4度目の失敗…
蒼佑との交際が8か月経った8月、
バイトに行くと蒼佑が辞めたことを千恵に聞かされた。
「え、それ本当…?」
「うん、店長が言ってた。愛花聞いてないの?」
バイトのみんなが付き合っていることを知っている。
なので千恵は愛花が知らないことに疑問を感じていた。
しかし、それ以上に疑問を感じているのは愛花本人だ。
バイトが終わってから急いで蒼佑に電話をした。
「蒼佑、なんでバイト辞めたの?」
「ん?ああ…そろそろ真面目に就活しようと思ったから」
「就活してるじゃん、それに辞めるなら事前に言ってくれてもいいのに」
「言って何か変わるか?言っても言わなくても辞めることに変わりないんだからさ」
蒼佑はいつになくドライだった。
どことなく嫌な予感がする。
その予感は的中した。
9月26日、愛花の記念すべき20歳の誕生日だった。
しかし一緒にいるのは蒼佑ではなく、千夏だ。
イタリアンのお店で千夏が祝ってくれたのだ。
「それにしても彼氏ひどいよね、愛花の誕生日の日に予定があるって」
「まあ仕方ないよ…大事な用って言っていたし。
わたし的には千夏が祝ってくれただけでも嬉しい!
じゃないと一人寂しく過ごすことになってたもん」
「ならもっと感謝してもらわないと、なんてね」
そういって千夏は笑っていたが、本当に感謝の気持ちでいっぱいだった。
誕生日の2日前、蒼佑から突然明後日は大事な用ができたので
誕生日を一緒に過ごせないと言われた。
すごくショックだったが、大事な用をなにか問い詰めることはしなかった。
問い詰めたところで蒼佑は間違いなく大事な用を優先するのがわかっているからだ。
このことを千夏に話したら、バイトを休んで祝ってあげると言ってくれたのだ。
初めてワインを頼み、大人になったことを実感して千夏と別れた。
そして電車に乗ろうと駅に向かうと、ばったり蒼佑に出会ってしまった。
しかも隣には愛花よりも年上の女性がいる。
「蒼佑…どういうこと…」
蒼佑は気まずそうな顔をしている。
浮気以外考えられなかった。
そのとき隣の女性が「誰?この子」と蒼佑に聞いた。
「友達だよ、じゃあ」
蒼佑は愛花を友達といって、女性と歩いていった。
浮気じゃなかった。
本命があの人で、わたしは単なる遊びだった…
だからわたしの誕生日なんてどうでもよかったんだ…
ドライだったのも本命じゃなかったからなんだ…
また…男の人で失敗しちゃったよ…
悲しいとか悔しいというより、放心状態になった。
ただ、このまま帰る気になどなれない。
かといって、千夏と別れたばかりで呼び戻すわけにもいかない。
仁菜、麻理恵、みな実、いろんな友達を思い浮かべたが、
もう11時を過ぎているので呼び出したら迷惑だ。
そのとき居酒屋が視界に入った。
今日で20歳になった、つまり堂々とお酒を飲んでいい歳だ。
愛花は一人で居酒屋に入った。
11時を過ぎているのに店内はそこそこお客さんがいた。
愛花は1人だったのでカウンターに通され、そこで一人でお酒を飲んだ。
とはいえ、ワインやビール、カクテルなどを1、2杯くらいしか飲んだことがなかったので
ペース配分などがまったくわからない。
とにかくやけになって、早いペースで何杯も何杯も飲みまくった。