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second life  作者:
43/112

これからの2人

放課後になり、みな実が教室まで迎えにきた。

「愛花、帰ろう」

「ごめん、今日はちょっと…」

そこへ隼人が「佐久間」と言って現れた。

隼人を見て、みな実は誰?と戸惑っている。

「みな実、田辺くんって憶えてる?小4で転校した」

「田辺くん…?」

少し考えてから、陸の初恋の相手というのを思い出した。

みな実も同じ小学校だったので、クラスは違っていても薄っすら憶えていた。

「ああ、田辺くん!って彼があの田辺くん??」

「そうだよ、偶然同じ学校だったの!すごいでしょ!!」

「へー!田辺くん久しぶり」

みな実は隼人にそう言ったが、当の本人は困っていた。

「えっと…」

「私、野田みな実。憶えてないかな?同じクラスになったことなかったから」

少し考えて隼人は薄っすらだが、みな実を思い出した。

「ああ、野田!懐かしいなぁ」

「そっか、そういうことか!わかった、私今日は一人で帰るよ」

「ごめんね、みな実」

「いいよ、じゃあね」

みな実は頑張れという拳を作ってから帰って行った。

「野田、いいのか?別に3人でも…」

「うん、でも今日は2人にしてくれたから…」

「そうだな、よし!行こう」

2人でそれぞれ自転車に乗って、駅の近くのファーストフードへ行った。

「それにしても佐久間は変わったな」

「それは田辺くんもでしょ、元気だったみたいだね」

「まあボチボチって感じだ。でも不思議なだよな、まさか同じ学校だったなんてな」

「それはこっちのセリフだから、だって田辺くん勉強嫌いじゃなかった?」

「嫌いだよ、今でも。

けどさ、中3で真面目に勉強したらよくわかんないうちに北高受かってた」

「そんなので受かったらすごいから」

「受かったんだからしょうがないじゃん。

それにしても佐久間がいるんだったら裕美のやつ、教えてくれればいいのに」

「裕美?」

「ああ、俺の母さんが裕美のおばさんに電話したんだよ。

また戻ることになったって、それで北高に行くんだけど裕美ちゃんは違う?ってね。

それで裕美は違うって答えて、ついでだから俺の知り合い、誰かいるか聞いてくれたんだ。

そしたら知らないって言ったらしいからよ。

佐久間って裕美と友達だったじゃん、あいつ知っていて言わなかったんだな」

そういうことか。

陸は卒業式の日の裕美の言葉を思い出した。

「いいことあるかもよ」

このことだったんだ、知っていたのに言わなかったな、裕美め。

「ところで田辺くんは部活入るの?」

「ああ、野球部に入るよ」

「野球続けていたんだ!」

「まあな、結局引っ越してからも少年野球やって、中学でも野球部だったから

こうなったら高校もやろうと思ってさ」

「へー…そういえば、あのときのヒット、カッコよかったよ」

カッコいいと言われてので隼人は照れていた。

「バ、バカ!古い話するな。しかもあのときは内野安打だったろ」

そうだ、愛花はあのときもカッコよかったと言ってくれた。

今でもちゃんと覚えていてくれたんだな。

「それよりも佐久間は部活やるの?」

「うーん…みな実に吹奏楽部誘われているんだけど迷い中」

「吹奏楽?なんかイメージが湧かないな」

「ちょっと、中学は吹奏楽部だったんだよ!それもみな実に誘われてだけど…」

「そうだったんだ、なんか髪ショートだから運動部なのかと思ってた。活発な雰囲気だし」

「みんな同じこと言うんだよね」

そう、仁菜にも同じことを言われた。

ショートにするだけで、そういうイメージになってしまうらしい。

「でも考えてみたら雰囲気だけだよな」

「どういうこと?」

「中身は昔のままだなって思っただけ」

「それって私が成長してないって意味じゃん」

「違うよ、なんていうか…うまく説明できないけど、あの頃と同じだなって。性格とか…さ」

「そう…かな?」

隼人は陸の中身をちゃんと理解している。

5年前と同じで、ちゃんと自分を見てくれている。

そんな気がした。

「田辺くんは変わったよね、だってあの頃は全然しゃべってくれなかったもん」

「ガキだったからな、好きな女の子の前じゃ緊張してしゃべれなかったんだ」

話が盛り上がり、気がつくと夜の7時半になってた。

「やべ、そろそろ帰らないと…」

「そうだね、お母さん心配性だから怒られちゃう」

店を出て自転車にまたがると、隼人がサラッと言ってきた。

「遅くなったから送ってやるよ」

まるであの日の再現のようだった。

当時と同じようにドキドキしてくる。

「い、いいよ!まだそんな遅くないし」

「気にするなって、それに久々にあの辺を見たいし」

結局、陸は隼人に送ってもらうことになった。

小学4年のころの気持ちなのに、あの日と同じ気持ちでいるみたいだった。

自転車を漕いでいる隼人の顔が、当時無言で歩いて送ってくれた隼人の顔と重なってくる。

まるでタイムスリップしたようだ。

家の近くまで行くと、隼人は「懐かしい」という言葉を連発して自転車を止めた。

「どうしたの?」

「あの公園…」

止まった公園は、隼人が引っ越すことを告げ、ホワイトデーを渡した場所だった。

「ちょっとブランコ乗らないか?」

「いいよ…」

2人は自転車を降りてブランコに乗った。

あのときと違って、ブランコが少し小さく感じる。

隼人にいたっては、身長が180近くあるので、小さく感じるどころではなかった。

「懐かしいな」

「田辺くん、さっきからそればっかり」

「だって本当に懐かしいんだから仕方ないだろ。

けどよ、乗るとわかるよ…5年という年月が」

「そうだね…」

「俺さ、引っ越しのときに佐久間が「隼人」って最後に呼んでくれたのが嬉しかったんだ」

あの日の記憶が鮮明に蘇ってくる。


「佐久間、いや、愛花―!元気でなー!」

「隼人…隼人も元気でねー!」


あのとき私は間違いなく隼人が好きだった…今は?

「それは私も同じだったよ、やっと愛花って呼んだんだもん」

ブランコに乗ったことで、当時の記憶とともに隼人の気持ちに答えが出た。

俺は今も…あのときと同じように佐久間愛花が好きだ。

「愛花…って呼んでいいか?」

名前を呼ばれたとき、今もあのときと同じ気持ちでいることに陸は気づいた。

私…やっぱり隼人が好きだ。

「いいよ…隼人」

「やっと名前で呼んでくれたな」

「隼人が佐久間って呼ぶからだよ」

少し沈黙があってから隼人が言った。

「5年前の…続きをしないか?俺は今でも愛花が好きだ」

すごく嬉しい言葉だった。

すぐにでも返事をしたかったが、その前に考えた。

隼人は昔のままだった、あの頃と同じように陸が好きだった隼人のままだ。

しかし、本当にそうなのだろうか?

今日一日話しただけで本当の隼人を知れたのだろうか?

陸は過去に恋愛で嫌な思いをしている。

一つ目は思い出したくもない伸也。

優しくされたことでトキめいてしまい、簡単に付き合ってしまった。

その結果が、弄ばれ、大事な処女を奪われるという結末を迎えてしまった。

次に付き合った豪。

豪とは部活を通じて1年半以上かけて仲良くなってから付き合った。

伸也みたいな偽物じゃない本物の優しさをもっていたので安心して付き合ったが、

豪は優しすぎた。

たまに見せてほしい男らしさをまったく見せず、最後まで優しいだけだった。

結局は相手の中身を、本当の中身を見ることができなかった自分のミスだ。

同じ失敗はしたくない、隼人なら大丈夫と思っても…

どうしても慎重になってしまうようになっていた。

「私も隼人が好き…」

「愛花」

「でもね、最初は友達からでもいい?」

「友達から…か」

「隼人を好きって気持ちは間違いないんだけど…

今はあの頃の隼人と今の隼人が重なってる気がするの。

だから…今の隼人だけを見れるようになったら…」

隼人は陸が言っている意味がわかった。

それは隼人も同じだからだ。

陸の言葉に賛成することにした。

「わかった!俺も実は同じだったかもしれない。

あの頃の愛花と今の愛花がダブって見える…

お互いが今の自分たちだけを見られるようになったら…付き合おう」

「うん、ありがとう…隼人」

友達からのスタートとなったが、

付き合うまで時間はかからないだろうと2人とも思った。

それだけ2人の気持ちは通じ合っていた。


「ありがとう、送ってくれて」

「別に気にするなって。じゃあ明日学校で」

「うん、気をつけてね…隼人」

隼人が見えなくなるのを確認してから家に入ると、美智子に怒られた。

「連絡もしないで、夜の9時よ!」

「ごめんなさい…」

公園に寄ったことで、予想以上に時間が遅くなっていた。

確かに連絡をしなければ親は心配するに決まっている。

そこに彰もやってきた。

「愛花、母さんの言うとおりだ。

高校生になったからって、まだまだ子供なんだから」

「はい…」

「今度から連絡だけはするように、わかったか?」

「わかりました…」

「ならいい、早くご飯食べな」

美智子はまだブツブツ言っていたが、彰はもう怒っていなかった。

ご飯を食べていると、美智子がお風呂に入ったので彰と2人だけになる。

「しかし愛花、お前もやるな」

「何が?」

「偶然、窓を開けたときに見ちゃったんだ、ずいぶん大きい彼氏だったな」

「ちょ、ちょっと見てたの?」

「だから偶然だよ。でもちゃんと家まで送ってくれるなんて、いい子じゃないか」

「まだ…彼氏じゃないもん」

「そうなのか?でもいいや、愛花が青春を謳歌してるなら」

「その言い方、古いから。それと…お母さんには内緒にしておいてね」

「ああ、その代わり付き合ったらちゃんと言うんだぞ。

親っていうのは娘がどんな相手と付き合ってるか心配するんだから。

まあ、愛花なら変な男とは付き合わないだろうが」

変な男と言われてちょっと胸が痛んだ。

うん、今度こそ大丈夫な…はず。

というより、普通は逆じゃない?母親が知っていて父親が知らないパターンなのに。

そう思いながらも心配してくれる彰と美智子に感謝した。

部屋に戻り、誰から報告しようか迷う。

本来なら真っ先に莉奈だ。

しかし、みな実は2人きりにしてくれたのだから、みな実からにするべきか?

いや、もっと最初に電話をかける人物がいた。

その人物の番号を出して通話を押した。

「もしもし」

「ちょっと裕美!なんで言ってくれなかったの?」

「あ、やっと会ったんだ。クラス違ったの?」

「そういう問題じゃなくて、言ってくれればいいのに」

「だって偶然会ったほうが感動的でしょ」

「うっ…それは」

確かに知らないで会ったほうが喜びは人一倍だったかもしれない。

そして、偶然会ったから今日のような結果になったのかもしれない。

「で、隼人はどうだった?」

「背が大きかった」

「あのね、そういうこと聞いてるんじゃないの、わかるよね」

「わかったよ…とりあえず友達から」

「ふーん、すぐには付き合わなかったんだ?」

「そりゃそうだよ、5年も経ってるんだし、あの時は小4だったけど今は高1だよ」

「確かに」

「それより裕美も今度一緒に会おうよ」

「遠慮しておく」

「なんで?幼馴染だったじゃん」

「別に今の隼人に興味ないもん」

「裕美…それひどくない?」

「そう?興味ないものはないんだから仕方ないでしょ。

でもね、愛花の彼氏なら興味ある。だから2人が付き合ったら会うよ」

これが裕美なりのエールということだ。

早く付き合いな、そう言いたいのだ。

きっと隼人なら信用できると思っているに違いない。

やはり幼馴染なんだな、隼人と裕美は。

次にみな実に電話をして、そのあとが莉奈だった。

特に事情を知らなかった莉奈とは盛り上がってしまい、

電話を切ると深夜の1時になっていた。

仁菜には明日学校で言おう。

陸は久々にウキウキしながら眠りについた。


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