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second life  作者:
107/112

去るもの、戻るもの

「温泉ってホント気持ちいいよねぇ」

「こうやってのんびり浸かれるのって最高だもんね」

2月中旬、愛花は卒業旅行という名目で、大学は違うが仁菜と温泉に来ていた。

「あーあ、こうして仁菜が近くにいるのも、あと一ヶ月ちょっとか…なんか寂しくなるね」

「何言ってるの、莉奈ちゃんが戻ってくるじゃん!それに愛しの祥吾くんも」

「それはそれ、これはこれだよ。だって高校からずっと一緒だったもん」

「そうだけどね…でも向こうで頑張るって決めたから!」

それでも寂しいものは寂しい。

でもしんみりするために、温泉に来たんじゃない。

仁菜と楽しむために来たんだ。

愛花は気持ちを切り替えた。

「そうだね、向こうでも頑張ってね!」

「もちろん!あっちで永久就職もするつもりだしね」

「そうなの!?」

そこまで考えていたことにビックリ。

「だって、必然的にそうなるでしょ」

「ま、まあ…そうかもしれないけど…」

愛花は密かに、春樹とヨリを戻してほしいと願っていたが、

この言葉で仁菜にその意志がないことが明確になってしまった。

「春樹くんは…本当にいいの?」

「春樹とは、もう終わったからいいの」

この言い方に違和感があった。

春樹の話を終わらせようとしているように聞こえたのだ。

本当は今でも好きなのでは?

愛花は思い切って攻めてみることにした。

「仁菜、後悔しない選択をしないとダメだよ!」

「後悔もなにも…」

「無理してる。仁菜と春樹くんは、わたしと隼人のときと違って、

今でもお互い好きなのがわかるもん」

「愛花…」

「今でも連絡を取り合ってるんでしょ?上京する前にもう一度2人で話なよ。

わたしは仁菜と春樹くんが一緒にいるのが一番好きなんだから」

仁菜は黙って考え込んでしまった。

考えるということは、やはり仁菜は今でも春樹のことが好きなのだ。

「遠距離になるよ…」

「そんなことで揺らぐ2人じゃないでしょ!いつから付き合ってるの?高1からじゃん!

春樹くんみたいな人を手放すなんてバカだよ」

仁菜は黙ったまま答えない。

けど、あとひと押しだと思った。

「素直になりなよ、仁菜」

「わかった…でも春樹、もう一度付き合ってくれるかな?」

「決まってるじゃん!春樹くんだって仁菜が戻ってくるのを待ってるよ」

「なんでそう思う?」

「うっ…」

根拠は何もない。

ただ、間違いなくそんな気がするだけだ。

愛花は苦し紛れに言った。

「女の…勘…」

「それ全然ダメじゃん!なにそのオチ。まったく…真面目に言っているのかと思えば」

「真面目は真面目だよ!根拠がないけど…」

「はいはい、もう一度春樹と話してみるよ」

そういって仁菜は笑顔になっていた。

これも根拠はないが、2人は寄りを戻す。

愛花はそう確信し、半月後にそれが現実となった。


無事大学を卒業して、今日は千夏が旅立つ日だった。

「頑張ってね、千夏先生」

「愛花先生もね」

そういって2人で笑いあっていた。

「また会おうね」

「もちろん!愛花は大事な友達だし…同僚だもん!」

千夏が乗った電車が走り出し、愛花は見えなくなるまで手を振っていた。

昨日は仁菜を見送った。

こうやってみんなが、それぞれの人生に向かって旅立っていく。

しかし、旅立つばかりではない。


「ただいま」

「おかえり、莉奈」

莉奈が戻ってきた。

仁菜と千夏がいなくなった部分の穴を埋めてくれた。

一番の親友が近くにいるのは心強い。

そしてもう一人。

「祥吾、迎えに来たよ」

「サンキュー、これで今までよりも気軽に会えるね」

「うん!」

地元に就職した祥吾も戻ってきた。

少し様変わりしたが、愛花には、そのときどきで大事な人が側にいる。

新たな気持ちで前を向いた。

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