部活
ある日の放課後、陸は担任の直子に用があったので職員室へ行くと
体育館にいると言われたので、体育館へ移動した。
そこではバスケ部やバレー部などが部活をしていた。
直子を探すと、直子は檀上にいた。
そこには、チアリーディング部もいる。
直子はチアリーディング部の顧問だった。
「先生」
「ああ、佐久間さん。できた?」
「はい」
陸は直子に頼まれていたものを手渡し、直子はそれを確認して「ありがとう」と言った。
「先生ってチアリーディング部の顧問だったんですね」
「そうだよ、大学まで私もやっていたからね」
「へー、そうだったんだ」
数を数えるとチアリーディング部は全部で14人だった。
部長らしき女の子の掛け声に合わせて、みんなが同じ動きをしている。
まったく知らない世界だったが、どことなく惹かれるものがあった。
思わず見入ってしまう。
「どうしたの?ひょっとしてやりたくなった?」
「い、いえ…」
「やりたくなったらいつでも言ってね、大歓迎だから。あ、よかったら見学していきなよ」
「え、でも…」
「はい、見学決定ね」
直子は強引に陸を見学させた。
興味を示しているのに気づいたのかもしれない。
「はい、じゃあ次やるよ」
直子は中に入って指導を始めた。
見ていてすごいと思ったのは、動きや体の柔らかさはもちろんだが、
みんなが常に笑顔なことだ。
その笑顔がキラキラしていて眩しくみえる。
休憩に入ると、部長らしき女の子が話しかけてきた。
「どう、チアリーディング部?」
「あ、すごいなって…」
「ありがと、よかったら一緒にやろうよ。
君ってすごく可愛いから入ってくれると華やかになるしさ」
「い、いえ…私なんか入っても」
「そうなんですよ、香織先輩。
佐久間さんって1年の間じゃ、可愛いって有名なんですよ」
隣に1年生らしき女の子が話に加わってきた。
どうやら部長らしき女の子は香織という名前らしい。
「あ、私は6組の富野小陽。佐久間さんと友達になりたかったんだ」
「私と?」
「うん、可愛いし性格よさそうだし」
「そんなことないんだけどな…」
6組ということは隼人と同じクラスだ。
それがちょっと羨ましかった。
そんな話をして、再び部活が始まった。
見ているうちに、やってみようかなという気持ちになってくる。
そしてあることに気づいた。
チアリーディングといえば、高校野球の試合のときスタンドで応援をしている。
つまり隼人を応援していることになる。
しかも個人的にじゃなく、堂々と応援できる。
陸は決心した。
部活が終わり、陸は直子のところへ行った。
「先生、入部届けは明日提出すればいいですか?」
「入ってくれるの?」
「はい!私、チアリーディング部に入ります」
「大歓迎よ、みんな集まって」
直子は部員全員を集め、陸を紹介した。
「みんな、新入部員の佐久間さんよ」
「佐久間愛花です、ちょっと遅れての入部だけど頑張るので、よろしくお願いします」
陸がお辞儀すると、みんなから「よろしくね」と声をかけられ、
すぐに溶け込めそうだと感じた。
1年生は陸を除いて5人、2年生は6人、3年生は3人だった。
そのうち、さっき話しかけてきた小陽が一緒に帰ろうと言ってきた。
陸は喜んで「うん」と返事をした。
帰り道、早速小陽は質問をしてくる。
「ねぇ、佐久間さんってうちのクラスの田辺と付き合ってるの?」
噂は怖い、あっという間に広がっていて、
さっきまで面識がなかった小陽ですら知っていた。
「よく聞かれるんだけど、付き合ってないよ」
「そうなんだ、同じ中学?」
「ううん、小学校の途中まで。彼、途中で転校しちゃったから」
「なら偶然、同じ高校だったってこと?」
「うん、それで懐かしくて仲良くなったんだ」
「なーんだ、つまんないの」
どうやら小陽は付き合っているのを期待していたらしい。
残念だが、まだ友達の関係だ。
「富野さんは何でチアリーディング部に入ったの?」
「んー…ユニフォームに憧れて、かな。まだもらえてないけどね」
確かにチアのユニフォームは可愛い。
自分もいつか着ることになる。
ちょっとワクワクした。
「明日から一緒に頑張ろうね!」
「うん、よろしくね」
小陽と別れて家に帰ってから、早速隼人にLINEで
チアリーディング部に入ったことを伝えた。
「マジで?どうしてまた?」
「たまたま見学したら楽しそうだったから」
「そうか、でも愛花が決めたんならいいんじゃないか?」
「ありがとう!夏はばっちり応援するからね」
「期待してるよ」
んー!明日から楽しみだ。