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second life  作者:
66/112

ミスコン

平穏な夏休みが終わり、秋になった頃、学校は文化祭の準備で盛り上がっていた。

そして今年の目玉はミスコンだった。

今までやったことがなかったが、やろうという声が多く上がり、実現したのだ。

ルールは各クラス代表を決めて、当日にPRタイムをしたあと生徒が

投票するというものだった。

陸のクラスでは、誰を代表にするか話し合っていた。

学級委員長が指揮を取る。

「誰か立候補する人はいませんか?」

もちろん女子は誰も手を挙げない。

そもそもミスコンなんて男子が盛り上がるだけで、

女子にとってはいい迷惑だと陸は思っていた。

「では投票で決めたいと思います」

投票用紙が配られ、そこにみんな名前を書いた。

陸はミスコン自体に反対派だったので無記名で投票した。

学級委員長が票をまとめ、結果を発表した。

「投票の結果、1位は佐久間さんになりました」

「へ?」

みんなが陸を見て拍手してきた。

「ちょ、ちょっと待って!無理だし!絶対に嫌!!」

陸は断固として拒否をした。

自分をかわいいだなんて思っていないし、そういう風に目立つことが嫌なのだ。

「そもそもなんでわたしなの?もっとかわいい人たくさんいるよ!」

いくら反論しても、みんなは同意してくれなかった。

学級委員長はばつが悪そうに言った。

「一応本人が辞退した場合は2位の人になるんだけど…差が開きすぎてて」

「そんなの知らないよ、わたしは辞退します!」

みんなが不満の声を上げ、教室はざわついている。

そこへ仁菜が話しかけてきた。

「愛花、そんなに嫌?」

「当たり前だよ!まさか仁菜もわたしに投票したの?」

「うん…だって愛花しか考えられなかったから」

「仁菜ひどい!」

「ひどくないよ、愛花は自覚してないけど、

愛花は男子から見ても女子から見てもかわいいんだよ」

「かわいくなんかない!」

「愛花がそう思っていることも目立ちたくないことも胸のことで注目されることを

もっとも嫌がることも知ってるよ。

ミスコンなんかに出れば目立つし、胸のことだって注目されるかもしれない。

でも愛花なら優勝を狙えるの!」

「優勝なんてもっとしたくない!」

「わたしわからないことがあるの、ずっと思ってたことなんだけど、

愛花はなんで自分に自信がないんだろうって」

「ナルシストじゃないから…」

「ううん、そういうことじゃないと思う。

きっと過去に何かあったんじゃないの?

それを追求しようとは思わないけど、愛花は間違いなくかわいいんだよ」

愛花が自覚できない理由、それは元男だからだ。

確かに今の自分は女だし、自覚もしている。

彼氏もいれば、女としての女友達もたくさんいる。

それでも自信が持てないままだった。

「かわいくなんか…ない」

それでも拒否したので仁菜が委員長に提案した。

「愛花に1日考える時間をあげてよ、それで結論だそう」

その提案が通り、陸は1日の猶予をもらった。

それでも答えは変わらない。

そんな陸に、クラスの女の子たちが言ってきた。

「愛花以外はいないよ」「愛花がクラスの代表だと自慢できる」などなど、

陸を後押しする言葉ばかりだった。

最後に仁菜が言った。

「男子は知らないけど、女子のみんながなんでここまで言うかわかる?

それは容姿だけじゃなくて、愛花の性格も含めて、

みんな愛花しかいないって言ってるんだよ」

「性格…?」

「そう、愛花は誰とでも仲良くなって、みんなに優しいから。

だからみんな愛花が好きなんだよ。今夜一晩、ゆっくり考えてみて」

これは陸が今までやってきた人望が成したことだった。

陸は昔から誰とでも仲良くなった。

いじめていた麻衣や裕美とも友達になり、

中学で嫌味を言ってきた麻理恵とも友達になった。

相手がよほどひどくない限りは嫌なこともしていない。

元々18歳だったということもあり、人の痛みがみんなよりわかるというのが

一番の理由だが、それは高校生になっても変わっていなかった。

誰にでも優しい、それが陸の性格だ。

みんなの後押しが陸を悩ませた。


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