ここ、笑ってもいいところですよ
夏休み最終日。午後10時。
外はセミやカエルの鳴き声が聞こえる。
大夢は机に向かうこと2時間経つが、まだ宿題が終わらず焦っていた。
「あー終わんねーなぁ!」
遂に煮詰まった。
「こんな時、慎平さんがいたら助かるのになぁ」
慎平は今、余裕を持って大夢を助ける状況にない。
慎平の通う高校は進学校ゆえ毎日勉強漬けだ。
なのでその上に野球部を続けるとなれば大夢に構う時間もそんなにないというわけだ。
しかし約束はした。
「地区大会でも県大会でも練習試合でもいいから、対戦するのを楽しみにしているよ。俺が3年になる時は大夢は2年だな。控えでも良いから背番号もらえるように這い上がってこいよな」
慎平は練習試合での好投と普段の学校生活が評価されたのか、秋大会で背番号11をもらった。
榛名中では2番手だっただけに、期待が大きいことは確かだ。
しかし軽い肘の違和感を覚えていた。そのことを大夢には黙っていた。
「登板機会がなくて背番号もらった意味があるのか。このまま関東大会に進んでも、どうせベンチ外だ。冬場はもっと走りこんで来年リベンジしてやる」
心の中で悔しさをにじませた。
「ったくドラ〇もんじゃねーんだから夢見てねーでさっさと終わらせちまいな」
妹が大夢の部屋の中に来ていた。
「なんでお前が来てんだよ」
大夢はびっくりして思わず声をあげた。
「なんでも何もあたしゃ宿題終わらせたよー まだ終わってないのかい」
「早いなお前!俺まだ終わりそうにない、ってかどっから声出してんだよ」
そうだ、妹のかすり声だ。夏休みは部活漬けで声を出しまくってガラガラになっていた。
「近所のおばちゃんみたいで悪かったなー」
「別にそこまで言ってないんだけど(汗」
しばらく無言の状態が続いた。
あゆみから切り出した。
「い、いつもの可愛らしい声を聞きたいとでも・・・??」
「うん」
「お兄ちゃんのへんたーい」
すごい音が響いた。あゆみの平手打ちが大夢のほっぺにジャストミートした。
「いってぇー ばたんきゅー」
「きゃーいっけなーい!お詫びに部活の先輩兼お兄ちゃんの同級生から盗んだ答えあーげる!」
そう言うとあゆみは夏休み宿題の答えプリント一式を置いていって自分の部屋に逃げ込んだ。
「あ・・・あいつ・・・これ届けにくるのに手を出す必要あるかー、もう・・・」
大夢は倒れてばかりもいられなく、大急ぎで宿題を完成させていった。
辛うじて大夢のヒットポイント2残したのは妹の優しさがあったのだろうか、真相は定かではない。
「あっ、さっき『盗んだ』って言ってなかった?色々やべーな、ははっ」




