ頭から出血していた。


意識が朦朧とする中、バルコニーはハッチを開きオベリスクを装着すると、3人の座席へと駆け寄り座席の保護ベルトを無理やり引き剥がし3人を抱き抱えると、ハッチに向かって走り出す。


「うおぉぉぉお!!!」


そして、勢いよく3人を投げ飛ばしたのだった。オベリスクによって強化された全力の人間投球は下方目を狙って投げ飛ばされており空中で回転し続けている機体に当たることはなかった。まさに彼が3人を救いたいと思いが呼んだ奇跡だった。


ハッチから空中に投げ出された3人は必死になってバルコニーの名前を叫ぶ。オベリスクのフルフェイスマスクを解除すると彼はいつも通りの笑顔で


「お前達!生きろよ!!!」


彼はそう叫び満足そうな顔で目を閉じる。

その直後、無人輸送機は爆発した。


その爆風に巻き込まれ、強い衝撃を受けたハルカは意識は失い、セドリック、鉄平は気を失った彼女を助けようと手を伸ばそうとするも爆風により反対方向に飛ばされてしまうのだった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


〝ズバァァァアン!!!〟


突如鳴り響く爆発音。その音に驚いた鳥達は次々と飛びだっていく。


「…… 」


その爆発をまじまじと見つめていた人物がいた。ボロ布をローブの様に羽織り、保存用の野うさぎの干し肉を頬張っている。噛みきれない筋を吐き捨てると干し肉の入った袋を大事そうにしまう。


「さてと…行きますか。」


その人物は重い腰をあげると、鉄片に刺さっている刀剣ともとれる鋼鉄製のブレードを抜くと慣れた手つきで腰の鞘に納める。そして、その爆発音のする方へ走り出すのだった。


その後わかった話なのだが、危険地帯に調査に来ていたオシリスの関係者はにわかには信じがたい出来事と遭遇していたらしい。


無数の破壊されたAI兵器が山積みとなっている場所が確認され、どのAIも一つ一つ丁寧に弱点であるコアが破壊された状態だったという。そして、そこにはオベリスクのスラスターから出る微量な粒子が付着していた。その粒子を解析したところ、それはオシリスの新人兵士がもつ筈の訓練機が出すものと一致した。


破壊され山積みとなっていたAI。そして、訓練機と思わしき謎のオベリスクの存在。


オシリス内ではこの案件を最重要事項に認定し、その正体を突き止めようと動き始めていたという事を。

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