再会
翌週から陸はやっとマスクを外して学校へ行った。
すると、そのことに早速仁菜が言ってきた。
「愛花ってこんな可愛かったんだ!マスクしてたから、わからなかったよ!」
「全然可愛くないから!」
高校でも同じことを言われる。
本人はそんな自覚ないだけに迷惑な話だった。
だが、この日から…特に男子の陸を見る目が変わったのは確かだった。
そして、1年2組にショートヘアの可愛い巨乳の女の子がいるという噂が
校内に広まっていった。
1年7組の教室で男子が会話をしていた。
「おい、お前知ってるか?2組にすげー可愛くて巨乳の女がいるらしいよ」
「ふーん」
「なあ、今から見に行こうぜ!」
「興味ないからいかない」
「なんだよ、冷めてるな」
「別に、俺はそういう部分だけで女を見ないだけだよ」
「じゃあいいや、他のやつと行ってくる」
春樹は別の男子と教室を出て行った。
俺にはそんなことどうでもいい。
来週から始まる野球部の部活を頑張り、レギュラーを目指すんだ。
それと勉強も…。
しばらくして春樹が戻ってきた。
「マジで可愛かった!俺、あの子と付き合いてーな」
「どうぞご自由に」
2時間目の授業が終わり、3時間目は移動教室だったので春樹とその教室へ向かった。
「もー嫌だ…何なの一体」
陸は頭を抱えていた。
陸のうわさを聞いて、いろんなクラスの男子が休み時間ごとに陸を見に来るのだ。
中には話しかけてくるのもいる。
「ねえねえ、俺5組の近藤っていうんだけどさ、よかったら今日遊びに行かない?」
まただ、嫌気がさしてくる。
更に、みな実は4組だが、みな実が陸と友達と知って、みな実と仲が良くないのに
陸を紹介してと言ってくる男子もいる。
もちろんみな実は拒否してくれているが、かなり迷惑しているだろう。
みな実に申し訳なく思う。
「仁菜、トイレ行こう」
陸は仁菜を誘ってトイレに逃げることにした。
廊下を歩いていると、春樹が急にはしゃぎだした。
「おい、あの子だよ!あの子がさっき言ってた」
正面から歩いてくる2人の女の子のうち、ショートヘアの子を顎で指していた。
興味はないが、視界に入ったので顔を見てみると「あれ?」と思った。
「ホント最悪だよ、なんでこんなことになるの!」
「確かに迷惑な話だよね、よし!次から私が追っ払ってあげる」
「さっすが仁菜、頼もしい」
そんな話をしながら歩いていると、
正面を歩いている2人の男子がじっと陸を見つめている。
1人はニヤニヤしていて、もう1人はただじっと見つめているだけだった。
陸はその顔を見て「ん?」と思った。
すれ違っても目で追ってくる。
「愛花、言ってやろうか?」
「ちょっとまって…」
すると男子は完全に振り向いて立ち止まった。
「おい、お前やっぱり気になってるんじゃないか、隼人」
自信はない…自信はないけど無意識に口が聞いていた。
「佐久間…?」
その言葉を聞いて、陸は無意識に聞き返していた。
「田辺くん…?」
隼人は驚くと同時に笑顔になった。
「やっぱり佐久間か!すげー久しぶりだな!!」
陸は信じられなかったと同時に、
今まですっかり隼人のことを忘れていたことが不思議だったが、
気がつくと隼人の前まで駆け寄っていた。
「ホントだよ、小4の最後以来だもん」
仁菜と春樹はポカーンと2人を見ている。
そんなことお構いなしに2人は会話を続けた。
「まさか同じ学校だと思わなかったよ」
「こっちこそ、ってか、戻ってきたんだね?」
「また4月からな、家は前のところとは離れているけど」
「そうだったんだ、でもこんな偶然ってあるんだね」
「そうだよな、俺もビックリだ」
盛り上がっていると、チャイムが鳴った。
「やべ、授業だ。なあ今日の放課後暇か?」
「うん、特に予定はないよ」
「じゃあ一緒に帰ろうぜ、話したいことがたくさんあるし」
「わかった、じゃあ放課後ね」
隼人はもう一人の男子と走って移動していった。
「愛花、どういうこと?」
「あとでゆっくり話してあげる」
陸は悩みが吹っ飛んだかのように笑顔だった。