納得できない!
隼人のクラスでは、佐々杏里という女の子がミスコン代表に選ばれていた。
そこそこ整った顔で背も高いモデルタイプだ。
しかし隼人はミスコン自体にたいして興味がなかったので他人事だった。
それから数日して、同じクラスの友達の水野が話しかけてきた。
「なあ、2組の代表ってお前の彼女だってな」
「何が?」
「ミスコンだよ、佐久間愛花って言ってたぞ」
「なんだって!?」
初耳だった。
愛花はそういうのに出るタイプじゃないと思っていたので驚いていた。
「なんだよ、知らなかったのか?」
水野の質問に答えず、隼人は教室を飛び出して愛花の元へ向かった。
陸が教室で仁菜たちと話していたら隼人が飛んできた。
「愛花!ミスコンに出るって本当かよ?」
「出るよ」
「なんで?そういうの好きじゃないだろ?」
「好きじゃないよ…でもみんなが推薦してくれたから」
「そんなの断ればよかっただろ!」
隼人の声が大きいのでみんながジロジロ見ている。
それでも構わず隼人は続けた。
「出る必要なんてない、そんなの出る意味がない」
「意味があるかないかは、わたしが決めることだよ」
「おい、本気で言ってるのか…」
そこへ仁菜が加わってくる。
「ごめんね隼人くん、わたしも愛花を推薦した。愛花以外考えられなかったから」
「仁菜ちゃんまで…バカげてるよミスコンなんて!あんなのくだらない見世物だぜ!」
「隼人にとってはそうかもしれないけど、わたしにとっては大事なの」
「そんなに注目されたいのかよ、出場してみんなにチヤホヤされたいのかよ」
「そうじゃない、そんな理由じゃないよ」
「じゃあ何だよ、俺にはわかんねーよ!勝手にしろ」
隼人は怒りに身を任せてその場を去っていった。
陸が「隼人!」と呼びかけても振り返ることはなかった。
「隼人…」
これを見ていたみんなが気まずそうにしている。
推薦したのが他でもない自分たちだからだ。
そんな中、仁菜が陸の肩に手を置いた。
「気にしなくていいよ、隼人くんはわたしに任せて。
愛花は優勝することだけを考えればいいの」
「大丈夫だよ、自分で何とかする…仁菜に迷惑かけられないし」
「愛花、なんでも自分で解決しようと思わないの!わたしを信じて。親友なんでしょ?」
仁菜は頼ってもらいたかった。
莉奈と同じくらい信頼されたかった。
その気持ちを陸は理解した。
嬉しいくらい伝わった。
「わかった…仁菜、お願い」
「任せておいて」
仁菜なら大丈夫、安心できる。
そう思ってミスコンのことだけを考えるようにした。




