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second life  作者:
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教育実習

夏が終わり、季節は秋になった。

「祥吾、今日は何食べたい?」

「アジフライかな」

「えー、揚げ物?面倒くさいな」

「だって聞いたの愛花じゃん。なんでもいいよ、愛花が作ったものなら」

「しょうがない、アジフライを作ろう。買い物行くよ!」

祥吾は地元から電車で2時間ほどかかる東京の大学に通っているので、一人暮らしをしている。

愛花は月はじめの金曜から日曜まで、毎月泊りに行くようになっていた。

ここにいると、新婚のような気分になるので楽しかった。

手を繋いで、近所のスーパーで買い物をする。

泊まりにきたときのパターンだ。

食材を買い、愛花が料理を作り、それを一緒に食べる。

食べ終わって、テレビを見てダラダラする。

そして一緒の布団で眠りに着く。

なんでもない平凡なことが、ある意味一番幸せなのかもしれない。

祥吾がスヤスヤと眠っている。

無性にキスをしたくなったので、眠っている祥吾にキスをしてから

愛花も眠りに着いた。


平穏な日々というのは過ぎるのが早い。

愛花は大学4年生になった。

祥吾とも順調で、友達とも千夏をはじめ、みんなと今まで通り仲良く過ごしている。

そして6月、愛花にとって大事な時期がやってきた。

「教育実習の佐久間愛花です。よろしくお願いします」

職員室で挨拶をすると、愛花が担当する4年3組の担任、

佐川智明が「頑張ってください」と言ってくれた。

教室へ向かう途中、佐川が話しかけてきた。

「懐かしいんじゃない?」

「そんな余裕ないですよ、すごく緊張しているんですから…」

愛花は実習先を母校の小学校に選んだ。

このほうが話がスムーズだからだ。

といっても、当時の知っている教師は誰もいない。

校舎の構造は知っていても、緊張のせいか、まるで初めてきた学校のような気分だった。

ところが、教室の前までくると、当時の記憶が蘇ってきた。

4年3組…わたしがこの学校にきたときのクラス…

って、思いでに浸っている場合じゃない!

教室に入ると、クラスの生徒たちみんなが愛花を見ていた。

「はい、今日から教育実習としてみんなと授業をする佐久間先生です」

「佐久間愛花です、みなさん、よろしくお願いします」

緊張しながら挨拶すると、元気な声で「よろしくお願いします」と返ってきた。

この返事で、緊張が少し和らいだ気がした。

初日は、おもに見学だけだった。

佐川がどのように授業をしているのか、ホームルームの進行や給食、掃除など

実際に見るのは、とても勉強になった。

しかし、教育実習は学校が終わってからも、やることが盛りだくさんだ。

今は職員室で愛花が授業をやる予定の、国語の学習指導案を作成している。

「順調?」

「は、はい」

「そんなに気を張らないで、リラックスしないといい授業ができないよ」

佐川は笑顔を浮かべているが、愛花にそんな余裕はなかった。


「こんなに疲れると思わなかった…」

愛花は家に着くなり、ベッドに倒れ込んだ。

すると、祥吾から電話がかかってきた。

「教育実習はどうだった?」

「すごい緊張したよ、やることもたくさんあるし」

「そうなのか、でも念願の教師になるために避けて通れないんだ、頑張れ!」

「ありがと、頑張るよぉ…」

そうだね、頑張るしかない!

電話を切り、起き上って着替えてからリビングに降りて行った。

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