ついに隼人と
ゴールデンウイークが終わり、勉強や部活、遊びの生活で陸は充実していた。
そんな6月上旬の金曜日、たまたま隼人と帰る時間帯が一緒だった陸は、
仲良く帰ることになった。
そんな隼人は例によって「送っていく」と言ってくれた。
「まだ早いし大丈夫だよ」
「いいよ、もう少し愛花と一緒にいたいし」
「じゃあ…お言葉に甘えて」
私も隼人と一緒にいたい…、ずっと一緒にいたい。
ここにいる隼人は、今の等身大の隼人だ。
陸は今の隼人しか見えていないことに気づいた。
家の前まで着くと、隼人は真面目な顔をしていた。
「隼人…?」
「愛花、俺は今の愛花が好きだ。それがやっと確信できた、俺と付き合ってほしい」
隼人も陸と同じ気持ちだった。
今なら、断る理由がない。
「私も…今の隼人が好き!」
「愛花!」
「隼人!」
2人で抱き合おうとしたとき、「あれ?」という声が聞こえ、その場で固まってしまった。
「愛花、何してるの?」
「莉奈!な、なんでもないよ」
偶然帰ってきた莉奈にバッタリ遭遇してしまったのだ。
「まさか…ははぁ」
莉奈はニヤニヤしている。
陸も隼人も顔が真っ赤だ。
「ひ、久しぶりだな!山崎」
「田辺くんもね、それにしても家の前で大胆だねぇ」
「莉奈!何もしてないじゃん」
「しようとしてたでしょ、やっと付き合ったの?」
陸は恥ずかしそうに無言で頷いた。
「そっかそっか、よかったね!じゃあ邪魔者は消えるかな」
「別に邪魔者なんかじゃ」
「いいのいいの、それじゃあね~」
莉奈はニヤニヤしながら家に帰った。
気まずい空気が流れる。
「あ、愛花…俺も帰るから」
「う、うん…」
「別に…焦る必要もないしさ、俺たち始まったばかりなんだから」
「そうだよね!これからよろしくね、隼人」
「こちらこそ、愛花」
帰る隼人を見送り、幸せな気分で家に入った。
そうだ、私たちは始まったばかり!まだまだこれからなんだもん!