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second life  作者:
53/112

大会に向けて

6月下旬、陸たちチアリーディング部には大事な時期だった。

7月上旬から始まる高校野球の応援だ。

大会が近くなったので、野球部、吹奏楽部と合同で週一回の練習が始まる。

まだ練習なのでユニフォームではないが、他の部と合同でやるのは初めてなので

楽しみであり緊張もしていた。

放課後に練習場所へ仁菜たちと行くと、そこにはみな実がいて、

「みな実、しばらく一緒だね」

「うん、頑張ろうね!」

と声をかけあった。

少しすると、レギュラーじゃない野球部もやってきて、そこには隼人もいる。

残念ながら隼人はレギュラーには選ばれなかった。

というより、1年生からは誰も選ばれなかった。

こればかりは仕方のないことだが、

レギュラーになれなくてもスタンドで応援という大事な役割がある。

隼人は腐ることなく、自分の役割をしっかりとまっとうする気でいた。

他にもレギュラーになれなかった2年生もいたりするので、

陸は隼人には話しかけなかった。

陸もチアリーディング部として、しっかりと応援に専念するつもりだ。

「じゃあ俺が曲のカードを出すから演奏と応援をお願いします」

野球部2年生のリーダーがそう説明すると、早速曲名が書かれたカードを出した。

その曲を吹奏楽部が演奏し、そのリズムに合わせてチアと野球部が応援をする。

陸は外の部員と一緒の動きをして笑顔で応援した。

途中で休憩になると、小声で小陽が話しかけてきた。

「田辺のところに行かなくていいの?」

「うん、今はお互い部活中だから」

「そういうところ真面目だよね、愛花って」

小陽に付き合っていることを先日話していたので、

2人を冷かそうとしていたのかもしれない。

しかし、みんなの前でイチャイチャなど絶対にしたくないので、

陸はこの場で隼人と接触する気はない。

それは隼人も同じ考えだった。

隼人が部員に付き合っていることを話しているのか知らないが、

隼人は練習中、一度も陸を見てこなかった。

タオルで汗を拭っていると、今度はみな実がやってきた。

「愛花すごいね、なんかまるで別人だったよ」

「そんなことないって、みな実たちが演奏してくれるからできるんだよ」

「でも愛花と部活していると中学の頃を思い出すな、あの頃も楽しかったもんね」

「そうだね、なんか懐かしい感じもするね」

そんな話をしていたら、後輩の理紗が真っ先に思い浮かんだ。

理紗ちゃんは元気にしてるかな?

その次に思い出したのは同じ部活であり、彼氏だった豪だ。

別れてからは一度も連絡を取っていないので、現在がどんな感じなのかまったく知らない。

正直あまり興味がなかった。

陸はチラッと隼人を見た。その隼人も汗を拭きながら部員たちと会話をしている。

そう、今の陸には隼人がいる、過去の恋人を考える必要はない。

休憩が終わり、1時間ほど練習をしてこの日の合同練習は終了した。

「愛花、帰りどうする?」

「うん、今日は久々にみな実と帰るよ」

仁菜にそう告げ、陸はみな実と一緒に帰った。

みな実は真面目なので、帰りの話は勉強のことばかりだった。

「愛花はテスト勉強している?」

「うっ…あまりしてないかも」

「もうすぐ期末テストなんだから頑張らないとダメだよ、

田辺くんと楽しむのもいいけどちゃんと両立しないと」

「はーい…」

みな実が言うことはごもっともだ。

そろそろちゃんと勉強しないともっと成績が下がる。

高校に入ってからあまり勉強をしていないので、

中間テストの成績は平均をやや下回ってしまった。

これ以上下がるわけにはいかないので、本当に気を引き締めなければいけない。

「夏休みに入ればいくらでも遊べるんだしさ、頑張ろう!」

「そーする…」

ちょっと憂鬱になりながらも期末テストに向けて動き出すことにした。


7月に入り、合同練習の日以外はテスト勉強期間なので部活は休みになった。

それでも野球部は大会が近いので例外で部活を行っている。

「隼人くん大変だね、勉強あまりできないんじゃない?」

「でも俺は大丈夫って言ってるから…隼人なら両方うまくこなすよ」

「愛花の隼人くんに対する信頼は絶大だね」

「もー、仁菜はそうやってすぐにからかう」

「あははは、さて帰って勉強しないと」

練習している隼人たち野球部を一瞬見てから自転車に乗り、陸は家に帰った。

帰ると早速勉強に取り掛かる。

勉強していると多少のLINEは送られてくるが、あまりダラダラ続かないように

手短に済ませ、すぐに勉強に戻る。

隼人に対しても同じだった。

そんな隼人も状況をわかっているし同じ立場なので必要最低限のことしか送ってこない。

そのおかげで予想以上に勉強に集中でき、期末テストを迎えた。

無事テストが終わると同時に高校野球は始まった。

陸たちの北高はクジでシードを引いていたので、2回戦からの出場だった。

その初戦は3日後の日曜日だ。

テストも終わったので、練習にも熱が入る。

そして前日の練習前、ついに1年生にユニフォームが配られた。

「今日はこれを着て練習するからね」

待ちに待ったユニフォーム、陸は自然と笑顔がこぼれていた。

「やったぁ!」

思わず陸は声を上げ、上級生の先輩たちから笑われてしまった。

恥ずかしくなり下を向いてしまったが、それでも嬉しくてしかたなかった。

更衣室へ行って、部員みんながユニフォームに着替える。

陸のサイズはSだ、もうSというサイズには慣れている。

着替え終わり、みんなで体育館に移動すると、他の部のみんなが注目しているのがわかった。

やはりチアリーディングのユニフォームは男女問わず人気があるのだ。

体育館で30分ほど軽い練習をしてから、最後の合同練習が行われた。

広場に移動する前に日焼け止めをしっかり塗る。

あの炎天下の中で肌をさらすので日焼け止めは必要不可欠だ。

これは陸だけでなく、部員全員同じだ。

塗り終わってみんなで移動するとすでに野球部は揃っていて、吹奏楽部も準備していた。

「ねえ、隼人くん愛花の格好見たら喜ぶんじゃない?」

「もー、仁菜ったら!明日なんだから真剣にやらないと」

そう言いながらも隼人の反応が楽しみだった。

その隼人がチラっと陸を見て、慌てて目を逸らしたが顔が少し赤いので、

照れていたのがわかり嬉しかった。

そこへ今度はみな実が笑顔でやってきて「すごく似合っていて可愛い」と褒めてくれた。

「ありがとう」とお返しし、今度こそ本当に練習モードに入った。

最後の合同練習も無事終わり、いよいよ明日、本番を迎える。

隼人は明日の準備があるらしく、終わったあとも色々と動き回っていた。

陸はそんな隼人を横目に、先に帰ることにした。

しかも今日は久々にみな実と帰宅、自転車に乗りながらみな実が聞いてきた。

「本当はグラウンドにいる隼人くんを見たかったんじゃない?」

「まぁね、でもこればっかりはしかたないもん。

なんか1年生は誰もレギュラーじゃないみたいだし」

「そうなんだ、やっぱり運動部って上級生がレギュラーになるんだね」

「一概にそうとは言えないけど…そんな感じなのかも」

今年はスタンドで一緒に応援だけど、来年はグラウンドにいる隼人を応援したい。

そんなことを思いながら自転車を漕いだ。



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