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second life  作者:
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終わりと始まり

ずっと書き溜めていた作品を投稿することにしました。

まだ完成していませんが、4分の3は書きあがっています。

この後の展開も決まっているので、間違いなく完結します。

他の作品に関しては未完結ばかりですいません…。


さて、今回の作品ですが、いつも通り性転換ものです。

ただ、今まで書いていたものは、薬で女になったとか

突然女になったという、ありきたり+非現実的なものばかりでした。

今までにないパターン、それも現実的にするにはどうすればいいか、

この作品はそこからスタートしました。

そして、女になってしまった主人公が成長して

大人の女性になる姿を描きたいとも思っていたので構成はかなり練りました。

その結果、ここのサイトはライトノベル系がほとんどですが、

あえてリアリティーを重視した作品になりました。

ハッキリ言って、すごく長いストーリーになっていますが、

個人的には一番満足している内容です。

ある意味、集大成みたいな感じです。

そんな作品なので、一人でも楽しんでくれる人がいると嬉しいです。

いつも通りちょいちょいアップしていくので、

最後までお付き合いください。


よろしくお願いします。


2004年、7月27日。

太陽が照り付け、今日は特に気温が高い。

セミの鳴き声が余計に蒸し暑さを感じさせる。

受験を控えた高校3年生の田口陸は勉強のために図書館へ向かう支度をしていた。

夏休みは毎日図書館で勉強すると決めていたのだ。

そのとき携帯電話が鳴ったので見てみると、親友の佳祐からだった。

夏休みは真面目に勉強するから遊ばないと宣言しておいたのに、あのバカ。

陸は携帯電話を取らず、参考書を鞄に入れ、玄関で靴を履いた。

「じゃあ行ってくる」

「気をつけてね」

奥から母親の声が聞こえた。

ドアを開けると午前だというのにむわっとした暑さに襲われる。

一瞬ためらったが、ドアを閉めて歩き出した。

「陸お兄ちゃん」

振り向くと隣に住んでいる佐久間希美だった。

希美は小学5年生の女の子で、希美が生まれたときから隣だったので

妹のように可愛がり、希美も陸を兄のように慕っていた。

隣だけあって佐久間家とは家族ぐるみで仲もいい。

Tシャツにショートパンツというラフな格好にプール用のバッグを持っている。

「プール?」

「うん、学校のね。お兄ちゃんは?」

「図書館で勉強だよ。プール気持ちよさそうでいいな」

「でしょ」

希美はニコニコしている。

プールが楽しみなんだなと思った。

小学校と図書館は距離が近いので途中まで一緒に歩いて行くことになった。

希美の歩くスピードに合わせているのでいつもより時間がかかる。

学校のことなどたわいもない話をしながら5分ほど歩いたときだった。

青信号を歩いていると、真ん中あたりで点滅しだした。

「急ごう」

陸と希美が小走りで進むと、猛スピードでトラックが左折してきた。

「危ない!」

陸は全力で希美を突き飛ばした。

そして…

キキーッドン!

全身がバラバラになるような衝撃が走り、陸の記憶は途絶えた。


陸は釣りをしていた。

隣には父の修と母の紀美子もいる。

「なかなか釣れないね、お父さん」

「いいか陸、釣りっていうのは焦ったらいけないんだ。

じっと待っていれば必ず釣れるからな」

「はーい…」

そうはいっても釣れないと面白くない。

お腹も空いてきたので、紀美子が作ったおにぎりを食べた。

「お母さん、おいしい!」

「ありがとう、陸が好きな鮭にしたからね」

紀美子はニコニコしていた。

釣りを再開すると、手に重みを感じた。

「お父さんきた!」

「陸、慌てずにリールを巻くんだぞ」

「うん!」

リールを巻くと水面に魚が見えてきた。

あと少しだ。



目を開けると天井が見える。

夢だったらしい。

懐かしいな…

小学生の頃に家族で釣りに出かけたときの夢だった。

それにしても…ここはどこだ?

あたりを見まわすと、雰囲気的に病院のベッドの上にいるようだ。

「先生、目を覚ましました」

「うん、すぐに呼んでくれ」

一人が慌ただしく出て行った。

先生らしき人が顔を覗き込むようにして話しかけてきた。

「私の声は聞こえてるね?」

声を出そうとしたがうまく出なかったので、とりあえず頷いた。

「うん、じゃあこの指は見える?」

今度は指を1本立てたので、また頷いた。

「よし、大丈夫そうだ。ちょっとそのままにしててね」

先生らしき人も部屋を出てき、陸だけになった。

頭がぼーっとし、記憶も曖昧だ。

俺、なんでこんなところにいるんだ…?

急にドタドタと走る音が近づいてきて、横を見ると陸より年上の女性が駆け寄ってきた。

「陸お兄ちゃん!?」

知らない女性だったので思わず「誰?」と言ってしまったが、

声が擦れてうまく言えていなかった。

「私、希美だよ!」

希美…記憶を手繰らせると隣に住んでいた小学5年生の希美が思い浮かんだが、

目の前にいる女性とは年齢が合わない。

「信じられないかもしれないけど、あの事故から11年経ったの」

事故…そうだ!俺はトラックに撥ねられて…

陸は事故に遭ったことを思い出した。

「11年も…」

11年も寝たりきだったのかと思った。

しかし生きていたというのは幸運だ。

久々に発する声だからか、擦れているからか、自分が知っている声に聞こえなかった。

なんというか、子供のような声に聞こえる。

そこへ再び先生らしき男がやってきた。

「えー、田中陸君。君は高校3年生だったということで大人と思って話をするから

パニックにならないで聞いてほしい。

君がトラックに撥ねられたのは覚えてるね?」

陸が無言で頷くと話が続いた。

「手のほどこしようがなかった、つまり君は助からなかった」

「え?じゃあ今生きているのは…」

「君は脳だけが生きていたんだ、

わかりやすく言えば器があれば生き返るという状態になる。

その器となる身体を君の細胞から作り上げることを始めることになった。

遺伝子工学の第一人者が全面協力してね、

しかもこれは政府公認の一大プロジェクトとしてスタートされた。

もちろん表には一切公表していないがね」

「それが成功したってことですか?」

「わかりやすく言えばそうなる。

しかし、運が良かった。細胞もほぼ死んでいたんだが、

奇跡的に無傷の細胞が手に入ったんだ。

恐らく子供の身体の大きさでは手に入らなかった、

つまり希美さんが撥ねられていたら、同じ状態だったとしても

こうやって生き返ることはできなかっただろう。

細胞は順調に胎児となった。

ところが、それには一つ大きな問題があってね、

胎児は最初、一つの性別しかないのは知っているかい?」

初めて聞いたので陸は横に首を振った。

「胎児は最初、女なんだ。そして母体にいる過程でYの染色体が働けばXYで男、

働かなければXXの染色体の女として生まれてくる。

ところが人工的に人を育てるとYの染色体を働かせることが不可能だった。

つまり君は生き返ったが男として生き返らせることは不可能だった」

「じゃあ俺は…」

「そう、女の子だ」

「嘘だ!」

大きな声で叫んだとき、それが女の子の声だということを悟った。

さっきからあった声の違和感は間違いではなかったのだ。

「落ち着いて、陸お兄ちゃん」

希美が心配そうに言ってきたが、落ち着いてなどいられるはずがない。

せっかく生き返ることができたのにそれが女だなんて考えたくもない。

だが、ショッキングな話はまだ続いた。

「そして君の身体は10歳の女の子だ」

「え?」

だるくてあまり動かない手を頑張って動かして布団から出すと、

そこには可愛らしい手が視界に飛び込んできた。

「そんな…」

「君の細胞から作った身体は1年で完成した。

そこから脳を移植したんだが、なかなか身体と意識が繋がらなくて

その間、身体は正常に成長を続けて10年、今日やっと目を覚ましたんだ。

女にしかならないことが発覚してプロジェクトは凍結された、

細胞から生き返らせるのは君が最初で最後になった」

「出て行ってくれ…みんな出て行け!」

「陸お兄ちゃん…」

心配する希美の肩を先生が叩いた。

「今はそっとしておいてあげよう」

「でも…」

「いいから、少し冷静になれば現実を受け止められるよ」

「わかりました…でも一つだけ言わせてください」

そういってから希美は陸を覗き込んだ。

「私がこうやって生きているのは陸お兄ちゃんのおかげなんだよ。

あのとき突き飛ばしてくれなかったら私も一緒に…本当にありがとう」

ここまで言って希美は涙を流した。

「希美ちゃん…」

「これからどんなことがあっても私はお兄ちゃんをサポートしていくから、

それだけは忘れないで」

希美は泣きながら先生と病室を出て行った。

希美の気持ちは嬉しかったが、女として、子供として生まれ変わるくらいなら

死んだ方がマシだったと思ってしまった。

望んでない別の性は苦痛以外なんでもない。

性同一性障害と全く同じなのだ。

「くそ…なんでこんなことに」

頭を布団の中に入れ潜り込んだ。

どうしようもない現実だが受け入れられない現実、陸は無意識に涙を流していた。

でも…希美ちゃんが無事だっただけよかった。

これだけは陸も心から安心していた。


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