あなたのために
初めまして。初投稿です。
誤字脱字申し訳ありません。
薄っぺらい物語しか書けません薄っぺらいものを書いていきます。
お題:あなたのためならなんでもなんて思ったの
彼はノンケだった。
こっちの道に引きずり込んだのは俺だった。
だから――――女の子と手を繋いで並んで歩いているのを見ても悲しくはなかった。
やっぱり彼はこっち側の人ではなかったんだと思った。
黙って彼の前から消えようと決めた。
一人暮らしをしている部屋から荷物をまとめて大きなボストンバッグに詰める。
彼が合鍵を持っている以上は引っ越すしかない。
そういえば、俺の部屋の合鍵は彼に渡してあるけど俺は彼の部屋の合鍵を持っていないなと今更ながらに思った。
つまり、元より彼は俺を好きになったことなんてなかったんだ。
行く宛はないが、新しい家が決まるまでは友人の家を転々とさせてもらおうと1年ほどお世話になったアパートの部屋を出た。
外は大粒の雨が降っていた。
――――――それから3日
大学には普段通り行きつつ、帰る家は友人の家となっていた。
ケータイは番号を新しいものに変えてアドレスも変えた。彼と俺を繋ぐものはなくなった。
大学も違うため、このまま一生会うこともなくこの世を去るものだと思っていた。
それなのに、彼は俺のところへ会いに来た。
今日の講義室は、いつもより女の人がうるさいなと入る前に気付いていた。
友人と肩を並べて歩きつつ、入口に近いところに席をとった。
すると突然、後ろから肩を掴まれた。
驚いてとっさに後ろを振り返ったら、いつもは爽やかな彼が怒った顔をして俺の方を掴んでいた。
「おい、ちょっと来いよ。」
彼はそう言って、俺の腕を強く握りながら講義室から去ろうとする。
どういう状態なのか全く理解できない俺は、ただ引っぱられる方へ身を委ねることしかできなかった。
少し歩いた所に非常口があり、その前で彼は止まった。
壁の方へ投げるように俺の腕を放り、俺の顔の横に勢いよく手をついてバンッという衝撃音が鳴る。
反射的に俺の身体がビクッと震えた。彼の目の奥は燃えるような熱を持っていた。
「…お前さ、何でいきなり俺の前から消えてるの?」
その声はいつもより低く、廊下に響いた。
俺が質問に答える前に彼は話し始める。
「新しい男でもできた?家にも帰ってないよな?新しい男のところにでも住んでるの?」
卑屈そうにそう言って、俺の目をただじっと見つめて来た。
何だか責められてる気分になるが、俺が責められる筋合いはない。そもそも、俺は彼のためを思って引いたのだ。
「俺は、お前が…ッ!」
言い終わる前に口を、彼の口で塞がれる。
舌が俺の口内に侵入してきて、息が苦しくなっていく。心も痛い。何で、俺にキスするんだ。折角、関係を断ち切ったのに…。
「ッ何すんだよ!」
思わず大きな声を出すと、彼は満足したようにニヤっとした顔をした。
「お前は誰にもやらない。」
心臓が忙しく動く。顔に熱が集まる。
彼に弄ばれてるのがわかっても、やはり好きだと実感する。
でも、ここで俺が折れたら何も変わらない。
「お前は、俺のことなんて好きじゃないのに…何でそんなこと言うんだよ…。」
下を向くと1粒の涙がこぼれた。でも、言いたいことは言えた。
このまま走り去ろうとして、彼の腕の中から抜け出そうと試みるがそれは不可能だった。
彼がひどく傷ついた様に信じられないという顔をしていたから、動揺して俺は動けなかった。
「何で…お前がそんな顔するんだよ!」
彼が女の人と手を繋いで並んで歩いて所を見た時、本当はとても悲しかった。深く傷ついた。
我慢していたものがポロポロと頬を伝って落ちていく。
彼は俺の手を握りしめる。
「俺がお前を好きじゃないって何…?お前、そんなこと思ってたの?」
彼の表情が、本気でそう言っているのだと物語っていた。
彼は俺の手を弱く握った状態で俺の言葉を待っていた。
「だって、お前は元々ノンケだし、合鍵もくれないし、この間女の人と手繋いで歩いてた…!」
思っていたことを言ってしまった。言うつもりはなかったのに、つい口から出てしまった。
彼が俺の手を掴んでいる力を強くしたため、少し痛い。
彼は女の人と手を繋いで歩いていたことを否定しない。やはり、あれはデートか何かだったのだろうか。
そうに決まってるよな。わざわざ確かめるようなことしたくなかったから、黙って消えようと思ってたのに結局は確かめることになってしまった。
そうやって自滅して、傷ついてしまうのだ。手も心も痛い。今すぐにこの場から去りたい。
ふわっと風を浴びて、彼が俺を抱きしめる。
びっくりすると同時に、愛しく嬉しいという気持ちがあり幸福感に包まれた。
「俺、お前のことが好きだよ。」
彼はそう言って、俺の髪の毛を撫でておでこにキスを落とし、俺が顔を赤くしているのを見て満足げに微笑んだ。
「俺は元々ノンケだけど、今はお前しかいらない。合鍵は、一緒に住むようになってからで良いと思ってただけ。女と手繋いでたっていうのは、その子のヒールが折れてたから手貸しただけ。
これでも、まだ信じてもらえない?」
俺は、首を横に何度も振る。
そうすると、彼は幸せなそうな顔をして唇にキスをした。
「俺のところに帰っておいで。」
首を大きく縦に振って、彼の身体に強く抱きついた。
あなたのためになら、なんでもできると思っていたけれど
どうやらあなたを諦めることだけはできなかったみたい。
読んでくださった皆様ありがとうございました!
最後は疲れ果てて終わり方が雑な気がしますがご容赦ください。
徐々に書き方がうまくなれればと思います。