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second life  作者:
88/112

日常の中で

8月中旬、愛花はバイトの仲間たちと河原へバーベキューに来ていた。

メンバーは、仲のいい同い年の千恵、2歳上の美月、3歳上の菜々美の女子4人と

同い年の航、1歳上の博之、3歳上の蒼佑と貴志の男子4人だ。

みんな仲が良く、年齢は違っていても友達のような感覚だった。

男子チームがセッティングをしている間、女子チームは食材の準備をする。

愛花が不慣れな手つきで野菜を切っていたら、

一番年上の菜々美が呆れながら言ってきた。

「見ていて危なっかしいよ、愛花って料理しないんだ?」

「うっ…しないです」

「料理は出来るようにならないとダメだよ」

「はーい…」

愛花に代わって菜々美が野菜を切ることになった。

美智子が料理を作るときの同じように手際よく野菜を切っている。

隣では美月も千恵も当たり前のように準備をしている。

何もできないのは愛花だけ、

いかに自分がダメダメなのか思い知らされてショックだった。

女子チームの準備が終わると、男子チームもバーベキューセットの組み立てが

終わっていて、日陰用のテントも組まれていた。

「よし、焼こう!」

貴志が先陣を切って肉や野菜を鉄板の上に置いて焼きだした。

それに続くように博之と航も焼きだした。

蒼佑は焼かずに美月と楽しそうにしゃべっている。

このとき、愛花は蒼佑ばかりが気になっていた。

「愛花どうしたの?もう焼けてるよ」

いつの間にかみんな食べ始めていた。

話しかけてきた千恵もおいしそうに肉を食べている。

「あ、わたしも食べる!」

慌てて焼けた肉や野菜を紙皿に乗せて口に入れた。

「熱い!」

冷まさずに食べたので熱いに決まっている。

それを見てみんなが笑っていたが、愛花は恥ずかしいだけだった。

みんなでバーベキューを楽しみながらも、ずっと蒼佑のことが気になっていた。

その蒼佑は美月だけでなく、他の女子や男子とも満遍なく会話をしている。

さっき美月と話していたのは偶然だったらしい。

食べ終わり、みんなが遊んでいる中、愛花は一人でごみをまとめていた。

すると、蒼佑が横に来て一緒に手伝いだした。

「大丈夫ですよ、わたしがやりますから」

「いいよ、手伝う」

「ありがとうございます…」

2人は会話することなく、黙々とごみをまとめた。

「しかし偉いよね、みんなが遊んでるのにごみを片付けるなんて」

「いえ、わたし何も準備できなかったから、せめて片付けくらいはと思って」

「そっか」

そういって、蒼佑が突然頭を撫でてきた。

愛花はこのとき、なぜ蒼佑が気になっていたか悟った。

あ、わたし…この人が好きなんだ。

隼人と別れて1年、愛花はやっと新しい恋を見つけることができた。

それが実るかどうかはわからないが、一歩前に進めたことに間違いはない。

とりあえず愛花は、このあと何事もなかったようにみんなと遊んで1日を終えた。


もうすぐ夏休みが終わる頃、愛花は仁菜と遊んでいたら

予想だにしない話を聞かされた。

「隼人くん妊娠させちゃったんだって」

「マジ…?」

元カレとはいえ、一年前までは付き合っていた相手なだけに衝撃だった。

「それで?」

「あの子は絶対に産むって言い張って学校辞めたんだってさ」

「ってことは結婚するってこと?」

「みたい…でも両方の親が大激怒して勘当同然で追い出されたらしいよ。

バカだよね」

「うん…本当にバカ…」

せっかく進学校に入ったのに、沙織と遊び呆けて浪人した隼人。

せっかく進学校に入ったのに、妊娠して中退した沙織。

まだ10代なのに選択肢をなくした2人。

そんな隼人に対して、悲しいとか情けないという言葉は出てこない。

出てくる言葉はバカ、この一言だけだった。

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