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僕は悪い魔物じゃないお!〜犬に転生した僕は成り上がる!〜  作者: ケモナー@作者
第1章《異世界に転生したから強くなってみるお!》
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ゴブリンの少女だお!

よろしくお願いします

 僕は二足歩行で立ち上がり、シャベルのような刃の広いナイフを前足で握った。それを持って、最後のゴブリンの死体に近づく。

 ゴブリンを摂取したことによる二足歩行化は元人間としては使いやすくてとても良い。うん、立ち上がれるって素晴らしいね。四足歩行はなんか屈辱的な感じがしたよ。

 特に物が掴めるようになったことはメリットも大きい。お陰でナイフを持てたりするし。

 まぁチワワっぽい顔の獣人が二足歩行して、さらにナイフを握ってるってなんだかシュールな絵面になってしまった訳だけども。

 便利と言えば便利だ。早く移動したいときにまた四足歩行に戻れるし。


 それと、別に問題はないんだけど心なしか体が大きくなってる気がする。

 1メートルとか2メートルとか、そんな劇的な変化じゃなくてほんの数センチ。

 ・・・サバ読みました。ミリ単位くらいの差です。


 う~ん、成長期なのかねこの体。ならいいな。いやそうであってくれ。

 一生子犬のチワワで生きていくと軽く絶望してたし。やはり心は人間なのだ。


 おっと、語りもいいけどそろそろゴブリンの遺体を片付けないとな。僕は倒れているもう一体の死体に歩み寄る。

 因みにもう二足歩行になれたからゴブリンを食べるつもりはない。あんな不味いもの二度と食うか!

 埋めてやるだけでも放置はしないんだから感謝しろよ!なんで偉そうなんだ僕?

 まぁこのゴブリンの死体は縄で縛られてるし、埋葬してもバチは当たらないだろう。


 感謝するがいいMプレイゴブリンよ!ふはははっ


 僕軽く調子に乗ってる気がする。


「さぁーて、埋め立て埋め立てぇ~っと。」


 僕はゴブリンの死体を移動させようと縄の部分を持つと、何だか手がズキズキした。よく見てみると縄から小さな棘みたいのが生えていた。あまりにボロボロだからそのせいかもしれない。

 う~ん、埋めるのに縄が邪魔だなぁ。というより死者を縄で縛り付けて埋葬するってのは罰当たりな気がしないでもない。


 せめて拘束くらいは解いてやろうか?なぜこのゴブリンが縛り付けられてるのか知ったこっちゃないが、せめてでの情けだ。僕はそこまで外道じゃない。


 手持ちのナイフで縄を切るように振り下ろす。

 だがナイフは縄は切れるどころか、軽く弾かれたような感触が柄から伝わった。


 流石ゴブリンのナイフ、手入れなど全くしてない。お陰で錆だらけで刃も潰れてるから縄を切るにも一苦労である。

 これ最早刃物の役割を失ってるよね?どちらかと言えば鈍器にしか使えそうにないんだけど・・・

 そうだね、鈍器に使おう。


 そんなこんなで根気よく縄を切りつけていると、ようやくブッツンと音を立てて縄が切れた。

 それだけで縄の拘束が解ける。

 流石馬鹿脳ゴブリン。縄で拘束するのに一本しか使ってねぇ手抜きっぷりである。まぁ僕が楽になるからそれでいいけど。


 次に、ゴブリンを穴に埋める位置まで運んで移動させる必要がある。

 穴に関しては丁度いいのがあった。

 ピラニアラビットの巣の近くに、中途半端に掘られた穴があったのだ。おそらくピラニアラビットが巣作りに失敗した時の穴だろう。


 だけどそんな穴でもゴブリンのサイズには丁度いい感じの穴であった。

 あとはそこにゴブリンを放り込んで土で埋め立て、石でもを置けば墓の完成だ。我ながら凄い手抜きっぷりである。

 でもゴブリンよりはマシだよね?


 とりあえず拘束を解いたゴブリンを持ち上げる・・・いや待て、大きさ的に必然的にお姫様だっこみたいな格好になっちゃうな。


 ううぇ・・・


 想像しただけでも気分が悪くなる。あの顔のゴブリンだぞ?芋虫と人間の赤ちゃんの顔を混ぜ合わせたみたいなグロい顔だぜ?

 絶対ゴブリンは神様に嫌われて生まれたに違いない。


 さて、お姫様だっこ却下ならどうやって動かそうか?

 引きずるか、引きずって移動させるか?

 それがいいうんそうしよう。


 僕はゴブリンの方足を握るとズルズルと引きずって穴の方へ運んでいく。

 途中に時折、ゴブリンの頭が岩にガンガンぶつかったりしてる音が聞こえてくるが知らない。


 さてさて、巣の近くだったので10秒ほどで到着しました。

 改めて見るが穴は埋葬に丁度いいくらいの深さである。

 どうやってこれを放り込もうか・・・

 ゴロゴロと転がして落とすのはなんかゴミ捨てみたいでイヤだし、ゴブリンをお姫様だっこして穴に投げ込めば楽なんだけどなぁ。


 ・・・えぇい最後の情けだ、僕はゴブリンを抱えてお姫様だっこする。

 おぅぇぇせめて初お姫様だっこは可愛い女の子がよかったー。


 と、思ってこのゴブリンの顔を初めて見てみる。

 仕方ないのだ。お姫様だっこだから強制的に顔を見てしまうわけで。

 僕はチラッと目を開けて現実を見る。


 ・・・しかし、僕の目に映ったのはゴブリンの顔では無く、幼女の顔だった。それも割と整っている。

 いや、ゴブリンだよ?体色は緑色だし角だって()えてる。

 でも顔立ちというか、作りがさっきのゴブリン共とまるで違う。

 見た目では、ゴブリンの顔は性根の悪い悪人面で赤ん坊みたいに丸っこくて芋虫みたいな皺がある醜い顔だ。

 なのに、何でこのゴブリンの顔は幼女なんだ?

 結構整ってるんだけど、見た感じ雌のようだな。これで雄だったら男の娘名乗れるぞ?


 ひょっとして、ゴブリンの雄はあんな成りだけど、雌はそうでもないって事か?それとも単にこのゴブリンの顔が良かったのか?

 いずれにせよ死んでしまってるのだから仕方がない。

 いつまでも死人の顔をジロジロ見てるのは悪いし、そろそろ埋葬してやろう。

 僕は死体を穴に放り込もうと手に力を入れた。

 が、その時


 パチッ


「・・・。」


「・・・。」


 ゴブリン幼女の目が開いた。

 あれ?どゆこと?さっきまでピクリとも動かなかったじゃないか。雄のゴブリンさんは即死してましたよ?種族同じなんだからアンタも死んでるハズじゃん?

 なんで?え?

 驚きのあまり絶句した僕を、何故かこの雌ゴブリンはじっと黙ってこちらを見ている。

 いや、少し違うな。相手も驚いてる感じだ。


 僕達は無言で見つめ合う。

 ゴブリンは数回(まばた)きで目をパチクリさせると、自分の拘束が取れているのに驚いた顔をしていた。


 そして今の状況を理解したのか、カァッと頬を赤めさせて━━━


「そぉぉぉぉぉぉぉれぇええええええええいっ!!」


「ピギャァァァァ!?」


 僕はゴブリンを持っていた手を勢い良く振り上げ、ゴブリンを穴に投げ捨てた。

 ゴブリンは悲鳴を上げながら穴へと落ちる。ドサッと鈍い音が聞こえたと同時に、僕はピラニアラビットに掘られた時に出たであろう砂の山を蹴りまくり、それを穴へと放り込んだ。


「アンデットゴブリンとかマジ勘弁んんんんんんんんんんんん!!」


「ぷぎゃっ!ぎゃふっ!」


 なんか死体が喋ってるけどしらない!

 山詰みにされている砂を蹴落としてゴブリンは砂に埋もれていくのが見えた。

 僕はこの埋め立てに全力を注げる!

 アンデットよ!安らかに眠れ!!ホラーは僕の大の苦手です成仏してください!


「ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ。」


 ようやく穴に砂を埋め終わった時には体力が異常なまでに消耗していた。

 息切れするが気にしない。

 僕は最後に埋め立てたゴブリンの墓の上に大きめの石をドンっと置いてそこから立ち去る。


 あー怖かった怖かった。それにしてもゴブリン本当に不味かったな。サボテンでも食べて口直ししよう。うん、そうしよう。


 そう頷きながらその場を背にサボテンの群生地に向かおうすると、何故か墓が不気味な音を立てながら動き始めた。

 その様子はマイケルジャ●ソンのス●ラーのゾンビ登場シーンに酷似している。

 ひゃー、マジかよ。

 そして緑色の手が砂の中から這い出て来て僕の足を掴んだ。


「ピギャァァァァァァ!!」


「oh・・・」


 緑色の手は僕の足を掴んだと確信するように叫ぶと、なにを思ったのか、思いっきり力を強めてきた。

 そして軽く引っ張られる感覚と共に墓の中からゴブリンが完全に浮き出てくる。


「ふぎぃ!」


 テッテレテーン。ゴブリンは復活した。




★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★




「ぷぎゃー!ぷぎゃっぷぎゃっぎゃーす!」


「ふむふむ、なる程わからん。」


 ゴブリン幼女(仮)は何かを伝えようと必死に僕に喋りかけてくるが、残念ながら僕にゴブリン語など理解できるハズもない。


 とりあえずあの後なにが起こったか説明しようと思う。

 まずこのゴブリンをゴブリン幼女(仮)と呼ぶことにする。

 名前がわからないからである。


 墓の中から這い出てきたゴブリン幼女(仮)だが、どうやらと言うよりやっぱり生きていたらしく、出てきた瞬間顔面ビンタされた。

 あぁ、僕の可愛らしいチワワ顔に物理とは、しかも地味に強かったし。

 はい、生き埋めにされたら流石にキレますよね、ごめんなさい。


 その後放置するのもなんなので、僕は彼女を洞穴に招待してサボテンなどを分け与えた。

 相当腹が減っていたみたいだ。ゴブリン幼女(仮)は無我夢中にサボテンを食いまくっていた。

 まるで数日もなにも食っていないかのように・・・


 その様子を見て僕はますます困惑した。

 一体このゴブリン幼女(仮)はあのゴブリン達にどんな扱いを受けていたのだろうか?

 仲間じゃなかったのか?と軽く問いただしたい気分だがゴブリン幼女(仮)が僕の言葉に応えてくれる事はなかった。

 いくら喋ってもひょこっと小首を傾けるだけで理解してる様子は見れない。


 外国人同士がお互いの言語を知らないで喋ったらこんな感じになるのだろうか?

 まぁ僕らの場合子犬チワワとゴブリンの絵面だけども。


 ゴブリン幼女(仮)が飯を食べ終わると、今度は僕に頭を下げて笑顔で喋り始めた。

 やっぱり何言ってんのかよくわからないが、どうやら僕はこのゴブリン幼女(仮)に感謝されているようだ。

 どうやらあの縄が解けなくて困っていたみたいだったらしい。

 ジェスチャーだからよくわからんが。


 しかし、その様子からやはりあの縄の拘束は何かトラブルがあったからなのだろうか?

 まぁゴブリン幼女(仮)が僕になにか意志疎通をしようとしてるのだが、今度は僕が小首を傾げる羽目になった。

 コミュニケーションが出来ないだけでこんなに不便なんだな。色々と大変である。


「はぁ・・・おい、ゴブリン幼女(仮)」


「ぷぎゃ?」


 ゴブリン幼女(仮)は僕の顔を見て自分を指さした。多分「え?それ私の名前?」とでも言いたいのだろう。僕はそれに頷く。


「そうだ。お前は今日からゴブリン幼女(仮)だ。」


「ぷぎゃぁぁぁぁぁぁあん!!」


 ゴブリン幼女(仮)はブンブンと首を左右に振って否定の意志を見せつけた。

 僕の言語は理解できてないハズだが・・・雰囲気で感じ取ったんだろう。まぁ流石にゴブリン幼女(仮)は無いよな・・・。


「むぅ、じゃぁお前は何て名前なんだよ」


「フギィ。」


 そう言うと、ゴブリン幼女(仮)は眉毛を「ハ」の字に下げてから肩を竦めた。

 「名前なんてないよ。」と言いたいのだろうか。だとしたら不便だ。

 いや待てよ?コイツの名前が「フギィ」と言う可能性も・・・


「お前の名前はフギィか?」


「ふぎぃぃぃぃぃぃ!!」


 またもや首を左右に振って否定を表す。

 違うのか、どうしよう。


「だけど、呼び名が無いと不便だしな。」


「ピギィ・・・」


 ゴブリン幼女(仮)は「同意」と言いたいのか、僕に合わせるように首を立てに振った。

 その仕草を見て僕は思った。コイツ雰囲気だけで会話を成立させてる・・・それだけなら、ソコソコ賢いのかもしれない。

 だけど会話が出来ないとやっぱり不便だ。

 そのためにも名前くらいは欲しいものだが・・・


「やっぱりゴブリン幼j・・・」


「・・・フギ?」


 鳴き声と同時に、背筋が凍った。

 フザケてボケようとしたらゴブリン幼女(仮)の背後からもの凄いドス黒いオーラが滲み出てきたのだ。

 あ、これいかん。僕は慌てて謝罪を口にする。


「すいません調子に乗ってましたぁ!!」


「ぷぎぃ・・・」


 ゴブリン幼女(仮)は「しょうがないな」とでも言う感じでため息を吐くとオーラを引っ込めてくれた。

 実はコイツ、クッソ強ぇえんじゃね?と僅かに思ってしまったのは秘密である。

 ちなみに僕の体勢は土下座である。驚きなのが、まさかこの世界で土下座が通ずるとは・・・

 万国共通、流石の土下座様だ。

 詫びをするため、僕は彼女のそれっぽい名をゴブリンに向かって吐き出した。


「ゴブ美!」


「フギ」


「ゴブ子!」


「フギ」


「ゴブ恵!」


「フギ」


「ゴブリンリン!」


「フギィ」


「ゴブ奈!」


「フギ」


「おゴブ!」


「フギ」


「やっぱりよu」


「フギィィィ!」


 ちくしょう、全滅かよ!!

 かの有名な某RPGで魔物に名付けていた集が何の役にも立たないとはな。

 どうやらこの世界の魔物は適当な名前に満足なんてしないらしい。

 実に悲しい事である。


「・・・どうすりゃいいんだよ。」


「プギャ?」


 僕が頭を抱えて悩み出すと、ゴブリン以下略は僕の行動に小首を傾げて理解していない様子だった。

 自分でいうのも悲しくなるが、僕はネーミングセンスってものが皆無だった。

 前世でゲームキャラにネームを設定するときもヒドい名前になるので、僕はいつもそのまま自分の名前の《カザミ》にしてることが多かった。


「むぅぅぅぅ・・・」


「ふぎぃぃぃ・・・」


 僕がうんうんと唸って悩んでるとゴブリンも真似してくるが、お前絶対考えてないだろ。


 ゴブリン・・・ゴブリ・・・ブリ・・・ゴリ・・・ゴン・・・リン・・・リンナ?


「"リンナ"でどう?」


「プギャー!」


 思いついた名前をゴブリンに伝えると、ゴブリンは両手を上げて笑顔で叫んだ。

 どうやら気に入ってくれたらしい。やれやれ。

僕は自分を指さしして自身の名前を伝えた。


「僕は"カザミ"。よろしくな、リンナ。」


「フギー!!」


 こうしてゴブリンの少女の"リンナ"が仲間になったのだった。




ありがとうございました。

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