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second life  作者:
94/112

前向きに

会場に着くと、すでに大勢の同級生が集まっていた。

「愛花、莉奈、こっちこっち」

麻理恵やみな実が手招きしている。

「お待たせ、みんな早いね」

「愛花たちが遅いんだよ」

「たち、じゃないよ。愛花が遅かったの」

莉奈は否定した。

確かに遅かったのは愛花のせいなので反論せず、素直に謝った。

あまりに大人数なので、乾杯などはなく何となく同窓会はスタートした。

成人式であったばかりなのに、私服に着替えるとみんな雰囲気が変わるので新鮮味がある。

卒業以来会っていなかった懐かしい友達と会話をして楽しいひとときを過ごしていたが、

ひとり、なぜかやたら話しかけてくる男子がいた。

2年のときに同じクラスだった小林祥吾。

特に仲が良かった記憶はない。

明らかに愛花を狙っているのが見え見えだった。

みんなと話したいのに、正直邪魔だ。

「佐久間は彼氏いないの?」

「うん。でさぁ、あのとき莉奈が」

答えはするが、広げることはせず、すぐに莉奈たちの会話に加わる。

興味ない感を出しているのに、祥吾は諦めようとしない。

「どれくらい彼氏いないの?」

「どれくらいだろ?でね、みな実と部活行ったときに」

すぐに女子の会話に戻ってもしつこく話しかけてくる。

「覚えてないことはないだろ」

さすがにウンザリ、ハッキリ言おう。

「悪いけど、みんなと話したいの」

「そ、そっか…」

祥吾はやっと諦めて別のところへ移動していった。

「愛花に気があったんだから仲良くしておけばいいのに」

麻理恵がからかうように言ってくる。

「そんなの知らないよ、だって今日はみんなと話したいんだもん」

好意を持ってくれるのは嬉しいけど、ああいう風にあからさまな行動は好きじゃない。

愛花は自然に仲良くなって、初めて好きになる。

しかし、愛花を狙ってくる男は祥吾だけではなかった。

何人も男子が話しかけてきて、今は武藤という男子が話しかけている。

同じクラスになったこともなければ、中学の頃に会話をした記憶すらない。

「はぁ…」

ため息をついてしまった。

「佐久間はモテモテだな」

突然後ろからそう言われたので振り返ると、佳祐が立っていた。

思わず「佳祐!」と言いそうになったが、さすがにそれはまずい。

「先生、来てたの?」

「ああ、みんな久しぶりだな」

よく見ると、他にも何人か教師が来ていた。

佳祐には何度か会っているが、愛花も佳祐もそんな素振りは見せず、

卒業以来のような雰囲気を出しておいた。

しばらく佳祐がいてくれたおかげで、

愛花に話しかけてくる男子もいなくなったので、ホッとした。

おそらく佳祐はそれが目的でいてくれたのだろう。

今度お礼を言おうと思った。

楽しかった同窓会も終わりの時間になり、

お店の外へ出たら祥吾が懲りずに話しかけてきた。

「よかったら連絡先交換してくれない?」

「え…?」

どうしようか迷った。

いくら同級生とはいえ、特に親しくない人に連絡先を教えるのは抵抗がある。

「俺、本当はさ、中学の頃もっと佐久間と話したかったんだ。

でもあんなことがあって、何となく男の俺が話しかけるのはまずいかなって思って…」

あんなこととは、伸也のことだ。

確かにあの件があってから、男子は愛花に話しかけづらい雰囲気になっていた。

おかげで愛花は仲良くなった男子はまったくと言っていいほどいなかった。

唯一といえば、同じ部活だった豪くらいだろう。

祥吾の素直な気持ちを聞いてしまうと、断りづらくなる。

「いいよ、交換しても」

「マジで?よかった!!」

祥吾が喜ぶ姿があまりにも無邪気に見えたので、クスッと笑ってしまった。

祥吾は笑顔で「連絡するから!」と言って他の男友達のところへ行った。

「新しい恋の予感?」

それを見ていた莉奈が、いつも通り冷かしてきた。

「さあどうでしょう?」

「あ、否定しないってことはまんざらでもない感じ?」

「深く考えていないだけだよ。とりあえず、やり取りくらいはしてもいいかなって」

祥吾は思ったよりも純粋そうだ。

愛花はフリーなので少しだけ前向きに考えることにした。


その日の夜、早速祥吾からメールが届いた。

(連絡先を教えてくれてありがとう!

佐久間とこうやってやり取りが出来るなんて信じられないよ)

愛花はこれを見て、クスッと笑ってしまった。

なんて返そうかな…

(大げさだよ、これくらいのことで)

(だって言っただろ、中学の頃から気になってたんだって)

そう言ってくれるのは嬉しいが、それから5,6年も経っている。

しかも祥吾とは中学の頃仲良くなかったし、卒業後も一度も会っていない。

これは一途ということなのだろうか?

それとも当時の幻想を引きずっているだけだろうか?

とりあえず、深く考えずに友達感覚でやり取りをしていこうと思った。

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