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second life  作者:
72/112

18年

そのまま2学期が終わり、冬休みに突入した。

隼人との2度目のクリスマスは陸の部屋で祝うことになった。

去年とは違い、アットホームなクリスマスだったけど、

陸にとっては楽しい思い出のひとつになった。


今日は大みそか、まもなく日付が変わる時間帯に陸は莉奈と初詣に出かけた。

「寒いね、息が真っ白」

「もう11時半だもんね」

「莉奈は彼氏と行かなくてよかったの?」

「それをいうなら愛花だって」

「たまには、ね」

別にケンカしたわけではない、相変わらず仲もいい、

ただ、たまには莉奈と行きたいと単純に思っただけだ。

隼人も快く言っておいでと言ってくれたので安心して初詣に向かっていた。

その途中、みな実とも合流し、3人で神社へ向かった。

「なんかこの3人で会うのって久しぶりだよね」

「ね、なんか中学に戻った気分」

そんな話をしていたら0時を過ぎ、神社へ着く前に2023年を迎えた。

「明けましておめでとう」

「おめでとう」

「今年もよろしくね」

3人で新年のあいさつをし、10分ほど過ぎてから神社に到着した。

大きな神社なので予想以上に人が多い、すでに長蛇の列ができていて、

陸たちは最後列に並んだ。

それでも後ろには次々と人が並んでくる。

「こんなに混むんだね、予想以上だ」

30分ほど並び、やっと参拝するときがきた。

小銭を投げて手を二回拝借してから目をつぶった。

今年は陸にとって大事な年になる。

それは18歳、つまり陸として生きてきた人生よりも

愛花として生きてきた人生のほうが長くなる年だ。

もう自分を陸とは思っていない、愛花としての考えしか持っていない。

それでもやはり特別な思いがある。

いろいろ考えていたら横からみな実が話しかけてきた。

「愛花?」

「あ、ごめん…長かったよね」

「いいんだけど、田辺くんのことお願いしてたんでしょ」

このときばかりは違っていた。

しかし「まあね」と返事をして神社を後にした。

みな実と別れ、莉奈と2人になったとき、莉奈は初詣のことを聞いてきた。

「あれ、本当は田辺くんのことじゃないことを考えてたでしょ」

「やっぱり莉奈はわかってたんだ…」

「友達で知ってるのはわたしだけだからね」

「もうわたしは陸じゃない、それはわかってる。

自分は愛花としか思ってないんだけど…それでもけじめは必要だと思ってる。

18年、陸として生きた人生に今年並んで、そこから先は陸よりも長い愛花の人生になる…

だから今年の7月27日、事故現場に行くって決めてるの」

これは10歳のころ、佐久間愛花として生活をスタートさせたときから決めていたことだ。

事故以来一度も訪れていない場所、そこへ18年ぶりに行くことになる。

「一人で行くの?辛かったら一緒に行くよ」

「ありがとう、でも一緒に行く人も決まってるんだ」

「それって…」

「うん、お姉ちゃん」

「そっか…希美さんも当事者なんだもんね」

「そう、だからこれだけはお姉ちゃんと行くって決めてたことなの」

「じゃあその日、わたしは愛花が帰ってくるのを待っている。

陸が知らない愛花だけしか知らない人生を一緒に進みたいから」

「莉奈…ありがとう!」

家の前で莉奈と別れ、部屋に戻った。

スマホを見ると、隼人や仁菜たちから「明けましておめでとう」のメールが届いている。

全員にちゃんと返事をしてから眠りについた。


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