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隣死

作者: 戸崎祐


いつだって身近にあるもの。


普通なら気にすることもない。そも、気にして生きる人などこの日本でどれくらいいるだろうか・・・。


『死』


死。そう死だ。


簡単に私は死にたいのだ。

この文じゃ語弊があった。

簡単に言えば、私は死にたいのだ。

頭にあるのは常に死。運転しているときも何をしているときも。

それは方時も離れることなく頭によぎる。


それは忘れることもなく、ふとした瞬間に近づき私に囁く。


「ここで、事故すれば楽になれるよ?」


私はきっとバカなのだろう。それに対して酷く同意してしまう。

事故死。それは自殺と違い、何かしら他の要因が招いた死である。

明確な意図がない限り、それは運転ミスであり、そう自殺とは思われない。


自殺とは愚かだという人もいるだろう。

せっかくこの世に受けた生を無駄にするのかと。


全くだ。


でもね、だから・・・。この先、幸福が。幸運が。

予測不能な未来だからこそ希望を持つのだと。


そして、今そんなことを予測だとか想像だとか、そんなことを考える余裕がない人間にとってはさもどうでもいいことなのだ。


自殺。それは人に許された唯一許された確定死だ。


誰かに左右されることなく、誰にでも与えられた選択肢。

それを愚かだと思わない。


何を思い詰めているのか。

どうして、その考えに至ったか。


どうしてなのだろうね・・・。


私は普通の人間としての生を謳歌したかった。

そう望んで育ったはずだったんだ。


でもね、目に見える社会の現実に私は適応できなかった。

ドンクサイ。ノロマ。カメ

いかに悪口で固められた、会社環境にいても他人を。他人の心まで犯す権利はないのだ。

だけど、そんな言葉など届くのならば・・・。


「嗚呼・・・。私は」


私は何なのだろうね。




それはいつもと変わらぬ帰社する道中のこと。

信号は赤で、車を止めていたとき私にそっと間が囁く。


「ここで事故してもいいんだよ?」


そうだ、私は会社に行かされる権利も働かされる権利もないのだ。


一瞬。


アクセルを踏んで電柱へと勢いよくぶつかっていった。


記憶はそこで途絶えた。




私は、私と実感して目を開けたとき、真っ白いベッドで横たわっていた。

生を実感したその刹那。

涙が頬を伝うのを覚えている。


私は死にたくなかったのか?




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