6年ぶりの…
年が明け、冬真っ盛りの2月、この月は女の子にとって大事なイベントデーがある。
それは2月14日、バレンタインデーだ。
前日の13日、陸は莉奈を呼んで一緒にチョコレートを作っていた。
「愛花が田辺くんにチョコあげるのは6年ぶりかぁ」
「うん、6年前はお姉ちゃんに手伝ってもらって作ったんだよ」
あのときは恥ずかしがりながら作った記憶がある。
今は高校生だし、付き合っているということもあって恥ずかしさはあまりない。
「莉奈は誰にあげるの?」
「んー、友達」
「それ以外だよぉ、誰?誰?」
「もー愛花は…わかったよ、まだ少し気になる程度なんだけどバイト先の先輩」
「何で言ってくれないの、そういう話は最初にするって約束じゃん」
「だってまだ好きかわらなかったから…」
「まあいいや、で?どんな人なの?」
こんな話をしながらチョコを作り、完成した。
「田辺くん喜ぶんじゃない?6年ぶりの愛花の手作りチョコ」
「だといいな。莉奈も進展するといいね」
6年前と違い、ドキドキはしない。
喜んでくれたらいいな、というワクワクがあった。
翌日、陸は学校へ行くと真っ先に隼人の教室へ行った。
「愛花、ひょっとして?」
「うん、渡しに来た」
隼人同じクラスの小陽は「やるなー」と冷かしてきた。
とっくにほとんどの人たちに付き合っていることは知れ渡っているので
そこまで気にせず、陸は隼人のところに行った。
「隼人、バレンタインのチョコ」
「お、おお…サンキュー」
隼人は少し照れていた。
みんなの前で堂々と渡されるのは恥ずかしかったらしい。
横にいた春樹が加わってくる。
「愛花ちゃん、俺のは?」
「春樹くんは仁菜からもらうんだからいらないでしょ」
「そうだけど愛花ちゃんからももらいたかったなぁ」
「義理なのに?」
「そんなハッキリ言わないでよ」
「ふーん、春樹は愛花の愛情たっぷりのチョコが欲しかったんだ」
いつの間にか後ろに仁菜がいた。
「に、仁菜!冗談に決まってるだろ!俺は仁菜の愛情たっぷりのチョコが欲しくて」
「あげない」
「う、嘘だろ?」
「本当、もう知らない!バカ春樹!」
仁菜は「行こう」と言って陸の手を取って教室に戻ってしまった。
「仁菜、本当にあげないの?」
「あげるよ、放課後。でも少しは反省させないと、本当にバカなんだもん」
怒りながらも心の中では春樹を信用している。
そんな仁菜がかわいかった。
夜になって隼人からお礼の電話がかかってきた。
「おいしかったよ、ありがとな」
「6年前のとどっちがおいしかった?」
「どっちもだよ、どっちも俺にとっては最高のチョコだから」
嬉しい言葉が聞けて、陸は大満足だった。
そのあと莉奈にどうだったか電話で聞いてみた。
「渡したよ」
「それから?」
「連絡先を教えてもらった…」
「マジ!?やったね莉奈!!」
莉奈にとって嬉しいことは、陸にとっても嬉しい。
進展するといいな。陸はそう心から願った。