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second life  作者:
11/112

本心を打ち明けて

「本当に佐久間さんをいじめていたの?」

「いじめてなんか…ちょっとふざけただけだよ」

そう答える2人に対し「佐久間さんはどうなの?」と聞いてきた。

一瞬、いじめられてないと言おうか迷った。

小学生にいじめられたなど言いたくない。

そう思ったとき、昨日の美智子の言葉が蘇ってきた。

そうだ、この考えがみんなを見下しちゃうんだ…。

みんな私と同い年なんだ。

自分に言い聞かせてから「いじめられてました」と素直に告白した。

どんなことをされたのか聞かれたので、嫌味から始まり、

靴や体育着を隠されたこと、

毎日机に落書きされたこと、汚いとクラスのほとんどの子に言われていたことを

全部話すと、早苗は涙を浮かべていた。

「辛かったでしょ…かわいそうに」

そう言ってから早苗は厳しい目つきで麻衣と裕美を見て

「なんでそんなことしたの?」と問い詰めた。

「だって…ムカつくんだもん。勉強できるからって偉そうな態度とって」

「絶対に私たちのこと見下してたもん」

やはりクラスのみんなにはそう映っていたのだ。

陸は自分の態度を後悔した。

「だからっていじめていいはずないでしょ!やられたほうの気持ちを考えなさい」

早苗は陸の肩を持つ。

当たり前だ、大人はいじめているほうが必ず悪者だ。

「見下さなかったら…仲良くしてくれる?」

「え?」

陸は麻衣たちにも本心で話すことにした。

もう見下したりしない、みんな同い年の同級生だ。

「私の態度がよくなかった…ごめんなさい」

いじめられている方が謝るのはおかしな気もするが、

陸は自分の態度を悔いて謝った。

「本当はみんなと仲良くなりたかったの、でもどうしていいかわかんなくて…」

陸は涙を流していた。

それを見て麻衣たちは陸が本気で言っているということを理解した。

「私たちもごめん…佐久間さんがそんな風に思ってると思わなかった。

私たちと仲良くなんかなりたくないって思ってると思ってた」

「そんなことないよ!でも素直になれなくて…」

どうやら解決したようだと早苗は思った。

しかし、教師としてこれで終わらせるわけにはいかない。

とりあえず校長に説明するために一度部屋を出た。

それを見てから陸は立ち上がり、2人のところへ行った。

「私と…仲良くしてくれる?」

「佐久間さんが今までみたいな態度を取らなければ…」

「取らないよ!約束する!」

「だったら…いいよ」

そう言ってから2人は立ち上がり頭を下げた。

「今まで本当にごめんね」

「ううん、大丈夫だよ。私の方こそ…」

プライドを捨て、素直になったことで陸はようやく麻衣たちと

友達になることができた。

「へー、佐久間さんも漫画読むんだ」

「読むよ、「素敵なパラダイス」とか大好きだもん」

「あ、私も好き!主人公の顔があまりカッコよくないのにいいんだよね」

「そうそう!」

一度和解してしまうと子供だからか、すぐに仲良くなっていた。

「ねぇ…私もマイマイって呼んじゃダメかな?」

「全然いいよ、私も莉奈たちみたいに愛花って呼ぶし。ね」

「うん、私のことも裕美でいいから」

まるでいじめられていたとは思えないくらい、

仲良くなって会話が盛り上がっていたところに早苗が木場と一緒に戻ってきた。

「田辺と藤原のほうは解決した、あとはお前たちだ。

一応親に連絡しようと思うんだが」

麻衣と裕美は不安な顔になった。

木場を制したのは陸だった。

「先生、私たちはもう大丈夫です。だから大ごとにしないでください」

「愛花…」

「しかしなぁ…」

木場は困ったような顔をしている。

立場上そういうわけにいかないのだ。

「だって私たちもう友達だから、ね」

「うん、もしまだ愛花のことをいじめるのがいたら私たち怒るから」

一番いじめていた張本人たちが言うのもおかしな気がするが、

本気で言っているのは伝わった。

「木場先生、今回はこの子たちの言葉を信じましょう。きっと大丈夫ですよ」

「大丈夫って…何を根拠に?」

「同じ女としての感です」

同じ女、そう今の自分は早苗や麻衣、裕美と同じ女なんだ。

わかってくれた早苗に感謝した。

「わかった、校長には説明しておきます。

その代わり、今度こんなことしたら本当に承知しないぞ!」

「はーい」

「じゃあ帰りなさい、時間が遅くなったから気をつけて帰るんだぞ」

3人は仲良く応接室を出て下駄箱に向かった。

時計を見ると4時半を過ぎていて、外は薄暗くなってる。

「愛花、本当にごめんね」

「もういいって、私はマイマイと裕美と仲良くなれて嬉しいんだから」

「ありがとう、愛花」

麻衣と裕美は陸の家と真逆なので校門を出て別れた。

明日からは楽しい学校になりそうだ。

そんな期待をしながら歩くと隼人が立っていた。

「田辺くん…」

隼人がケンカをしたのは陸のためだった。

それをわかっていたのでお礼を言った。

「ありがとう、私のために」

「誰がお前のためなんかにケンカするかよ、ムカついただけだ」

そう言って目を逸らす。

素直じゃないところが可愛くて思わず笑ってしまった。

「帰るんだろう、暗いから…送ってやるよ」

隼人は陸を送るために待っていたのだった。

その態度を見たとき隼人がたくましく見え、陸はドキッとした。

そして素直に言った。

「ありがとう、よろしくね」

「お、おう」

薄暗くなっても安心だ。

私には小さいけど頼りがいがあるナイトが付いている。

歩いていると、隼人は年末に会ったときのことを聞いてきた。

「佐久間って学校じゃああいう恰好しないの?」

「うん、あれはお姉ちゃんの趣味だから」

「そっか、結構似合っていて可愛かったよ」

「え?」

「な、なんでもねーよ」

隼人の顔が赤くなっていた。

言ったことが恥ずかしかったのだろう。

だが可愛かったと言われた陸も顔が赤くなっていた。

このあと無言のまま歩き、陸の家に着いた。

「じゃあな」

そう言って隼人は走って行った。

陸はその後ろ姿が見えなくなるまでずっと隼人を目で追っていた。

このとき、陸は気づいた。

あ、私…田辺くんのこと好きかも…。

でも小学生の、ましてや男の子に恋するなんて…と思ったが

今の自分も小学生、そして女の子、おかしくないと思い直して家に入った。

美智子が心配そうにどうだったか聞いてきたので、

解決したことを話すと安心して喜んでいた。

その直後、莉奈が突然家にきた。

「どうしたの?」

「愛花、ごめんね!助けてあげなくて…でももう決めた!

これからは絶対に愛花を助けるから!だから許して」

「ありがとう、でももう解決したから安心して。

マイマイと裕美と友達になったし」

「そうなの?」

「うん、だから明日から今まで通り仲良くしてね」

「もちろん!じゃあ明日一緒に行こうね」

莉奈とも和解し、次の日、学校へ行くとみんなが謝ってきたので

一安心、もう悩みも心配もなくなった。


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