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託されたこの世界に奇跡あれ  作者: オリタ ソラヨシ
第1章 灼熱の戦姫編
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第10話 張り裂けそうな思い


「まじで…ふんませんですた…。」


顔の至る所が殴られて腫れており、まともに話すのも辛いらしい。


あの後いきなり入ってきた女性が取っ組み合っている2人を引き剥がし、青年だけを押し倒すとマウントを取り全力の拳を叩き込み始めたのだ。


「お前なぁ…普通寝てる奴のおっぱい揉むか!ああ?師匠のおっぱいは食いつかない癖に、こんなちっぱいに興味深々とはどう了見だ!?」


(あ、怒るとこそこなんだ…。)


どうにか彼女を抑える事に成功したものの、ハルカは師弟関係にあるという2人の長々と続く説教を見る羽目となっていた。


(これいつまで続くの…流石に見る方も疲れてきたよ。)


ふとそんな事を思ってしまったハルカ。


「いいかお前もだ!私は被害者ですみたいな顔をするな!いつまでそのちっぱいを見せつける気だ!うちの可愛い弟子がちっぱい好きのロリコンになったらどうしてくれる!?こっちへ来い!」


それを見透かしたのか怒りの矛先をハルカに向ける。


(ふぇ…私まで怒られんの…?)


ハルカは怖さのあまり怖気づいたがここで行かねば死ぬと思い、近くにあった少し汚れた白いワイシャツを羽織り、青年の隣で正座し地獄の説教の餌食となった。


「ふぅ…よしよし。そんじゃアギト。そいつをを案内してやれ。その間に私は親爺さんのとこへ行く。はぁ、憂鬱だな…。」


かれこれ一時間程経過したところで、師匠と呼ばれていた女性はそう言い、げっそりとした顔で破れたドアから出て行った。


(でも、私あの人に助けられたんだよね…?めっちゃ怖かったなぁ…。)


「何か悪いなうちの師匠が…。いつもはあんなにカリカリしないんだけど、今回親爺さんに怒られるのが相当嫌なのかとばっちりが凄くてさ。」


ハルカの心情を察したのか、アギトは師匠のフォローをいれる。


「別にそれは…って!いや、あんたが事の発端でしょうが!」


ハルカはどさくさに紛れて罪を逃れようとするアギトの腫れた頰をつねる。


「いだいいだい!!状況見ろ馬鹿!マジでいてぇよ!」


「何か言いましたか?ちっぱい好きのロリコン野郎さん!」


「野郎はついてねぇよ!まあ…その悪かったです…。許してください…。」


無言の威圧を放つ涙目なハルカをみて、流石のアギトも謝罪せざるを得なかった。


「それでよろしい…。まあ今回だけはこの件は不問にしてあげる。」


「本当か!ちっぱい好きロリコン野郎も無しだかんな!って待てよ…?まさか、貸しっていう落ちじゃ…!」


「何だわかってんじゃん。当たり前でしょ?でも安心して。今使うから。貴方に一つ聞きたい事があるんだけど。」


「え?んまあ、答えられる範囲なら幾らでもいいけど…俺なんかでいいのか?」


無言で頷くハルカ。すると彼女は急に思い詰めたような表情を浮かべる。


「どうしたお前…?」


アギトは突如様子が変わったハルカに恐る恐る尋ねる。


するとハルカは自分自身を抱きしめ、細々とした声で語りだした。


「ねぇ…なんで私なんかを助けたの?仲間を見殺しにして自分だけ助かって…これじゃ人殺しと変わらない…。私を助けて何かメリットでもあったわけ?」


ハルカは目線を逸らしながらそう呟いた。


「はぁ…なんだその事か。それはだな…。」


それを聞いたアギトはここに来るまでの経緯を説明しようとした瞬間、ハルカは物凄い勢いでアギトの胸ぐらを掴んできた。


「ねぇ…その事?私にとっては凄く重要な事なの!ねぇ?こんな思いするならいっそ、そのまま助けに入らず見殺しにしてくれれば良かったのに!!」


ハルカはありったけの思いを吐き出すとアギトを突き飛ばし、毛布に包まり塞ぎ込んでしまった。


「いきなりそんな言い方しなくてもいいだろ普通…。」


〝なんでこんな俺なんか助けた!これじゃアイツらに顔向けできねぇよ…。いっそあの怪物に殺された方がマシだったよ!!〟


フラッシュバックした記憶がアギトの脳裏を駆け巡る。


(そうか…。あの時の俺と同じ…。)


アギトは毛布を引き剥がすと、塞ぎ込んでいるハルカの頭を両手でがっしりと掴み、無理矢理顔を上げさせる。


ハルカの瞳には大粒の涙が溜まっていて今にも泣き出しそうだった。


「いいか!落ち着いて俺の話をよく聞け!焦る気持ちは分かるが、こっちが話す前から勝手に先走るんじゃねぇ!」


「はなぁふぃて…!」


「いいか!お前が気絶してる間に、あの2人を俺と師匠で応急処置を施した。重症だった金髪はどうにか息を吹き返したし、片方は軽い脳震盪を起こしてただけだ。」


「へ…?」


ハルカはきょとんとした表情をする。どうやらまだこの話を理解していないらしい。


「つまりだ!お前が死んだ死んだって言ってる2人は生きてるよ。きちんとお仲間が迎えに来出たみたいだしな。だからまあ、師匠がお前に言った通りどうにかなったんだよ。」


「本当…?嘘じゃないよね?」


疑心暗鬼なハルカにアギトはそっと抱きしめる。


「今こんな嘘ついてどうすんだよ。本当に2人は生きてる。だから今お前は安心してゆっくりすりゃいい。なんだかんだいって、お前の傷も相当酷いんだぞ?」


それを聞いたハルカはアギトの肩に顔を埋める。


「あぐっ…いぎてる…。2人ともいぎてたよ…よかったぁ…!」


ようやく肩の荷が下りたのか、抑えきれない涙を流すハルカ。


アギトは泣き続けるハルカの背中をさすりながら、ただ時が過ぎるのを待つのだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「どうだ、落ち着いたか?」


あれから少し時間が経ち、外を見ると夕日が沈もうとしている頃だった。


「うん…。一人で先走って勝手に思い詰めて八つ当たりして…ごめん。」


ハルカは深々とアギトに頭を下げる。


「そんな事すんなって。取り敢えず、お前の心の中の嫌な物は無くなったんだろ?それなら美味いもんでも食ってぱーと行こうぜ。えーと…名前は…?」


「ハルカ。佐々波ハルカ。あんたはアギトって呼ばれてるけどそれが名前でいいの?」


「ああ。じゃ行くかハルカ。」


アギトはベッドに座るハルカに手を差し伸べると少し照れくさそうに彼女はその手をとる。そのまま家を出ようとすると、急にハルカは立ち止まりアギトを腕を引っ張る。


「うぉ!?どうしたいきなり。」


振り向くと彼女は俯いていた。


「ねぇ、アギト…。」


すると、ボソっとアギトの名前を呼ぶ。


「ん?何だハルカ。」


不思議そうにハルカの呼びかけに応じると突然彼女は顔を上げる。


「大切な仲間とこんな私を救ってくれて…本当にありがとう…!」


目元が少し腫れぼったかったが、彼女の見せる笑顔はとても綺麗だった。







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