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second life  作者:
73/112

女の斗い

すいません、投稿する順番を間違えました…

本来、こっちが72部で今回の73部が前の話でした(>_<)

一応入れ替えても繋がったので修正はしませんが、申し訳ありませんでした。

3学期が始まり、陸は部活に出るために仁菜と体育館へ向かっていた。

そのとき、野球部が練習しているのが視界に入ったので

足を止めて少し眺めていた。

「お、隼人くん頑張ってるね」

「毎日遅くまでやってるからね」

そんな会話をしていたら、遠くから野球部を眺めている女の子が見えた。

「あの子は…」

それは工藤沙織だった。

なぜあの子が野球部を見ているの?

どことなく嫌な予感がした。

まさか…ね。

しかし気になると止まらなくなるのが人間だ。

部活の休憩中、陸は同じ1年生の理紗に聞いてみた。

「理紗ちゃん、工藤さんって知ってる?」

「工藤沙織ですか?」

「そう、こないだのミスコンで2位になった」

「あいつ大っ嫌いです!すごく性格悪いんですよ」

ああ、やっぱりと思った。

理紗がしかめっ面をしているので、本当に嫌いなんだというのが伝わってくる。

「絶対に愛花先輩のほうが2位でしたよ」

「あ、それはどうでもいいんだけど…彼氏とかいるのかな?」

「知らないです、興味ないもん」

うーん、理沙に聞いても手がかりにはならなそうだ。

他の1年生に聞いてみてもいいが、理沙ほど聞きやすくはない。

ひとまず諦めるしかなさそうだ。

ところが次の日、嫌な予感は的中してしまった。


昼休み、お弁当を食べ終えて隼人のところへ遊びに行ったら、教室に隼人はいなかった。

陸を見た隼人の友達が話しかけてくる。

「佐久間、田辺なら女の子に呼び出されて出て行ったぜ」

「女の子って誰?」

「ほら、あのミスコンで2位になった1年の工藤なんとかってやつ」

なんで?なんであの子が隼人を??

「どこに行ったの!?」

陸があまりにも勢いよく聞いてくるので男子は驚いてのけ反った。

「体育館の裏とか言ってたけど…」

それだけ聞くと陸は走って体育館の裏に向かった。



「話って何?」

隼人は突然やってきた女の子に呼ばれ、とりあえず話だけ聞こうと思った。

ミスコンで2位になっていたから顔と名前は知っている。

工藤沙織、美人でモテそうだ。

ミスコンで2位になったのもうなずける。

ただそれだけの感情しかない。

隼人にとっては沙織よりも愛花のほうが全然魅力的だ。

「本当は優勝してって思ってたんですけど…2位でも言うことに決めました。

田辺先輩、わたしと付き合ってください」


陸が体育館の裏に着くと2人が見えた。

本当に工藤沙織だった。

この状況、間違いないと思った。

隠れて見ていたら、沙織の口から予想通りの言葉が聞こえてきた。


「は?」

いきなりの告白に隼人はポカーンとしていた。

「先輩が一生懸命野球やってる姿に惚れちゃったんです…お願いします」

「そう言われても…俺、彼女いるから」

「佐久間愛花さんですよね、知ってます。

でもあの人よりわたしのほうが全然いいですよ、

だってミスコンはわたしのほうが上だったし、スタイルだって顔だって…

あの人は単なる童顔で胸が大きいだけじゃないですか!」

隼人はムッとした。

この女は何なんだ?なんでこんな女に愛花を悪く言われなければいけないんだ?

「悪いけど無理だ」

「なんで?絶対に私のほうが先輩にお似合いですよ!!」

「いきなり人の彼女の文句を言う子なんて付き合うはずないだろ」

「文句じゃなくて事実です、あんな人のどこがいいんですか!」


陸は安心していた。

断るとは思っていたが、それにしても沙織のあの態度…何様何だろう?

どれだけ自意識過剰か知らないけど、あんなこと言われれば誰でも断る。

そんなことに気づかないなんてバカ以外考えられなかった。

けど、これでミスコンのときに沙織が突っかかってきた理由がわかった。

好きな隼人の彼女である自分が憎かったのだ。

しかしそれも無駄な行為にしかならなかったので、

ざまーみろと思わずにはいられなかった。


「君は愛花の何を知ってるの?」

「どうせ先輩の前で可愛こぶって甘えているだけでしょ、わたしはぁ…とか言って」

「あのさ、憶測だけで言わない方がいいぞ。

愛花はそんな子じゃない、君みたいに人の悪口を言わないし、すごく優しいし、

誰とでも仲良くできるし、気配りもできてて、俺のことを本当に考えてくれる子なんだよ」

「わ、わたしだって優しいですよ、誰とでも仲良くするし気配りだってできます、

それに先輩のことならあの人よりも一番に考えています!」

なんなんだこの女は?相手にすらしたくない。

本性知ったら絶対にミスコンで2位になんてなれないぞ。

面倒くさくなってきてため息が出てしまった。

「なあ、もう行っていいか?」

「ダメです!先輩の返事をもらうまでは」

「だからノーだって」

「そんな返事は待っていません」

「じゃあ何だ、俺がイエスというまでダメなのか?」

「もちろん」

「アホくせぇ…」

思わず本音が出てしまった。


「あの子…アホなんじゃないの?」

聞いていて陸は思わずつぶやいてしまった。

それくらいどうしようもないのだ。

わがままにも限度がある。

今までどうやって生きてきたのだろう?

なんでも自分の思い通りになると思っているのだろうか?

あまりにも隼人がかわいそうなので、出て行って助けようと思ったが、

出て行くことで余計面倒になる気もしたので、もう少し見守ってみることにした。


「人が真剣なのにアホだなんて…ひどい!」

「ああ…アホは悪かった。けどな、俺には愛花がいるんだよ、

愛花以外は考えられないんだよ。だから答えはノーしかない」

「なんで…あんな人のどこがいいんですか?」

「だからさ、それさっき答えたじゃん」

「なら先輩はわたしの何を知っているんですか?

付き合いもしないであの人のほうがいいとか言わないでください!」

そうきたか…

とことん面倒くさい女だぞ、こいつ…

なんか変な勧誘に引っかかった気分だ…

「なあ、世の中全て思い通りになると思わないほうがいいぞ。

それとしつこい女は嫌われるよ」

「しつこい?それだけ本気っていうことです!」

あーもう!マジでめんどくせー!!


もう限界!出ていって文句言う!!

陸は2人に近づいて声をかけた。

「ねえ、いい加減諦めてくれない?迷惑だよ」

「愛花…いたのか?」

「うん、会話聞いてた」

沙織がすごい目で睨んできた。

「盗み聞きなんて最低な女がすることですよ。

ほら先輩、この女は最低な女なんですよ」

あの人、あんな人からとうとう「この女」呼ばわりされてしまった。

なんで年下にこんな呼ばれ方をしないといけないの?

陸の怒りもヒートアップしてくる。

「あのね、自分がどれだけ間抜けなことしてるかわからないの?

これじゃストーカーだよ、ストーカー!」

「盗み聞ぎするほうがストーカーじゃない!こんな女に先輩は渡さない」

「渡さないも何も付き合ってるのはわたしだから。それをアンタが邪魔してるんでしょ」

「黙れ、この泥棒猫!」

「泥棒って盗んでないし、この自己中女!!」


なんだこれは…なにが起きてるんだ?

なんで愛花がこの子と言い合っているんだ?

とりあえず止めないと!

「お、おい、落ち着けよ」

「隼人は黙ってて!」

「先輩は黙っててください!」

同時に言われ、隼人は黙ってしまった。


なんなのこの女、本当にムカつく。

こんな女初めて、絶対に隼人は渡さない!!

「隼人に近づかないで、それだけで虫唾が走る」

「軽々しく隼人なんで呼ばないで!呼んでいいのはわたしだけなんだから」

「は?わたしは彼女なんだよ、隼人って呼ぶに決まってるじゃん。

むしろアンタのほうが呼ぶ権利ないでしょ」

「これから彼女になるの!アンタは元彼女だよ」

「バカじゃない、そんなはずないし。とにかく諦めてよ!これ以上隼人を困らせないで」

「困らせてるのはそっちでしょ、身を引いてよ」

「なんのために?」

「隼人先輩のために決まってるでしょ!」

「いい加減にしろ!!!!」


我慢の限界で怒鳴ってしまった。

「原因はこの子だけど、ムキになって言い合う愛花も愛花だ」

「ごめん…だってあまりにもしつこいから、つい…」

「先輩を困らせたのはやっぱりアンタじゃない」

なぜこの子は勝ち誇っているんだ?

「いや、一番俺を困らせたのは君だから」

「違います、この女が身を引かないからいけないんです」

これ以上相手にしても無駄だ、隼人はやっと悟った。

「愛花、行こう」

隼人は愛花の手を取って歩き出した。

「待ってください!まだ話は終わってません」

隼人は足を止めて振り向いた。

「もう終わったよ、俺は君とは付き合わない」

それだけ言って再び歩き出した。

後ろから沙織が叫んでいたが、無視をして校舎に戻っていった。


「余計なことしてゴメン…我慢できなくて」

「愛花でもああいうことがあるんだな」

「みたい…あんなことしたの初めて…」

陸が自分を佐久間愛花という女と認識したために出た、女のヒステリーだった。

「まあ違う一面が見れたからいいや、でも頻繁には勘弁してくれよ」

「うん…気をつける…」

「それにしても…あの女はなんなんだ?」

「わかんない、あんなタイプは初めてだよ…」

「俺も…今後付きまとわれなければいいけど」

「もしそうなっても…絶対に隼人は渡さない!」

陸は繋いでいる隼人の手を強く握りしめた。

「大丈夫だよ、俺はずっと愛花と一緒にいるから」

隼人も陸の手を強く握り返した。

嬉しくて不安が消し飛んだが、まだまだ沙織は引き下がらなそうな気がしていた。

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