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second life  作者:
104/112

試験も受かり

季節は秋になっていた。

愛花は無事に試験に受かり、新年度からは念願だった小学校の教員になる。

赴任先はわからないが、地元の市なので、実家から通うこともできる。

結婚なんてまだまだ先のことで考えてもいないし、できるかもわからないが、

ギリギリまで彰と美智子と暮らすことが親孝行と思っているので、理想的な結果だった。

「どうする愛花、来年度からわたしたち教師だよ」

「ビックリだよね、先生って呼ばれるんだから」

千夏も見事に試験に受かっていた。

ただ、千夏も愛花同様に地元の試験を受けたので、

当然ながら大学を卒業したら地元に帰ってしまう。

今までのように遊んだりできなくなるのは、残念だった。

離れるのは他にもいる。

仁菜も上京して就職することが決まっていた。

春樹は地元の市の公務員なので、仁菜とは離ればなれになる。

よりを戻すと思っていたが、離れてしまってはそれも難しいだろう。

戻してもらいたかっただけに残念だったが、

こればかりは本人同士の問題なので仕方なかった。

しかし、悲しいことばかりでもない。

莉奈は地元で就職するので、4月からはまた近所になる。

今までのように気軽に会うことが出来る。

そして、何より嬉しいのが祥吾も地元で就職するということだ。

すでに内定ももらっているので、安心していられる。

高校を卒業するとき以上に、みんなが新たな人生…

社会人という人生に向かって進んでいた。


「そうか、佐久間も教師か。俺と同僚だな」

「違うもん、佳祐は中学でしょ、わたしは小学校だもん」

「教師にはかわりないだろ」

「そうかもしれないけどさぁ」

試験に受かったことを報告するために、愛花は久々に佳祐と飲みにきていた。

相変わらずの独身で、もう42歳になる。

愛花も陸として生きていれば、立派なおじさんになっている年齢だ。

「佳祐もう結婚諦めたんでしょ」

「余計なお世話だ。これでもな、結婚相談所とかに行ってるんだぞ」

「それ、誇らしげに言うことじゃないよ。バカ」

「うるせーな!お前だってそうなるかもしれないんだぞ!」

「わたしは大丈夫、祥吾がいるもん」

佳祐は焼酎を一口飲んでから言ってきた。

「ったく、まさか小林と付き合ってるなんて意外だよな」

「わたしもそう思う…最初はそんなつもりなかったし。

でもね、祥吾ってすごくいい男なんだよ!一緒にいて楽しいし安心できるし」

愛花のノロケ話を聞かされ、佳祐は「はいはい」と聞き流していた。

「そうだ、祥吾こっちで就職するから、4月からは馴れ馴れしくしないでよ!

誤解されたら困るし」

「それはお前だろ、俺は佐久間って呼んでるのに、お前が佳祐って呼んでるんじゃないか」

「あ、そっか」

愛花はてへへと笑っていた。

まったく…陸の面影が微塵も残ってないじゃないか。

立派な女になりやがって…

佳祐は思わずニヤリとしてしまった。

「何笑ってるの?変なこと考えてるんでしょ」

「お前な…」

愛花はケラケラ笑っていた。

「あーいか」

振り向くと莉奈がいた。

「莉奈!どうしたの?」

「就職の関係で戻ってきてたの。

そしたら愛花のお母さんに偶然会って、佐竹先生と飲みに行ってるって聞いたから」

「なんだ、来るなら言ってくれればいいのに」

「突然行って驚かせようと思ったの。先生、久しぶり」

「おう、山崎。元気にやってるか?」

「まあね、就職も決まったし」

「らしいな、教え子がこうやって無事に大人になっていく姿が見られるなんて、

教師冥利に尽きるよ」

なぜか佳祐がしっかりした教師に見えることに、とても違和感があった。

からかってやるか!

「莉奈、気をつけたほうがいいよ。佳祐の言っている大人ってエッチな意味だから」

「佐久間!お前変なこというな!山崎、誤解だからな、俺はそういう意味じゃなくて」

再び愛花はケラケラ笑っていた。

そっか、愛花と先生って2人だとこういう感じなんだ。

莉奈は愛花と佳祐が2人きりの状態を初めてみたので、

ちょっと新鮮な気がしたのと同時に、自分が見たことのない愛花を見てしまい、

複雑な気分だった。


「じゃあ気をつけて帰れよ。特に」

「事故には気をつけろね、わかってるから。じゃーね佳祐」

「先生、またね」

「ああ」

佳祐は手を振ってから、愛花たちとは逆方向に歩き出した。

「愛花って、先生と2人だとあんな感じなんだね」

「んー?だってからかうと面白いんだもん」

「なんか普段の愛花と違う感じがした」

「莉奈…」

「別に怒ってるとかじゃないよ、ただ…なんか複雑な気がしただけ…」

愛花は莉奈の頬を抓った。

「痛い…何するの、愛花」

「莉奈がくだらないこと言ったから、お仕置き」

手を離してから、莉奈を見た。

「佳祐は男だから、ああやってからかうの。それにバカだしね。

莉奈は違うでしょ、女だしバカじゃないもん。だからからかわない、それだけだよ。

わたしだってちゃんと相手を使い分けるんだからね」

そうだよね…わたしと先生じゃ愛花の見方は違うんだもん。

接し方が違って当然だ。

なにバカな嫉妬してたんだろ…

「愛花…変なこと言ってゴメンね」

「今日泊りに来るなら許す。莉奈といろいろ語りたい気分なの」

「行く行く!泊まるのなんてすごい久しぶりだもん」

久々に中学生に戻ったような気分で、愛花は莉奈と明け方までトークで盛り上がった。

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