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second life  作者:
12/112

バレンタインの準備

あれ以来、学校が楽しい。

莉奈・美咲・綾はもちろん、麻衣や裕美、他の子たちとも仲がいい。

学校はいつも笑顔でいられる場所になっていた。

いつも通り4人で帰り、莉奈と2人になってから莉奈が言ってきた。

「もうすぐバレンタインだね」

「あれ、そうだっけ?」

「そうだよ、今度の日曜だよ。愛花って女の子のなのにそういうところ無頓着だよね」

「うっ…そんなことないもん」

過去にバレンタインを貰ったことがあるが、大抵が義理チョコだったので

意識していたことがなかったので、まったく気にしていなかったのだ。

「莉奈は小沢くんにあげるの?」

「そのつもり」

そういって「えへへ」と笑っていた。

「あと愛花でしょ、美咲でしょ、綾でしょ、あとお父さんにも」

「え、私たちやお父さんにも?」

「決まってるじゃん、愛花なに言ってるの」

陸は一人っ子だったから、娘が父親にあげるということを知らなかったし、

女の子同士であげるということも知らなかった。

「そ、そうなんだ…」

「まったく愛花は…で、愛花は誰にあげるの?」

「え、えっと…莉奈たちと…お父さん」

「そうじゃなくて男の子だよ」

「ええっ!」

陸はとっさに隼人が思い浮かび、顔が真っ赤になっていた。

「あ、その反応…好きな人できたでしょ!なんで言ってくれないの!!」

「そんなんじゃ…」

「これは詳しく聞くしかないな、帰ったら愛花のこと行くから」

一度帰ってから莉奈はすぐに来た。

相手が誰なのかどうしても聞きたいらしい。

「で、誰なの?」

「う、うん…」

それでも言わない陸に莉奈は業を煮やして怒り気味で言った。

「私の好きな人教えたじゃん、愛花が友達だから教えたんだよ!

それなのに愛花は教えてくれないんだ…」

「わかったよ!言うけど…誰にも言わない?」

「もちろん、約束するよ」

「田辺くん…」

言った瞬間、今日一番顔が赤くなった。

「ええ、そうだったんだ!てっきり田辺くんの片思いだと思ってた」

どうやら莉奈は隼人が陸のことを好きだというのを知っていたらしい。

「ねぇ、どこがいいの?」

莉奈はすごく楽しそうだ。

子供でも女の子は恋愛トークが大好きだ。

「頼もしい…ところかな」

「それって藤原くんに飛びかかったときのこと?」

「それだけじゃないかな…」

あの日の帰り、隼人が待ってくれていて送ってくれたことを説明し、

それがカッコよかったことを話した。

「なにそれ、田辺くんそんなことしたの?メチャクチャカッコいい」

「でしょ!すごく頼もしかったんだよ」

「ならあげるしかないね、バレンタイン」

「うん…あげてみる」

莉奈が帰ってからバレンタインのことをずっと考えた。

いくらくらいのを買えばいいんだろう?

コンビニとかじゃないほうがいいのかな?

そんなことを考えながら、過去にもらったバレンタインを思い出した。

希美は毎年「はい、陸お兄ちゃんバレンタイン」と言って手作りのチョコを

くれていた。

「手作りのほうがいいの…かな?でも作り方わからない…」

わからないなら聞くしかないが、その相手は毎年手作りチョコをくれた

人物しかいない。

「また冷かされそうで嫌だな…」


その日の夜、希美が帰ってきたので陸は希美の部屋に行った。

「お姉ちゃん、土曜日暇?」

「ん?昼間なら暇だよ」

「チョコ…作りたいんだけど」

「ああ、バレンタインだもんね!誰にあげるのかな?」

ニヤニヤしている、やはり冷かす気だ。

「お父さんと莉奈たちだよ」

「本当にそれだけ?」

「そ、それだけ!」

「ふーん、とりあえずそういうことにしておこう。いいよ、じゃあ作ろう」

あきらかに信じていなかったが、作れることになったので、よしとしておこう。


土曜日、希美と材料を買ってから台所で準備をした。

「まずは湯銭でチョコを溶かすからね」

鍋にお湯を入れて火にかけると、ボールにブロックのチョコを入れ、

ゆっくりと溶かしていく。

あっという間にドロドロのチョコになった。

「次は生クリーム入れるよ」

そこに生クリームを加え、しっかり馴染むように混ぜた。

「はい、型に入れて終わり」

「これだけ??」

「そうだよ、これは生チョコだけどね。

普通のチョコは溶かして型に入れるだけだもん」

こんなに簡単なものだと知らなかったので、呆気にとられてしまったが、

買ってきた型に流し込み、冷蔵庫に入れて冷えるのを待った。

1時間ほどしてから型から取り出し、その上にココアパウダーをまぶせば完成だ。

「できたー!」

あとは袋に詰めるだけだった。

人数分の袋に入れていくが、

一つの袋にだけハートの形をしたチョコを多めに入れておいた。

あとは明日渡すだけだった。

ところが、ここで大事な問題に気がついてしまった。

陸は隼人の家を知らない。

明日は日曜日だから渡すなら家まで渡しに行くしかないのに、

どうすればいいんだろう?

困ったときは莉奈だ。

早速莉奈に電話をしてみると、

「どこだったけなぁ…確か裕美の家の近くだった気がするけど…」

という曖昧な答えしかなかった。

裕美に聞くしかないけど、聞けば隼人のことが好きというのがバレてしまう。

できれば莉奈以外にはバレたくない、かといって闇雲に探して

見つかるはずもない。

結局、裕美を頼るしかなかったので電話をした。

「どうしたの?」

「ちょっと聞きたいことがあって…田辺くんの家ってわかる?」

「ああ、わかるけど何で?」

「誰にも言わない?」

「そう言うなら言わないけど…」

「バレンタイン…渡すから」

「ああ、そういうことかぁ!そっかそっか」

電話越しでも裕美がニヤニヤしているのが伝わってくる。

とても恥ずかしかった。

「でも渡すなら夕方の5時くらいがいいよ、あいつ少年野球やってるから」

「そうなの?」

「うん、日曜はいつも練習してるもん」

考えてみれば陸は隼人のことをよく知らなかった。

もっと知らないといけない、そう思った。

「裕美、詳しいんだね」

「ちょっと、勘違いしないでよ。近所で軽い幼馴染みたいで知ってるだけだから」

「そういう意味で言ってんじゃないよ」

裕美は面食いでジャニーズ系がタイプというのを知っているので

隼人がタイプなはずがない。

背は140ちょっとしかないし、素直じゃない男の子だ。

ジャニーズのような爽やかな感じではない。

「どうする?明日遊んでからそのまま案内しようか?」

明日はみんなで遊んでバレンタインを渡し合う約束をしている。

そのあとに家が逆方向の裕美のほうに行けばバレてしまうので

それだけは避けなければいけなかった。

「ううん、教えてくれるだけで大丈夫!」

「そう?なら私の家わかるでしょ、この前の通りを進んで…」

裕美がいうことをメモに取り、なんとなく場所が把握できた。

しかもマンションというので近くまで行けばわかるだろう。

「ありがとう、裕美」

「うん、じゃあ明日ね」

これで今度こそ明日渡すだけだ、頑張れ私!

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