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託されたこの世界に奇跡あれ  作者: オリタ ソラヨシ
第1章 灼熱の戦姫編
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第9話 運命の舞台の幕開け


「少数部隊からの連絡は?」


「未だ連絡がありません。恐らく捜索に難航しているかと…。」


「そうか…。ありがとう。」


静香はオペレーターの報告を聞くと、自身の椅子へ戻り腰を掛ける。


(捜索を開始して約一時間…。少数部隊からの通信もあれ以降来ていない。やはり、危険地域の調査不足が仇となっているな…。)


危険地域とは、未だ調査が行われている詳細が完全に掴めていない地域の事で、現在凡そ八箇所ある。


最近調査班は謎のオベリスクを追う事で頭がいっぱいになっており、危険地域の調査が少し滞っている状態だった。


今回の捜索難航は調査班への指示と危険予知不足が原因であり、行方が分からなくなっている第1小隊には立てる顔がない。


(どうしたものか…。このままだと最悪助かった者がいたとして助け出す前に取り返しのつかない事になる。総司令ならこの状況をどう覆すか…。)


静香は1人で唸っていると突如オペレーターが声を上げる。


「兵藤副司令!少数部隊から連絡が入りました!」


「それは本当か!」


「はい!メインモニターに繋げます!」


静香は急いで中央デッキにかけて行き、手摺を力強く握りしめる。メインモニターに通信ファイルが映し出され、数秒間の雑音の後、声が聞き取れるようになる。


ーズーズズ…こちらアルファ!行方不明者2名確保!繰り返す!こちらアルファ!行方不明者2名確保!ー


「こちらオシリス!副司令の兵藤だ!確保した2名は誰だ!それと2名の状態を教えてくれ!」


ー確認の結果、荒村二等兵と西宮二等兵です!どちらとも負傷している模様。しかし、何者かによって適切な処置が施されており、一命を取り留めている状態です!ー


「何…?その場に誰かいたと言うのか!?その周辺の捜索状況はどうなっている!」


ーそれが…データに無いオベリスクのスラスター粒子の痕跡と、無人輸送機を破壊したと思われるAIの破損部品がありました!データ送信します!ー


すると、通信ファイルの隣にもう一つファイルが映し出され、解析データと写真が表示される。


ーこれを見る限り、恐らくそのAIを退け手当を施したのはその謎の使い手だと思われます…。どうされますか副司令…?ー


「深追いはするなと言っただろ。一先ず、発見した2名を連れ撤退を命じる。行方不明となっている残りの2名の捜索とそのAIに関しては別の部隊を向かわせる。行方不明だった2名の発見、心より感謝する!」


ー了解!撤退の準備を開始。手配をお願いします。over!ー


少数部隊が通信を切ると、作戦司令室内の空気が少し軽くなったように感じた。すかさず、静香は声を荒げる。


「いいか!まだ、2人だ!緊張を容易く解くんじゃない!これからが正念場だ。この先、何が起こるか分からない。だからこそ、捜索に行く部隊の皆と今ここにいる君達が頼りだ。それを意識する事を忘れず、作戦行動まで待機してくれ。」


「「「了解!!!」」」


静香はオペレーター達に指示をすると自身の机に戻ろうと歩き出した時、胸元の小型端末が振動する。


静香はそのまま机へとは戻らず、作戦司令室を出て小型端末をとる。


「兵藤だ…。こちらに連絡したと言うことは何かあったな杏果…?」


連絡してきたのは第1小隊の捜索に出ている杏果からだった。


ー悪いな静香…。どうやら少しおかしなことになっててな。ー


静香は難しい顔で廊下の窓の外を眺める。


杏果は不可解な点や気になる事がある時、毎回こういう形で静香に報告をしていた。


この連絡が来たという事は彼女からの要求は一つしかない。


「お前まさか…自分をそこに残せだなんて言わないよな?さっき少数部隊に撤退命令を出したばっかりだぞ?聞いている筈だが…。」


ーそれは聞いた。でも、これを見たら少しはその気持ちが変わると思う。ー


静香はすぐ近くにあるシステム管理室に入ると、言われるがまま小型端末をタップする。すると小型レンズからホログラムが投映される。


「おい…これはどう言うことなんだ!?何故そんな所にこれが!」


それを見た静香は動揺を隠せないでいた。


ーだーかーら!あたしも分からないって言ってんだろ?なあ、静香…あれ以来、オベリスクを纏っていないお前がここに来て置いてくか?持ち出されたって可能性は…?ー


「まずそれはあり得ない。何せ、私達のオベリスクは専用機。今も私の調整が施されているから纏うことしか出来ないぞ?」


ーなら、どう言うわけかこれを使う奴がいるって事だ。しかも、捜索中に発見した戦闘の痕跡からは謎のオベリスクの反応があって、あたしの検出装置からは破損部品と同じ成分がこれから出てきた…てことは?ー


「何が言いたい…?」


ーもしかしたら…いや、これはあくまでも可能性の話なんだが…。ー


そこで切り出された杏果の仮説は余りにも現実見を帯びていなかった。


静香はその答えを完全否定した。しかし、実際それに対する有力な情報は掴めていないのには変わりない。だからこそ静香は黙る事しか出来なかった。


ーよし決まりだな…。こんな時のためにフル装備で行って正解だったわ。じゃあ、後は任せたよ静香!ついでに…アイツも絶対連れて帰るから!ー


そういうと杏果から通信は切れる。


「はぁ…また厄介事が迷い込んできたものだ…。総司令になんて言い訳しようか…。」


訪れる沈黙の中、静香は多種多彩なケーブルが張り巡らせる天井を見上げてそう呟くのだった。


こうして、運命という舞台の幕が今まさに上がろうとしていていた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


噴き出すように溢れる血飛沫と手に残る生暖かい感触。


抱きしめながらとても穏やかな顔で微笑みかける少年は、どんどん亀裂が入っていき目の前で崩れ去る。


〝待って…!セドリック!〟


あの巨大なシルエットは気を失っている無防備な彼に近づくと、己の爪を容赦なく振り下ろす。彼は押し潰され、贓物を撒き散らし血溜まりが広がっていく。


〝やめて…やめてよ…!これ以上私の仲間を殺さないで…!〟


巨大なシルエットは振り向き、嘲笑うかのように牙を剥く。そして、彼もろとも目の前から霧のように消えるのだった。


ただ無限に広がる闇の中に取り残された少女。


〝私のせいだ…私のせいで2人が…。待って…2人とも…!〟


彼女は何も無い闇の中で手を伸ばす。


「私を1人にしないで!!!」


「うわぁぁ!びっくりしたぁ…。」


ハルカは目覚めるとそこは知らない天井だった。横を見ると知らない青年が驚いていた。


包帯越しのハルカの胸を揉みながら。


「ねぇ…一つ質問していい?」


「あ〜はい。」


彼女は真顔でその青年に質問を求めた。


「貴方が私の事をここまで連れてきてくれたのって、あのオベリスク使いの人?」


「いやぁ…それ師匠だな。」


「そうなんだ…。ふーん。で、その手は?」


青年の顔が強張る。冷や汗を流し、目お泳がせ始めながら言い訳をこぼす。


「包帯越しっていうのもありかなと…。」


その瞬間、ハルカはその青年に摑みかかる。青年は抵抗しようにも体制が悪く、なかなか力を込める事が出来ない。


この後、胸を揉みしだいていた青年は言っていたと言う。


〝あいつを怒らせたらやばい…。恐らく師匠と同じだ…傷が開くのを厭わず、対象を徹底的に殴らないと気が済まないぶっ飛んだタイプ。〟


だと。すると部屋のドアが勢いよく蹴り破られ、1人の女性が目を光らせてこちらを向く。取っ組み合っていた青年は顔を青ざめていく。


「や、やべぇ…。ははっ!おいお前!生きて帰れると思わない事だな…。」


「はぁ?それはどう言う…。」


青年につられ、ハルカもその女性を見る。ハルカは何も知らなかったとはいえ、死の恐怖を覚えたと言う。


「おい…お前ら…そんなに取っ組み合いがしたいなら私も混ぜろよ…。」


2人は目を合わせ、再び彼女の方を見る。


「「こ、来なくて結構ですぅう!!!!」」


これを気にハルカとその青年に、友情が芽生えたとかそうでなかったとか。


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