バット納め 後編
下級生の試合している間、3年生はウォームアップを行っていた。
大夢はキャッチャーの木下とトスバッティングをしていた。
大夢はミートセンスには長けているが中々バントができない。
2番に起用するのはどうかという疑問があった。
「森、いや悠平と変わった方が良くない、打順」
「もうスタメン表提出しちゃったからどうにもなんないよ(笑)」
「そうか、いいよもうガンガン打っていこうぜ、バントのサインは出さないことにする(笑)」
「今1年勝ってるみたいだな。ストレート狙いでぼっこぼこにしてやるか。」
3年同士でそんな会話をしていた。
余談だが、この夏から秋にかけて森の父親が交通事故で亡くなったため、
母方の姓である中嶋を名乗ることになった。
まだ苗字で呼ばれるのには抵抗があるため呼び名は下の名前で統一している。
決勝戦、3年対1年。
ノーアウトランナー一塁。
大夢の第一打席。
1年生チームに負けた2年生が審判とアナウンス、グダグダな実況を送っている。
大夢はバスターの構えからバントの初球、ボール球をわざとファールにした。
もちろんはなっからバントする気はない。
単なるカモフラージュだ。
内野は前進守備を敷く。
グダグダな実況に度々笑いを起こす場面もあった。
ツーツーからの5球目、大夢は思いっきり叩きつけた。
三遊間の高いバウンドだ。策はハマった。
セーフティバントと同じ効果だ。
チャンスを広げてその後も満塁のチャンスを作り、初回先制し、2得点を挙げる。
1回裏、大夢のピッチング。
ストレートの走りが非常に良い。
それに加えて複数の緩い変化球でタイミングを外す。
奪った三振こそないが全て内野ゴロに打ち取る上々の立ち上がりだ。
2回表、2打席目。
あっけなく三振に。遼太郎が本気を出してきた。
大夢も負けなかった。
2回、3回と無失点に抑える。
ここまでノーエラー。味方の守備も安定している。
4回、大夢に代打が送られる。
代打中山。遼太郎のストレートを真芯で捉えた。
柵がないのでランニングホームランとなった。
4回裏から玉置が投げる。中山は一塁へ。
玉置も2回無失点に抑えた。
6回からは右翼の後閑がマウンドに。玉置は一塁、中山が右翼へ。
ボールが荒れてしまい、4点を失う。
3年生が6対4の2点リード。
7回裏、三塁にいたエースの山村が抑えに。
途中からレフトを守っている島崎がサードへ。
ワンナウト満塁のピンチを作り、暴投するも三振と外野フライで6ー5で3年生が勝利した。
大夢は降板後も淡々とピッチングを繰り返していた。
同期の楽しんでいるところを遠くから見つめていた。
「こういうところで満足するような自分ではない。ここで最高なんて言ってたらこの先の楽しみが無くなってしまうからね」
心の中でそう思っていた。
「俺に最高の定義なんてない。だから絶対最高だなんて口にしない。」
飽くなき探求心が今後大夢をビッグな人物にさせるなんて誰が予想していただろうか。
まだまだこれからである。




