人生の分岐点
すいません、この話の冒頭の5行は前の話の最後に入るはずだったんですけど
入れ忘れてしまいました。。。
申し訳ありませんが、こっちに付けさせてもらいます。
こうやって気持ちの切り替えができるようになったので、
逆に今まで以上に教師としてしっかりとやれるようになっていた。
人間、何事にもオンとオフは必要ということを知り、
また少し社会人として成長していた。
そして、教師になって3年半が過ぎて行った。
「きりーつ、礼。さようなら」
「はい、さようなら。みんな気をつけて帰ってね」
クラスの生徒たちが帰るのを見送ってから職員室へ戻った。
やることをやって、急いで帰り支度をしていた。
「お、今日は早いんだね」
「ちょっと、約束があって」
「デート?」
「ええ、まあ…」
「いいことだ。楽しんできなさい」
「ありがとうございます。剛田先生」
愛花は学校を出て、待ち合わせのレストランに向かった。
中に入ると、祥吾が席に座ってた。
「ゴメン、待った?」
「いや、そんなに待ってないよ」
祥吾は仕事帰りだったので、スーツ姿だ。
もうこの格好も見慣れている。
ワインで乾杯、こういうことを普通にしていると、
自分が大人になったというのを実感する。
「愛花、誕生日おめでとう」
そう、この日は26歳の誕生日、もう年齢的にも立派な大人だった。
「ありがとう、もう四捨五入すると30だよ」
「せっかくの誕生日にそういうこと言わない。30まであと4年もあるんだから」
「はーい」
愛花は密かに期待していることがあった。
祥吾と付き合って5年、気がつくとそれだけの年月が過ぎていた。
一年前、仁菜と春樹が結婚した。
春樹が地元の公務員なので、仁菜は結局戻ってきての結婚だった。
そして、莉奈も来月結婚式を挙げる。
更に驚いたのは、一生独身と思っていた佳祐が結婚することだった。
46歳の春、そういって浮かれていたが、これには心から祝福することができた。
そうなると、次は自分の番だ。
祥吾がいつプロポーズをしてくれるのか、ずっと待っていて、
今日がその日ではないかと予想していた。
「そうだ、誕生日プレゼント渡さないと」
きた!婚約指輪だ!!
ところが出てきたものは、大きな袋だった。
あれ…違う…
「開けてみて」
「う、うん…」
中身はまさかのぬいぐるみだった。
しかも魚の形をしている。
なぜこれ?まったく嬉しくない…
子供じゃないのに、しかも…よりによって魚って…
「あまり嬉しそうじゃないね」
あまりにガッカリしたものだったので、顔に出てしまっていた。
「え…そ、そんなことないよ。ありがとう」
とは言ったものの、期待していたものとはかけ離れていたので、
気が抜けてしまった。
プロポーズしてくれなかったか…祥吾は結婚したくないのかな?
やはりショックは大きかった。
「そのぬいぐるみさ、ヒレの部分にファスナーがあるんだよね」
「へー、そうなんだ…」
何気なくヒレを触ってみると、四角い箱のようなものが入っている感触があった。
「まさか?」
祥吾を見るとニコニコしている。
愛花は慌ててファスナーを開けて手を入れると、そこには間違いなく箱があった。
取り出して箱を開けると、ずっと待ち望んでいたものがそこにあった。
「結婚しよう、愛花」
「祥吾…」
ずっと待っていた言葉…いざ言われると、嬉しすぎて涙がこぼれてしまった。
「うん…喜んで」
すると、まわりから拍手が起こった。
そして、ウエイターがシャンパンを注いでいた。
「ご婚約おめでとうございます」
ずっと祥吾がニコニコしている。
どうやら、事前にレストランにプロポーズすることを伝えてあったらしい。
「魚のぬいぐるみ探すの大変だったんだよ」
それもそうだろう。
こんなぬいぐるみは、愛花も見たことがない。
「でもさ、これで釣った超大物は逃げないでしょ」
「うん、永遠に祥吾に捕まえられたからね」
愛花は祥吾を未来の旦那を見つめてから言った。
「幸せになろうね、わたしたち」
「もちろん!」
愛花は家に帰り、リビングに向かった。
あれだけ嬉しかったのに、家に着くと実感が湧かなくて放心状態になっていた。
リビングに行くとそこには、いつも通り彰と美智子がいる。
「おかえり、今日は誕生日だったよね。おめでとう」
「ありがとう…お母さん」
「どうしたんだ?ボーっとして」
「お父さん…お母さん…プロポーズ…されたの」
「え?」
彰と美智子は声を合わせて驚いた。
「祥吾にプロポーズされた…」
いざ報告すると、実感が湧いてきて嬉しくなった。
「そう!プロポーズされたの!!」
最初は驚いていた彰も美智子も笑顔になっていた。
「そうか、よかったな!」
「愛花もとうとう結婚するのね、おめでとう!」
「ありがとう!お父さん、お母さん」
お礼を言うと同時に、今までの思い出が蘇ってきた。
それは彰と美智子、家族の思い出だ。
事情が事情というのもあったが、2人は愛花を本当の子供のように育ててくれた。
今じゃ立派な母親になった希美と4人で再出発したことは、今でもハッキリと覚えている。
美智子と希美には、女として必要なことをたくさん教えてもらった。
彰は時に、男の感情で悩んでいるときに、男の立場で意見を言ってくれた。
愛花はこの家族が好きだった。
実の両親と同じ…それ以上に大好きだった。
感極まって、愛花は涙を流していた。
「こんなめでたい日に泣かないの」
「だって…だって…お父さん、お母さん…今までありがとう…
わたし、この家でお父さんとお母さんに育ててもらって…幸せでした」
この言葉を聞いて、美智子も涙ぐんでいた。
「俺も美智子も、その言葉が聞けて嬉しいよ。
でもな愛花、それは出て行くときにいう言葉だぞ。
それまではこの家にいるんだろ?だったらその日がくるまではいつも通りだ」
「そうだよね…お父さん、お母さん!」
愛花は涙を拭って笑った。
それでも、家を出る日はそう遠くないこともわかっていた。
そして一か月後、2人は籍を入れて夫婦となった。
去年の9月から投稿を始めましたが、次で最終回となります。
今夜か明日の深夜にアップしますので、最後までよろしくお願いします。