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second life  作者:
105/112

田中家に

愛花は久々に祥吾と釣りに来ていた。

田中と会う釣り場だ。

会えるか期待していたら、朝の7時を過ぎたあたりでひょっこりと現れた。

「田中さん!」

「おお、愛花ちゃんに祥吾くん」

前回ので、祥吾も田中と仲良くなっていたので、3人で釣りを楽しむ。

田中はほぼ毎日きているだけあって、やはりうまい。

愛花たちが釣れないなか、田中だけはコンスタンスに魚を釣り上げていた。

「田中さんばっかり…」

「ははは、愛花ちゃん、釣りは焦ったらダメなんだよ」

「知ってます。昔父さんに言われました」

田中は「そうか」と言って笑っていた。

修にこの言葉を教えたのは、田中かもしれない。

そんな気がした。

祥吾と田中が会話をしながら釣りをしている。

愛花にとっては、とても微笑ましい光景だ。

そのとき、愛花の竿に当たりがきた。

「あ、大きい…」

「慌てるな、ゆっくりリールを巻くんだ」

「もっと竿を寝かせて!」

祥吾と田中がアドバイスを送る。

わかってはいるが、予想以上に引きが強い。

愛花の力ではかなり厳しかった。

そこに祥吾の手が加わる。

「頑張れ、愛花!」

祥吾と一緒にリールを巻いて、なんとか釣り上げることができた。

「釣れたー!」

魚は50cm近くある大物だった。

「こりゃ、クロダイだな。ここで釣れるのは珍しいんだぞ」

田中が驚いているので、本当に珍しいというのがわかる。

愛花は、釣れた魚よりも、祥吾と2人で釣ったほうが喜びは上だった。

「しかし、これはさばくのが大変だな。2人とも鯛はさばけんだろ?」

ごもっともだった。

鯛は骨が多いので、さばくのは大変だと聞いたことがある。

せっかく、大きいのを釣っても食べることができないのでは意味がない。

そんなことを思っていたら、先に祥吾が言い出した。

「田中さん、これよかったらもらってくれませんか?」

祥吾が同じ考えをもっていたので、愛花は思わず祥吾の顔を見てしまった。

「いいよな?」

「うん、わたしも同じ意見だったから」

そんな田中は頭をかいている。

「いやぁ、気持ちは嬉しいんだけど申し訳ないよ」

「そんなことないです。持って帰っても調理できないんですから」

「うーん…」

すると、田中が手を叩いた。

何か閃いたらしい。

「2人ともうちに来るか?そうすれば、俺の女房が刺身にしてくれるからよ」

「いや、逆に悪いですよ」

「いいから気にするなって。それにどうせ食うなら大勢のほうがいい!」

愛花と祥吾は、結局田中の家に行くことになった。


田中の家は、普通の一軒家だった。

住んでいるのは、田中と奥さんの2人だけで、子供たちは結婚して出て行ったらしい。

「おい、お客さん連れてきたぞ」

田中の奥さんが玄関まで出てくる。

「あら、ずいぶん若いお客さんね」

奥さんはニコニコしていた。

「前に話したろ、若いカップルと知り合ったって」

「ああ!」

どうやら田中は以前に2人のことを話していたらしい。

「散らかっているけど、どうぞ」

田中の奥さんは、とても優しそうな人だった。

お言葉に甘えて、2人は家に上がらせてもらった。

「ずいぶん大きいの釣ったのね」

「愛花ちゃんが釣ったんだ。刺身にしてくれ」

「はいはい」

奥さんがクロダイを持って台所に向かうと、愛花は自然にその後を追っていた。

「あの…さばき方教えてもらってもいいですか?」

「ええ、いいわよ」

愛花は奥さんと一緒に話をしながらクロダイをさばいた。

「若いのにこういうのを覚えようだなんて、偉いわね」

「いえ、せっかく釣れたのに料理できないのもって思ったので」

「彼氏のために?」

「そ、そんなんじゃないですよ!」

「ふふふ、若いっていいわね」

いきなりそんなことを言われたので、愛花は顔が赤くなっていた。

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