悲劇!フットサル事件
「トマトの緑の硬い部分取らないのは、非常識でしょ」
家庭科の調理実習の授業で大夢の班は注意された。
辛らつな評価ではあるが、反論はできなかった。
授業が終わり、先生がいなくなると大夢の班同士で愚痴をこぼし合っていた。
「めっちゃムカつくよなぁ、俺学校休んだから変更あるって聞いてなかったぜ」
「俺も同感だよ。しかも授業で説明してないのにそれだからな。」
「聞けばいいでしょみたいなこと言って自分の役目丸投げしやがって、ただじゃおかねぇからなあの糞教師」
放課後になり、しかも部活動は偶然にもどの部もグラウンドは使わなかった。
ミーティングのためである。
そこで大夢達は憂さ晴らしでサッカーをすることにした。
大夢はそこまで器用にボールを操ることはできないが、
持ち前の走力と気力で他のプレーヤーを圧倒させた。
「ちゃんと教えればJ1も夢じゃないのにもったいないよ」
大夢は元サッカー部にこう言われた。
大夢は足が速い、というイメージが強いが元々そういうタイプでもなかった。
長距離が得意で、その得意分野を活かそうと短距離系のトレーニングを積んだ結果がそれなのである。
それがあるから数々の強肩をかいくぐって先の塁を盗んできた。
言うまでもないが努力だけではない。
兄貴のような先輩や家族などの支えがあってこその大夢である。
そして仲間でもありライバルでもある存在が大夢を大きくしていった。
自分の実力うんぬんよりも、純粋に体を動かせることへ感謝しながら楽しんでいた。
他のメンバーが休憩をしている中、大夢は熱中していた。
元気な証拠だ。気がつけば下校時間30分前になっていた。
やっと足でボールをコントロールする感覚もつかめてきた頃だった。
別のゴールでも女子生徒がサッカーをしていた。
きっとミーティングだけで部活はなかったのだろう、もの足りなかったのかもしれない。
坂上妹もいた。物凄い勢いでドリブルをし、物凄い威力のシュートをする。
他の女の子はビビってよけてしまう。
だてに親の仕事柄丸太を運ぶのを手伝ってきたわけではない。
女子の間では化け物と恐れられていた。
サッカー部員も驚いた。
「誰あの子?すげー。あんなのうちの中学に居たっけ?」
「全部において優秀だな。大夢よ、どう思う?」
大夢は唖然とした。
そもそも自分の妹のくせに彼女がサッカーが上手いということは全然知らなかったのである。
みんなも大夢の妹とは知る由もない。
別の日。
坂上妹は男子生徒と混じって、そして大夢も混ざってサッカーをしていた。
ハプニングが起こった。
「お兄ちゃんパス!」
大夢はサイド側に寄っていたので自分に来ないと思っていた。
予想外の出来事に判断が鈍った。
妹の蹴ったボールが大夢の腹をえぐった。
大夢は軽く意識を失った。
数人に担がれて保健室に運ばれた。
しばらくして、先生曰く、
「脈はありますね。普通なら死んでいますよ」
「お兄ちゃん腹筋強いですから」
謝りもせずにそんなこと言う妹はキチガイだ。
大夢は細身ではあるが体は思いのほか頑丈であった。




