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僕は悪い魔物じゃないお!〜犬に転生した僕は成り上がる!〜  作者: ケモナー@作者
第1章《異世界に転生したから強くなってみるお!》
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冒険者に遭遇したお!2

期末テストが近くて更新遅れます

 目で追えない早さで振り下ろされた鉄の刃は、僕の胸の毛皮を綺麗に切り裂き、体を吹き飛ばしてきた。

 人喰兎(ピラニアラビット)の体当たり以上のダメージ量に、僕は驚きのあまり思考が停止してしまい抵抗も出来ずに吹き飛んでしまう。


「ぬぉぉおおおおおおおおおおおおおおお!?」


 僕は絶叫して、バウンドボールかスーパーボールのように跳ねながらゴロンゴロンと弾んむ。硬い地面を転がされていくのと、時折尖った石とか跳ねる際にぶつかって地味に痛いんですけど。


 そうして吹き飛ばされ、止まることの無かった僕の体は巨大な岩に衝突してようやく止まった。

 岩には背中から当たってしまい、衝撃で肺の空気が一気に吐き出される。僕が派手に岩と激突したせいで周りに砕けた岩の破片が飛び散り、瓦礫と化した岩が僕の上にガラガラと崩れてきた。

 もの凄い瓦礫の重量に、僕は生き埋めに近い状態になってしまう。


「カザミー!!」


 瓦礫の外からリンナの悲痛な呼び声が聞こえてきた。

 まぁ端から見たら僕は死んだと思われても不思議ではないだろう。なにせロングソードで肩から胸にかけて切り裂かれ、更に吹き飛ばされて岩と共に粉砕されてしまったのだから。

 というかよく生きてるな僕。まぁすごく痛いんだけども。

 日々から痛みに慣れた生活をしているからか、僕の胸は剣で切り裂かれたハズなのに微量の血が出るだけで毛を切られただけだった。

 鉄の刃に耐える僕の毛皮って・・・剥ぎ取れたら良い防具になりそうだ絶対剥ぎ取らせないけど。


 さて、あの女の人から追撃してくる気配はない。 上手いこと僕を斬り殺せたと思ってるのだろうか、まぁ瓦礫に埋もれたままピクリとも動いてないからね僕は。

このまま死んだ振りをしとけばやり過ごせるんじゃないかと一瞬思ったけど不安が残る。あの少女がリンナを襲われないと決まった訳じゃない。問答無用で僕を襲ってきたんだ、隣に居たリンナを見逃すとは思えん。

 それに、例え少女の方から襲わなくても、リンナが「カザミの、仇ー!」とか言って突撃しそうだ。そうなったら困る。リンナじゃ正直あの少女に勝つ事は不可能だ。

 ナイフを持って突撃したとしても、回避能力が高いリンナでももって5分くらいだろう。それくらいの素早さを少女は持っている。

 そうなればリンナは手も足もでない。リンナはゴブリンだけど、この異世界でひとりぼっちだった僕と一緒に居てくれて、一緒に笑ってくれて、一緒に苦しんでくれて、一緒に勝利を分かち合った親友だ。

 僕の初めての友達だ。失ってたまるものか。ならどうする?リンナの目の前で生き残ってやるしかねぇだろ。


 天よ!我にちからをぉぉぉぉぉぉぉぉ!!


「ムギギギッ!!」


 僕は痛む体を動かして、目の前にある瓦礫を持ち上げたり蹴り飛ばしたりして押し出す。

 かなりの重量だが、戦闘で鍛えている二足歩行の獣人モードならそれほど苦労をかけずに瓦礫を動かすことができた。まぁ力を入れると傷を負っている体が多少痛むのだけれど。


「い、痛ってぇぇ」


 僕は痛む体に愚痴りながら、のしかかってきた瓦礫を退かして生き埋め状態から脱出した。

 そうして、瓦礫と砂埃りが目に入らぬように目を細目にして視界に映る光景を確認する。

 10メートル程離れた先に、剣を持った少女とリンナがこっちを見ているのが見えた。少女はリンナを襲っている様子はない。というかリンナの事を見ないで、ただ瓦礫から余裕で這い出てきた僕を見て驚いたような表情をしている。

 余程腕に自信があったのか、大した怪我しか負っていない僕が信じられないようだ。


「・・・?いつもなら気絶してるハズ。」


「カザミィィィィィィィィィィ!!」


 少女が呆然と呟くと、隣でリンナが両手を上げて歓喜を含んだ声を上げた。そしてとんでもない速度でこっちに走ってくる。すげえ、10メートルを2秒で走ってやがる。

 そして僕のいる瓦礫の山にたどり着くと、僕のお腹までジャンプして抱きついてきた。

 ぐふぅ!ゴブリンの角が僕のお腹にクリティカルヒット・・・!

 ぶつかった腹からゴキュッと鈍い音がしたのは気のせいだと思いたい。


「カザミ、死んでない、よかった!よかった!」


 リンナは抱きついたまま顔を上げずにそう言う。敵である少女はまだ近くにいるので、できるだけこういう無防備な格好は勘弁して欲しい。

 僕はリンナを引き剥がそうとするが・・・しかし肩を少しだけ上下に揺らしながらリンナはただ「良かった」と言っている。

 その言葉のせいで抱きついてきたリンナを引き剥がす事が出来なくなってしまう。

 むぅ。


「リ、リンナッ・・・は、離れて?」


「ふぇぇぇぇぇぇん」


 遂に泣き出してしまった幼女(リンナ)を何とか引き剥がして、落ち着かせるように頭を撫でる。未だに剣を持ってる少女は特に顔の表情を変えることもなく、ただ僕らのやり取りを見ているだけだ。

 その態度から、僕を殺すのは不本意のように思えた。さっきもごめんねとか言ってたし。気絶って言ってるか捕獲でもするつもりか?


 危険な相手だけど、話が通じるなら何とかこの場を収めようと思う。現状斬撃を耐えられても勝てる気がしない、てかオオトカゲを真っ二つに切り裂いたであろう威力を持っているハズなのに、僕の体には掠り傷程度。本気の一撃ではない。

 オオトカゲを葬ったであろう少女が本気を出したら、僕は無事に生き残れるかもわからない。

 完全に詰みにならないように選択を間違わないようにしないとな。

 そう考えてる内に僕の胸から聞こえてきてた泣き声が止んでたのに気付く。頭を撫でられて落ち着いたのか、リンナは嗚咽をしながらも泣きやんでくれたみたいだ。

 リンナは涙目のまま僕の胸から顔を話すと、身動き一つしてない少女に、睨むように目を向ける。


「カザミ、怪我、した。あれ、ぶっ殺す。」


 おいこらどこでそんな野蛮な言葉を覚えた?


 僕は軽くポコンとリンナの頭を叩いて殺気を止めさせる。オーラが半端じゃないからな。

 リンナは僕に叩かれて「???」とでも言いたいような顔をしたが、それは今は放置しておく。

 僕は今からあの少女もどきの化け物と少々お話をしたいと思ってるからね。

 僕は瓦礫の山から立ち上がって、目を少し伏せて睨み付けながら少女へと近付く。すると少女は物珍しそうに僕の目と視線を合わしてくる。


「・・・驚いた。私の剣を喰らって軽傷だなんて。」


「驚いたのはこっちだよ。いきなり切りつけてくるとか辻斬りかアンタ。」


「・・・それは悪かった。」


 悪かったで済むわけねぇだろ。こっちは死にかけてんだよ。手加減されてても。


「いきなり切りつけてきた理由は?」


 僕がそう聞くと少女は少し考える様子を見せて、少し間をとってからブンブンと小首を横に振った。黙秘ってわけかよ。


「悪いけど、それは言えない。強いて言うなら仕事だから。」


「へー?仕事ね?僕をピンポイントに狙った抹殺が仕事ってワケ?」


「そう。」


「・・・。」


 冗談で言ったんだけどまさか即答され、さらに肯定されるだなんて思ってもみなかった。ショックで絶句してしまう。

 つか抹殺とかマジかよ僕なんかやらかしたっけ?狙われる理由が全く見あたらないだけど、僕はこの世界に来たばっかりなのだから人間なんて目の前の少女を除いて会ったことも見たこともない。

 むぅぅぅぅ?駄目だ、わからん。

 少女は僕が理解してないと察したのか、ハァと息を吐いて剣を構えてきた。


「・・・自分の価値が理解できてないなら気の毒。私の剣を耐えただけでもこれは確定。でもある意味、早い段階で死ぬならマシかもしれない。・・・というわけで今から君を狩るよ。できるなら気絶して大人しく捕獲されて?」


「畜生全く理解できてねぇよ気の毒ってなんだぁ!?」


 つーか捕獲って何!?実験体にでも使う気か!?

 僕が喚くように叫ぶと、少女は弾丸のようなスピードでこっちまで飛躍してきた。この早さを目で追えたのは幸運だった、ピラニアラビットで目も鍛えられたお陰なのかもしれない。

 少女の手に握られている剣がこっちに向いているのが視界に映った。

 僕は隣に居たリンナに剣が当たらないように突き飛ばして、僕も転がって剣を避ける。


「カザミッ!?」


 僕に突き飛ばされ呆然としてたリンナが正気に戻り、剣をギリギリ回避した僕を心配するように声を荒げた。

 避けられたのはギリギリ。掠ったと思われる頬を触ってみると、何かが消えていた。

 頬から生えていた長めの毛があの一瞬で斬られていたのだ。

 今度は本気かよっ!と思って少女の方へ目だけ振り返らせると、少女は僕を休ませる暇もなく、またこっちに斬りにかかってきた。


「チッ!」


 僕は迫られた剣をブリッジするように背中を倒してかわす。しかしまた何か斬られた感触・・・チラッと自身の胴体を見てみると、胸から生えていたフサフサの毛がバッサリ刈り取られていた。あぁん!僕のもふもふがっ!?

 回避するのも紙一重、集中を切らして一撃でもまたもに喰らったらあの放置されているオオトカゲと同じ運命を辿る事になるだろう。

 何者だよこの女・・・

 化け物だっー!!と、僕は今切実にそう叫びたいと思った。


「・・・って!あっぶね!?」


 場違いな事を考えて意識が一瞬そらしている隙に、少女の刃が僕の目と鼻の先までの距離まで狭まっていた。

 気を抜けない戦いなんて僕やったこと無いのに!!集中力なんて保つわけ無いじゃないか!

 僕は心の中で文句を言いながら、咄嗟に懐からタガーを取り出して迎え撃つように構える。

 剣にタガーを打ち当ててガードするのが目的だ。これで互角くらいには━━━━


「・・・は?」


 刃と刃がぶつかり合うハズだった僕のタガーは、少女の剣に干渉した瞬間、熱したナイフで切ったバターのように裂かれてしまった。

 意図も容易く鉄製の武器が壊されてしまった僕は、一瞬の間に放心したように根本から斬られたタガーを見つめる。

 少女はそれを逃さずにその一瞬を使って薙ぎ払うように僕の腹を斬り付けてきた。


「っ!!」


「カザミ!」


 リンナの声と痛みで正気に戻った僕は、斬られた衝撃を利用して後ろへと飛ぶ。そしてそのまま距離を取るようにバックステップで後ろに飛び下がった。

 僕は壊されてしまったタガーだった物を投げ捨てて新しいタガーを荷物から取り出す。

 まさかガードした瞬間にタガーが斬られるなんて思ってもみなかった。手入れがされてないせいでもあるけど鉄があんな簡単に・・・

 しかし、斬られた僕の体はまたしても重傷ではなかった。今度は本気だったであろう斬撃も、僕の腹部には皮膚がすこし切られた感じに赤い線ができている。鉄より耐久性があるのかよ僕は。まぁクッソ痛いんだけどさ。

 

 まぁ今は自分の身体に感謝しておくとする。死んだら元も子もないからね。

 そう結論して、装備して構えたタガーを少女に向けると僕は突撃する。

 じっとして相手を観察していると先手を打たれるのは文字通り痛いほど学んだ。ここは小柄な身体を生かして一撃離脱の要領で勝負を仕掛けるっ!


 素早い動きで攻められた少女は剣を僕のタガーの軌道に合わせてガードをする。

 タガーは壊れない。やっぱり剣が強力じゃなくて、少女が強力って事か。


 攻め続けて相手を防戦一方に陥れればタガーの、消耗を押さえられる。

 まぁどっちにしろオンボロのタガーじゃすぐ壊れるだろうけど、ストックなら貯めてある。ざっと残り3本が革製の荷物入れにあるのを確認済みだ。


 少女が持っている剣も決して耐久率が高いとは言い難い。

 僕のタガーの在庫が無くなるまでに少女の武器をなんとかするか、自分の耐久性を信じて突撃するか、どちらか上手くいけばまだ勝算はある。僕は剣術も何も関係なくタガーを持ち前の素早さで振り回し、素人丸出し・・・だが隙間の無いの攻撃の、連続をする。

 ちなみにリンナはナイフを装備しているものの、高速で動く僕と少女の攻防戦を交互に見て動けずにいた。やっぱりゴブリン脳っ!せめて逃げろよ何に戸惑ってんの!?


「だぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 僕は雄叫びを上げて少女の剣を思いっきり叩きつけるように振り下ろした。少女は剣の腹を差しだし、それを楽々とガードしてやり過ごす。それを見て僕はニヤッと笑みをこぼした。

 少女は僕の顔に唖然としたものの、すぐに理解したように表情を引き締める。


 叩きつけた僕のタガーが耐久値を越えて粉々に砕け散ってしまったのだ。

 砕け散った銀色の欠片が空中に飛び散る。その様子はまるで目潰しのようにも見える。

 タガーのひび割れに気付いた僕は、これをわざと壊して、その欠片で少女の視界を妨害できると思ったのだ。欠片といっても鉄、そして鋭利なタガーのもの。目に入ってしまえば大変なことになってしまう。

 案の定、少女は欠片が目に入る寸前に瞼を閉じて目を守ろうとした。秒数にして僅か2秒程度しか稼げない隙だろう。

 でも、僕はそれで十分だ。

 僕は荷物入れから更にナイフを取り出して、作戦に移った。


 






 

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