逃げるが勝ちだお!
おねがいします。
巨大な爬虫類に襲われた場合どうすればいいと思う?
突然だが、僕は有名な某恐竜映画であるジュ●シックパークを全作見ている。恐竜とかマジロマン。
もし本当に恐竜の島があったら死んでも良いから是非行ってみたいと思っていた。そんな小学5年生だった僕。
まだまだ子供だった僕は、あるはずもない仮想恐竜アイランドに行った時の為に対恐竜・・・もとい、巨大爬虫類の対策などを日頃から真面目に調べていた時期があった。そのお陰で爬虫類の対処法で少しばかし詳しくなった。
代償としてテストが最悪だったのは良い思い出でござる。
まず思い浮かんだ対処法だけど、安直に麻酔銃が思い浮かんだ。しかし、調べてみると爬虫類に麻酔は効きにくいらしい。
別に効かないって訳ではないけど通常の動物より麻酔で寝るまで時間がかかるっぽい。
つまり麻酔を撃ってオネムの時には時既に遅し、僕は胃袋の中というわけだ。まぁそれ以前に都合良く麻酔銃持ってるわけがないし。
ならば走って逃げるか?答えは否。
前にも説明したが、爬虫類は早く動くモノを追いかける習性を持ってるから全力疾走なんて逆効果なのである。
それなら熊みたいに目を合わせながらユックリと逃げるか?
資料とか読みながら脳内シミレーションとかしたけどこちらも駄目だと思う。
恐竜、特に肉食恐竜は良いと犬並に鼻が利くらしいので、匂いで餌と判断されてあっという間にパクりと逝ってしまう。
最終兵器、物理で殴れ。
という作戦も思いついたことはあるけど、大型爬虫類に人間のパワーなんて大した効果なんて期待できないだろう。
ならどうすればいい?僕の答えはこれだ。
一か八かで逃げ切れ。
「うぉぉおおおおおおおおおおお!?」
「ピギィィィィィ!!」
「ゴガァァァァァァァァァアア!!」
本日二度目の断末魔を叫びながら、僕は乾燥して固くなった地面を走りまくる。
横では最初の頃の鳴き声に戻ってしまったリンナがもの凄い早さで逃げていく。てか早い!リンナ早い!自転車並のスピードってどういうことだよ!?
まぁそれについて行ってる僕もどうかと思うけどね。
「ゴガァァァァァァァア!!」
「っとぉヤベェ!!」
高速で移動してる僕らを追いかけてくるのは、僕と何か縁でもあるのか、あのオオトカゲが涎をまき散らしながら追ってきている。
よし、これは命を懸けたリアル鬼ごっこなのだと解釈でもしとこう。パニック系だね。
なぜこのような事態に陥ってしまったのか、それは僕らが狩りを終えてのほほ~んと帰り道を歩いてたら、なんと化け物みたいな巨大オオトカゲに見つかってしまったのである。わぁお。
そして問答無用で追われてしまっているのだ。
見た感じこのオオトカゲはここらの地域の生態系の頂点だと僕は考えている。
基本見かけるオオトカゲの姿は凶暴なワニのように見えるのだが、この追ってきているオオトカゲ、コイツは少し他のオオトカゲとは形状が違ってる。
他のオオトカゲの顔はそれこそワニみたいなんだけど、このオオトカゲは恐竜のティラノサウルスみたいな顔をしてている。
突然変異か亜種か?それても外来種?
というかコイツ異世界初日僕を襲った野郎じゃねぇか!またかよ!!ストーカーですか!
いや、まさか運命ないないないないない。
必死に逃げる僕たちをオオトカゲも手加減無しで追ってくる。かなり速い、オリンピック選手でも逃げきれないかもしれない。
しかしそよ体をよく見れば随分と肉付きが悪い。
オオトカゲは明らかに食料に餓えているように見えた。
厄介だ・・・手負いの獣ほどメンドクサいとよく言う。
きっとコイツの中で僕らは餌にしか見えてないのだろう。和解などできるわけがない。
オオトカゲは腹が減って餓死寸前とはいかなくても巨体を動かす事すら必死なのだろう。
猫みたいに獲物でに遊んでる余裕はなく、追いつめて追いつめて追いつめて僕らを捕食しようとするだ。きっと僕らが逃げ切れば餓死するか、他のオオトカゲに捕食されてしまうのだろう。
気の毒だが、だからって僕らも簡単に捕まって死ぬつもりは全くない。
僕はリンナに話しかけた。
「リンナ!背負ってる風呂敷の肉を捨てて!その隙に逃げ切ろう!?」
アイツは餌があれば同族だろう何でも食らいつくハズ、逆に言えば楽に食えそうな物ならそれを優先に襲う。
たとえそれが既に解体された死骸の肉でも、あのオオトカゲは食べようとするだろう。なにせ血の臭いがしっかりする新鮮な食料だからな。
何せ今リンナが持ってるのは肉だ、餓えて腹減りがMAXな奴の前に捨てればそれに目がいくだろう。
その代わり今日は肉食えないけど、背に腹は代えられん。今日はサボテンサラダだ!
「肉、捨てたら、飯、サボテン!」
ちょっと早く先頭を走ってるリンナがこっちを向いてそう言う。それに僕は頷いた。
「そうなっちゃうけど死ぬよりはマシだ!肉はまた明日捕ろう!!」
「う~~~~~!!」
リンナが泣きそうな顔で背負った肉をチラッと見る。
リンナはピラニアラビットの肉が大好物だ、僕にとっては筋が多くて微妙な味なんだけどリンナは僕の前世の肉を知らないから、こんな肉でも高級に入る分類らしい。
「三度の、飯、より、お肉。」とかむふぅ!と鼻息して言ってたけど普通にお肉も飯だからとつっこみをした。
まぁリンナにとって肉は手放したくない食料なのだろう。僕も栄養的に捨てたくはない。
最近肉を食べ出したせいか僕らの成長が早いのだ。
最はリンナもチワワサイズだったのに今では5才児くらいの背丈まである。
僕も二足歩行の獣人モードだと同じくらいだ。まぁチワワの四足歩行モードになると大きさが元に戻るんだけどさ・・・
おっと、関係ないこと考えちゃった。とにかく今はリンナにその肉捨ててもらわないと。
「リンナお願いだから!僕らの力じゃまだあのオオトカゲに勝てないんだよ!」
「う~、う~、う~!」
そろそろリンナの涙腺が崩壊しそうだ。戦えるようになっても所詮精神はまだ幼児。色々頭の中で葛藤とかしてるんだろう。
もっと僕らが強ければ他の選択肢もあっただろうけど、2人でようやくピラニアラビットを倒せる程度の実力じゃこのオオトカゲに勝てる訳がないのだ。僕は出来るだけ優しい声で諭す。
「リンナ。」
「ぅ~、わかった。」
リンナは僕の言葉に了承すると背負ってた風呂敷を広げて肉をオオトカゲに投げつけた。
解体された四肢や胴体が左右に飛ばされると、オオトカゲの目つきが変わった。オオトカゲは急ブレーキをかけて僕らを追うのをやめたのだ。
「よっしゃー!」
「うぅ・・・」
僕は飛び散った肉片を貪るオオトカゲを背にして勝利の声をあげる。
しかし対照的に、リンナはちょっと悔しそうにオオトカゲを睨みつけていた。仕方ないとはいえ楽しみにしてた肉が無くなってしまったのだ、ちょっと可哀想かもしれない。
「リンナ。」
「う?」
「また後で捕ろうな?」
「・・・うん!」
僕が笑いかけながらそういうと、リンナは泣きそうだった顔に、今は嬉しそうに笑顔を浮かべた。
互いに笑顔を見合わせながら、僕らはオオトカゲの驚異から大脱走を続けたのだった。
そして約30分後、周りに動物・・・主にオオトカゲが居ないかどうかを確認してから、僕は地面に座り込んだ。
「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ。」
犬は汗をかかないはずなのに、何故か僕は大汗をかいていた。
座って酷使した足を休ませながら呼吸を整える。
辺りに気配は感じられないし何も姿は見えない、どうやら上手く逃げ切れたらしい。
安堵も含んだ息を吐いて僕は大の字で地面に寝っ転がった。
「マジ・・・勘弁。」
「カザミ、大丈夫?」
リンナが倒れて動かなくなった僕の体をつついて確かめてくる。おいこらやめなさい。
ていうかなんでリンナはそこまで大丈夫なの?30分全力疾走だぜ?ねぇなんで?なんで?
「か、体いてぇぇぇ・・・」
「うー、カザミー。」
筋肉痛みたいに痛む体に我慢してると、リンナは僕の体を今度は揺さぶってくる。
イタイタイタイ。
「っつぅ、大丈夫だよ。すぐ治るから。」
「うぅー。」
リンナは不安げな呻き声を出すとスタスタと歩いていってしまった。
リンナ~どこいくってのさ~、あ、サボテンとりですか、はい。
オオトカゲによって空になってしまった風呂敷の中にドンドンサボテンが投入されていく。メチャクチャ乱獲をするリンナなのであった。どうやら暇っぽい。
するとリンナは風呂敷の中に限界までサボテンを八つ当たりと言わんばかりに詰め込んだのだろうか、改めてそれを背負うとこちらにテコテコ歩いて戻ってきた。
「いこ?」
「・・・」
暇っぽい。
「わかったわかったよ。行けば良いんでしょ行けば」
「うん。」
深いため息を吐いて同意するとリンナは嬉しそうに頷いた。
僕は疲れた体を無理矢理働かせて立ち上がると軽く手足を振って体の調子を確かめる。
ふむ、あれだけ走ったのにもう回復してる。流石獣の体といったところだろうか、スタミナがある。
まぁリンナよりは少ないっぽいんだけどさ。
僕は無加工の毛皮や武器を入れた荷物を背負って拠点へと足を動かす。それにリンナが付いて歩いてくる。
拠点はいつも使ってたあの洞穴がある場所なんだけど
僕らが大きくなったせいで入れなくなってしまったのだ。最早ただの穴である。
正直ここまで早く体が成長するとは誤算だった。
だから洞穴の入り口の手前で寝たり食べたりの生活をしている。ちなみに道具は洞穴に入れてあり、すでに物置と化している。倉庫みたいなもんだね。
「サボテンを、沢山、採った、から。」
「うん、今日はサラダか。」
「うん。」
リンナが背負っている風呂敷を見て僕は嘆くように肩を下げる。
さっきは捨てろって言ったけどやっぱりお肉はサボテンに比べれば美味しいのである。干し肉でも作ってストックをため込むか?いや、火が無いからなぁ・・・火打ち石でもあれば違ったかもしれないけど。
いやまて、そもそも燃やすもんがねぇわ。
「カザミ。」
「ん?どうかした?」
「あれ。」
食糧問題について考え事をしているとリンナが急に呼んできて僕の意識を現実に引き戻した。
それに反応を見せるとリンナはピッと遠くの方へ指を指す。
「むぅ?」
僕は手を開いて目の上に望遠鏡みたいに設置するとその先に視線を向ける。
見えた先には遠くて見えにくいから判別がし辛いけど、何やら人影らしき姿が見えた。
こんなところに人か?それともゴブリンみたいな人型の魔物?でもゴブリンにしては大きいな。
他に人型の魔物が生息してるのは見たことない。それじゃやっぱり元僕と同じ同族の人間なのか?
うーん、素手には見えないな。少なくともその人影のシルエットは何か大きな荷物を引きずっているようにも見える。
「なぁリンナ、ここってよく人くるのか?」
「ここ、死地。人間、軟弱。だから、魔物に見つかって、即死」
「ですよねぇぇぇ。」
ここがだれ?わたしはどこ?状態である僕でも、この荒野で人間が生きていけるとは思っていない。
少なくとも僕の転生前で知ってる無力な"人間"と同じであるなら。
ここに存在してるのは動物園でよく見る動物なんかじゃない。5メートル近い肉食爬虫類、岩も砕く人喰兎、数で群がる緑色の子鬼。
明らかにとても・・・かなり厳しい環境なのだ此処は。
もし、ここで人間が生活するならば爆弾でも機関銃でも何でも現代兵器を取り揃えないと生存など出来やしない。
それこそ、軍隊がまとめて掛かってこなければこの荒野を攻略することさえ不可能だと僕は思っている。
僕らが生き残ってるのは単純に敵を撒くことがてまきる逃げ足の速さ、そして幾度も悪運が重なった結果だろう。
だからこそ、ここからそう遠くない位置に人間が無警戒でいるということが不思議なのだ。
「あれ?こっち、来るね。」
リンナが呟いた。
リンナの言う通り、あの人間がこっちへ歩いて近付いてくる。
それはあの人間の進む路線に僕らが偶然いたのか、はたまた僕らを見つけてこちらに向かって来ているのか、判別がつかない。
だが近付いてくるに連れ、逆光で見えなかった人間の姿が露わになってくる。
安物そうなローブと腰に付けてるロングソード、ファンタジーお馴染みの冒険者っていうやつだろうか?
でも顔は割と整っていて髪は青っぽい綺麗な白髪だ、髪の隙間から覗くマリンブルーの瞳は見つめてると吸い込まれそうな錯覚に陥る。
身長はそこまで高くはない。むむ、年齢は16才くらいだから美女というより美少女と言ったほうが良いかもしれない。
テンプレならどっかの貴族の娘といっても通じてしまいそうである。装備初期だけど。
ゲームのアバターで顔だけ良い初期プレイヤーキャラみたいだ。顔強そうなのに装備木の棒の人見かけたことがある、勿論ゲームだけどさ。
でもこんな人が何故危険な荒野に?と疑問が沸いたが、あの人がただ者じゃないという事はすぐにわかった。
「・・・は?」
「っ!?」
彼女が引きずっていた大きな荷物は、一刀両断にされた4メートル近いオオトカゲだったからだ。
誤字脱字等ありましたら教えてください。