はじめての…
楽しい林間学校が終わった直後の日曜だった。
起きるとどことなく身体が重い。
疲れてるのかな?
そんなことを思いながらトイレに入った。
オシッコをして、普通通り拭くとトイレットペーパーに血が付いていた。
「え?」
慌てて便器を見ると、中は血が混じっていた。
パンツには血が付いている。
「生理…きた」
頭の中はパニックでとても不安になった。
「どうしよう…」
陸はとりあえずトイレットペーパーを束ねて
パンツに敷いてから履いてトイレを出た。
美智子に相談するしかない、そう思いリビングに行くと彰しかいなかった。
「お母さんは?」
「なんか友達と会うとかで夕方に帰るって言ってたよ」
「うそ…」
一番頼りたいときに美智子がいないのが信じられなかった。
こうなると次は希美だ。
部屋に行くと寝ていたので叩き起こした。
「お姉ちゃん、起きて!」
「なに…どうしたの?」
眠そうに希美はベッドから起き上がり、あくびをした。
「きたの…」
「ん?何が?」
「生理…」
この言葉を聞いて希美は眠気が一気に覚めた。
「本当?おめでとう!」
「めでたくなんかないよ!どうすればいいの?」
「慌てないで、愛花。生理になるっていうことは女の子から女性になるってことなんだよ」
「女性に?」
「うん、わかりやすく言えば、生理になれば妊娠することができるの。
といってもそれはずいぶん先の話だけど、身体のシステムはそうなるんだよ」
詳しく知らない話だったので陸は真剣に希美の話を聞いた。
「大体愛花くらいの年から中学くらいまでに女の子はみんななるの。
だから愛花が生理になるのは自然なことなの。
それにね、生理がくると身体もより女性らしくなっていくんだよ」
「そうなんだ…」
「だから心配しないで」
そう言って立ち上がると、希美は何かを持ってきた。
「これがナプキン、CMとかで見たことあるでしょ?
これをショーツに付けるんだけど、
愛花の場合は最初だからこれも付けたほうがいいと思うんだ。
出血の量もわからないしね」
出してきたのはパンツだった。
「これは?」
「サニタリーショーツって言って生理のときに履くものなの。
出血が少なくなってきたらこれだけでもいいんだけど、とりあえずね」
サニタリーショーツは愛花のサイズだった。
つまり希美のものではない。
「これ、どうしたの?」
「ああ、お母さんがね、愛花がもうすぐ生理になるかもしれないからって買ってきたの。で、いないときはよろしくねって」
さすが美智子だった。
その辺のことはしっかりしてから出かけていた。
美智子が娘の陸のことを真剣に考えてくれていたことが嬉しかった。
そして、それを引き継いでくれた希美も嬉しかった。
美智子と希美は母、姉であると同時に同じ女の先輩ということを
今までで一番認識した。
希美はナプキンの使い方を説明し、サニタリーショーツに付けて陸に渡した。
「はい、履いてみて」
「う、うん…」
パンツを履き替えてみたら、ごわごわして違和感があった。
「最初は違和感あるかもしれないけど慣れるから安心して。
それとね、2日目に量が多くなる子が多いから明日は覚悟しておいてね」
更にナプキンは夜用があって、寝るときは夜用にしなければいけないとも
言われた。
覚悟という言葉を聞くと不安になる。
「大丈夫だって、ナプキンと同じで生理自体が慣れだから」
「うん…これっていつまで続くの?」
「大体一週間くらいかな、でも徐々に量が減っていくから」
「一週間も…」
「その間は胸が痛くなったりお腹が痛くなったりするときもあるから。
明日とかは体育ある?」
「ある…」
「そっか、女の先生?」
「うん」
「だったら恥ずかしくないね、ひどい場合は生理っていえば見学になるから」
確かに木場だったら言えないと思ったが、早苗なら安心して言える。
「生理って終わったら次はいつくるの?」
「基本的には1か月周期だよ、人によっては前後するけど。
その周期はちゃんと覚えておいてね。
そうすれば次にいつ来るか予測がつくし。
逆に来ない場合は身体に異変があるかもしれないって教えてくれるから」
希美は更に前兆として胸が張ったりすることなども教えてくれた。
「女の人って大変なんだね…知らなかった」
「そうだよ、でもこれって女性しか体験できないことだから胸張っていいと思う。
男の人じゃわからないでしょ」
まさにその通りだった。
陸は希美の話を聞いて、女性の身体の仕組みを知った。
そして今以上に自分は女というのを自覚していた。
夕方に美智子が帰ってくると、真っ先に部屋へやってきて
「大事なときにいなくてごめんね」と謝ってきたので、「大丈夫だよ」と
笑顔で返事した。
最初ほど不安がなくなってきた証だった。
翌日、希美が言っていたように量がとても多くて体育などできる
状態ではなかった。
それにお腹も痛い。
体育は2時間目なので早めに言っておいたほうがいいと思い、
朝のホームルーム後に早苗のところに行った。
「早苗先生、ちょっといいですか?」
「なんか言いづらそうだね、向こう行こうか」
教室を出て廊下の隅へ移動した。
すぐに何かあると感じ取ってこういう行動にでるところはさすがだ。
「今日の体育、見学したいんです」
「ひょっとして?」
陸は恥ずかしくなって無言で頷いた。
「そっか、いつからなったの?」
「昨日です…」
「じゃあ今日は辛いよね、お腹とか痛くない?」
「ちょっと痛いです」
「痛みがひどくなったら言って、保健室に生理痛の薬あるから」
「はい」
早苗は陸の頭を撫で、「そんなに不安がらなくてもいいからね」と
優しく言ってくれた。
やっぱり早苗はいい先生だ。
1時間目が終わり、女子は着替えを持って移動を始めた。
「愛花、行かないの?」
「うん、今日はちょっと体調悪いから見学なの」
「ホント?大丈夫?」
「大丈夫だよ」
みな実にそう返事して一人で先に校庭へ言った。
見学していて気づいたのは、半月くらい前に一人だけ見学している子が
いたことだ。
おそらくその子も生理だったんだということに気づき、
クラスで一番最初じゃなかったのでどことなくホッとした。
それにしても見学ってつまんない…早く終わらないかな、生理。
次の日になると、昨日より量が減っていたので安心した。
翌日はもっと減り、どんどん少なくなっていった。
それに並行してお腹の痛みや胸の痛みも和らいでいき、
陸の生理は一週間で終わった。
経験することで陸は生理というのがどういうのか理解した。
次は約20日ちょっと後か…。