表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
second life  作者:
21/112

卒業式

3月…陸は今日、小学校を卒業する。

初めて着る女子のスーツを身にまとい、

編み込みを入れた少し大人っぽい髪型で学校へ行った。

卒業証書を受け取り、卒業の歌を歌い、最後のホームルーム。

早苗の話が終わり、校門を出たら楽しい学校生活が終わってしまう。

2年半が走馬灯のように蘇ってきた。

目が覚めたら死んでいたはずの自分が10歳の女の子になっていた。

本当の両親が亡くなっていて、かわりに佐久間家の養女になった。

戸惑いの連続だったが、彰も美智子も本当の子供として接してくれた。

希美は最初の頃は戸惑っていて、今の自分と陸を重ね合わせたりもしていたけど、

最終的には妹として見るようになり、今では完全に妹だ。

自分にとっても希美は頼れる大事な姉、彰も美智子も同じ大事な父、母。

最初は小学校なんて、と思い、友達なんて作る気もなかった。

それなのに、偶然前の席の莉奈が話しかけてきて、適当にあしらっていたら

まさかの超がつくご近所。

そのせいで、一緒にいることが多くなっていくうちに

莉奈は自然と友達になってしまった。

友達なんてって思っていたはずなのに、莉奈といるのが楽しくなっていた。

その莉奈を通じて美咲・綾も友達になった。

徐々に愛花としての生活に馴染んできた頃、

ファーストブラを付けることになってしまった。

これを付けたことで、自分は女の子と意識するようになった。

なんだかんだで小学校生活も悪くないと思い始めていた矢先、いじめにあった。

中心は麻衣と裕美。

最初はへこたれなかったが、エスカレートしていくうちに耐えられなくなった。

そのいじめの原因が自分であることに気づいたのもこのときだ。

その頃はまだ18歳というプライドがあったが、

実際に莉奈たちと自然に遊んだりしているうちに、

見下していた自分が嫌になっていた。

自分はみんなと同じ10歳と気づいたことで、

麻衣や裕美と和解することができた。

今では大事な友達になっている。

そして4年生で大事な出来事がもう一つあった。

田辺隼人という男の子を好きになったことだ。

まさか10歳の男の子を好きになると思わなかった。

でも隼人はところどころで自分をドキッとさせ、気がついたら好きになっていた。

恋をするというのは、ふとしたキッカケなんだということを知った瞬間だった。

隼人に可愛い姿を見せたいと思って、

オシャレをするようになったのもこの時期だ。

そんな隼人は4年の終わりに転校してしまい、今はもういない。

5年生になると、凛・みな実・綾という新しい4人組で仲良くなった。

5年生に慣れてきた頃に行われた林間学校、

はじめて友達と寝泊りをしたのが思い出として刻まれている。

その直後、女として必ず通る道、生理になった。

このときは不安で仕方なかった記憶がしっかりと残っている。

けれども、それを希美、美智子、早苗がサポートしてくれたので

乗り越えることができた。

そして生理を経験したことで、女の子から女性になり、

女の子という意識から女性に切り替わった。

初めてのプール、浴衣での夏祭り、あっという間に6年生になり、

その6年生も、もうすぐで終わってしまう。

まだ早苗が話をしているのに、自然と涙が溢れてしまった。

「愛花…」

心配そうに凛が小声で話しかけてくる。

「ごめん…」

それに早苗は気づいたが、あえて話を続けた。

陸が泣いたことで、他にも泣き始める女の子が何人かいた。

「皆さんの人生はまだまだこれからです。

これからもっと大変なこと、辛いことを経験します。

その度に、この学校での思い出、クラスのみんな、先生を思い出してください。

そうすれば、どんな困難も乗り越えられます。

これで、先生の話は終わります」

早苗の話が終わり、学級委員長が起立の号令をかけ、みんなが立ち上がる。

「礼!」

みんながお辞儀すると、大きな声で「ありがとうございました!」と叫んだ。

男子たちは楽しそうに教室を出て行く、

半分以上の女子も同じように出て行ったが、

陸は泣いたまま動くことができなかった。

「愛花」

みな実が泣きながら抱きついてきた。

そのあとに綾と凛も抱きつき、4人で泣いて抱き合った。

そこへ早苗がやってきた。

「泣かないで、卒業は次へのステップなんだから。

先生はみんなが成長していくのを楽しみにしてるよ」

「早苗先生…」

陸は早苗に抱きつくと、早苗は優しく抱きしめてくれた。

以前、大泣きして希美が抱きしめてくれたときと同じ感触だった。

「先生…私、必ず教師になって先生と同じ教壇に立ちます」

「待ってるよ、後輩」

「後輩?」

「うん、だってもう愛花ちゃんは私の生徒じゃないから。

教師を目指す女の子、教師を目指すなら私の後輩でしょ」

陸は早苗のこういうところが大好きだった。

もう一度強く抱きしめてから離れ、涙を拭いて早苗を見た。

「はい、待っててください…先輩!」

4人で仲良く校門をくぐり、学校を出た。

4月からは中学生としての新しい人生が待っている。



10年後の私へ

こんにちは、10年後の私。

元気にしていますか?

10年後というと22歳ですね。

順調に行っていれば大学4年生を卒業する頃かな、就職は決まりました?

予定では小学校の教師になっているはずだけど…。

多分これを10年後に読むと子供だなって笑っちゃうんだろうな。

でも、12歳の私は今を精いっぱい生きています。

今を生きるということは、充実した生活を送っているということ。

転校してからの2年半、この2年半は私にとってかけがえのないものでした。

長い人生の中での2年半はちっぽけに感じるかもしれない、

それでも家族の大切さ、良き友達、人を愛すること、尊敬する先生、

大事なことを学びました。

これらがなかったら、今の私はいません。

そんな自分を想像するとゾッとします。

多分、中学や高校でもいろんな人と出会い、新しい友達が出来たり恋をしたりするでしょう。

その度に成長を続け、10年後の私が成り立っているんだと思います。

そして22歳の私、これを読んでもっと成長してください。

人の可能性は無限大です。

ずっとずっと毎日を精いっぱい生きて、最高の幸せをつかんでください。


                               佐久間愛花



更新が不定期になってしまったすいません。。。

とりあえずこれで小学校編は終わりになります。

次回からの中学校編に期待してください☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ