表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5






 マーとルゥが南に来ると、そこは大きな病院でした。おなかの大きい男の人や女の人、どっちかわからない人たちがどんどん入っていきます。


 オンギャアーー、オンギャアーー!


 大きな泣き声!

 まるで恐竜(きょうりゅう)のようです。病院からは、「産まれたぞ!」という声も聞こえます。病院の前にもだれかいます。どうやら、雪で寒い中、お産をいまかいまかと待っているようです。



「こんにちは! 赤ちゃんを待っているんですか!」


 マーが声をかけると、待っていた二人?が、ばっ、とふりむきました。「?(はてな)」がつくのは、ちょっと変わったすがたをしていたからです。


「こんちは、ヒトの子ども。ああそうだぜ、(おれ)とつがいの子を待っているんだ。すげぇ大変らしくて、ずいぶん待ってる」

「ご機嫌(きげん)よう、ヒトの子ども。ええそう、わたくしとアレの子を待っているの。どうにも大変らしくて、ずっと待ってる」


 男の人?、けむくじゃらじゃら、羽根まではえています。

 女の人?、ながながなーがく、こしからヘビになっています。

 見かけはずいぶんちがいますが、お話はできそうです。マーは二人(お話ができるなら「?」はいらないでしょう)に聞いてみました。

 

「早く赤ちゃんが産まれるといいですね! ところでお二人とも、実は秋の女王様をさがしているんですけど、見ませんでした?」


 男の人は羽根をバサバサしました。 


「秋の女王様? そういやここんとこ見てねぇな。そっちはどうだい?」

「わたくし? そうね、とんとお見かけしていない」


 女の人は体をズズズッ、とくねらせました。


 マーとルゥ、顔を見合わせ(ルゥは「ワフゥ……」)、どうしよう!

 秋の女王様、まったく手がかりがありません。このままだれも見ていなかったら、どこをさがせばいいのでしょう!


 そこへ、「鳥のかたー、ヘビのかたー、産まれたぞ!」と声がかけられました。入り口には、赤ちゃんをだいた男の人と女の人、そして白衣を着たどっちかわからないお医者さんがいます。


 待っていた二人、お医者さんにあいさつし――「俺とつがいの子だ! あんがとな!」「わたくしとアレの子! 感謝(かんしゃ)を!」――大喜びで、鳥の人は男の人へ、ヘビの人は女の人へとかけよりました。


「ふあぁ~あ、ひどい難産(なんざん)だったが、ちゃんと産まれて良かったわー……おや、ヒトの子どもじゃないか、どうしたの? そこのワンコロと赤ちゃん作りにきた? 本人、いや本犬(ほんけん)のオッケーがいるから、ちゃんと通訳(つうやく)さんを……え、そうじゃない?」


 大あくびしたお医者さん、とてもねむそうでしたが、マーは「秋の女王様を見ませんでしたか?」と聞いてみました。ルゥも「ワン!」とおうえんします。


「……そういやけっこう見てないぞ。最後に会ったのは……そうだ、そこの鳥さんと人、ヘビさんと人との赤ちゃんのもと(・・)を、どうにかこうにか作った時だわ。そういや言ってたなぁ、『人はどんなものとも命をなせるようになったのね。もう私はいらないようだから、さよならするわ』……え、うそ、さよならってそういうこと!?」


 ルゥが「ワゥン!」とほえました。マーもそれだっ、と思って言いました。


「きっと、秋の女王様がいなくなったのはそれが理由です。すがたがぜんぜんちがっても、どんな人が相手でも、みんな好きに赤ちゃんを作れるようになったから、お仕事がなくなっちゃったと思ったんだ!」


 お医者さんはあごに手をあてました。


「それはそうかもしれないね。でもこれ、ちょっといったい、どうしろって話だか……病院はこの先ずっと予約(よやく)でいっぱいだよ、子どもを作りたいやつはたくさんいるし……でも秋が来ないのも(こま)る」


 そのままお医者さん、ぶつぶつぶっつん、ぼやきます。


 羽根をバサバサ、体をズルズル、赤ちゃんをだいた二人がやってきて言いました。


「……どうすりゃ秋の女王様が(もど)ってくんのか、ここらで相談してみっから」

「ヒトの子よ、ほかの女王様はもう(さが)したのか? では、冬の女王様に伝えておくれ。『話が決まれば、王より申しあげる』と」


 そうして、マーには羽根を、ルゥにはウロコを、お守りにくれました。羽根はえり(・・)に、ウロコは首に、つけて歩けばひらひらキラキラ。寒い中、いたくなった足の先も、すこーしなおった気がします。


 マーとルゥ、「はい!」(ルゥは「ワン!」)と元気に返事し、そうして冬の女王様のもとへと向かいました。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ