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番外編「クリスマスだお!」

42話から数話先という設定です。

おそらくこのクソ小説を見てる人は私と同じ立場かと思われます。

非リア・・・でしょ?



ね?

「クルシミマス?」


「・・・ちがう、クリスマス」


 セラさんは何を言っているのだろうか?クリスマスって何?クルシミマスなら知ってるけど。

 僕は椅子の上に座り、そこから窓を眺め街を見下ろす。チワワモードで。楽なんだよ、この格好。


 相変わらず暖かいと言うより暑い日光がサンサンと照らされるアバタールの街は、いつもよりも多くの人で賑わっていた。

 なんか、街全体の空気が違うというか、石煉瓦の民家に装飾が施されたりと、普段と比べて華やかになってる気がする。


「なんだよなんだよ。なんかお祭りでもあるのかな?」


「いや、だからクリスマスだと。」


 街を見て呟く僕に、呆れたような口調でツッコミを入れてくるセラさん。

 僕は振り返ってセラさんを見つめる。


「・・・クリスマスって何さ。」


「・・・こいつは。」


 はぁぁぁぁと随分長いため息を漏らしながら、セラさんはガシガシと頭を掻いた。


「クリスマス。ク・リ・ス・マ・ス。・・・日本じゃ聖夜とか呼ばれてたアレだよ。」


「・・・やめろ」


「・・・あ、ごめん。もしかして、カザミ非リアだっt」


「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」


 うがぁぁああっ!と叫びながら椅子から飛び降り、ゴロゴロと木製の床を転がりまくる。

 そうだよ悪いかよ!非リアだよ!彼女どころか友達も居ないから一人寂しくゲームやってた僕だよ悪い!?

 ギルメンだけが友達だったよ。あ、でも何人かクリスマス当日にログインしてなかったな・・・ 後輩のアヤさんもギルマスもサブマスも先輩勢も・・・。

 ・・・僕だけ?

 ああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!


「なぜそこまで頑なに拒絶する。」


「うるさいよ!偉い人にはわからんのですよ!」


 僕がクリスマスを嫌いになったのは、中学の時も高校の時もクラスメイトの大半がリア充だったからだ。キャーキャーキャーキャー黄色い声で女子が騒ぎ、男子が照れくさそうにしながら予定を話す。「カラオケ行こー」とか「俺ん家来いよ」とか「あのデートスポット行こっ」とか「デスニーランド行こー」とかとかとかとか。

 なんという生き地獄か。ガキかキサマらっ!いつの日からクリスマスは聖夜から性夜になったんだよ!童貞万歳大日本童帝国!!


「つかなんでセラさんは大丈夫なんだよ!?僕と同じだと思ってたのにっ!」


「・・・私前世も割と告られてたし。」


「裏切り者がぁぁあああああああああっ!!」


 なんだよセラさんリア充かよ!前世も現世もリア充ですか!敵だ!僕の敵だ!


「まぁ振ってたけど」


「んだよ自慢か!自慢かこらっ!」


「いや、おんにゃのこから告られなかったから」


 ブレねぇなぁおいっ!!

 前世も今世も性癖は変わらなかったセラさんのバカバカしい戯言をバックに、僕はもう一度椅子に乗っかり、窓からアバタールの街を眺める。

 街行く人々は、よくよく見てみると、男女一組で外出している奴らが多い気がする。そうでなくても友人数人と出歩いていたり、カップルでなくとも告白前の男女、と言った感じのグループも目に入る。

 つまりデートだ。デートで大量のリア充が活発に外出しているということだ。


「ファァァァァァァァァァァァァック!」


「・・・カザミが壊れてもうた。」


 椅子の上でガッシャンガッシャンとジャンプしまくって奇声を上げる僕に、セラさんが呆れた口調で見下ろす。

 しょうがないじゃん。非リアってゆーのはねぇ、リア充を見るとC4でも投げまくって爆発させたくなる生き物なんだよ。

 リア充がこっちに歩いてきた所を足元にクレイモア設置したくなるのが非リアなんだよ。

 しょうがないじゃんよ。

 チワワモードで窓のふちをガリガリと噛み削り、外のリア充共を妬まし気に睨んでいると、後ろでセラさんが首を傾げて無表情で訪ねてきた。


「・・・要約するとリア充爆発しろと?」


「そーゆーこと・・・」


「ふぅーん」


「カップルなんか滅亡して人類絶滅すりゃいいんだ・・・」


「・・・君もそのカップルから産まれてきたことを忘れちゃいかんよ。」


「僕もう産まれてるからいいもん。」


「・・・だめだコイツ早く何とかしないと」


 そう言うとセラさんは僕の尻尾を持ち上げて窓から離すと、そのまま人形を抱っこするように僕を抱えた。

 何がしたいんだセラさんは。これでリア充への恨みが解消されるとでも?そんな訳あるか。

 僕のリア充への嫉妬はマリアナ海溝より深いぞ。これしきのマナ板でどうにかなると思って・・・


「リンナたーん。入っていいよー」


「はーいっ」


 セラさんが言ったその一言を皮切りに、僕らの借りてる部屋のドアから、赤い衣装を身にまとった幼女が入室してきた。

 黒いベルトで腰を縛り、そこからはミニスカートで華奢な脚を伸ばしている。服のつなぎ目やボタンになる部分など白い毛玉が代わりとなっているのが可愛らしさを強調させていた。首元には白いマフラーのようなモフモフしたものが付いており、保護欲を感じさせる。

 緑の髪の上にはどこかの夢とプレゼントを配るおじいちゃんが被っているとんがり帽子がチョコンと乗っていた。


「カザミっ、どう?似合う!?」


 つまり、サンタコスをしたリンナである。冬であるなら寒そうだが、相変わらずのアバタールの暑さのおかげでちょうどいいのかもしれない。ちょっと露出度あるし。

 リンナはサンタの服が余程気に入ったのか、キャッキャッと嬉しそうに動き回りながら僕にその輝かしい姿を披露してくれた。


「・・・セラさん」


「なに?」


「メリークリスマス」


「こいつは・・・。」




★★




 宿屋の部屋で、多少キラキラとした装飾が取り付けられている空間の中で、なぜかセラさんと僕もサンタコスを着ていた。あ、僕は犬用のサンタコスだからね?女装はしないから。

 まぁそんなわけで、異世界なのにサンタクロースが三人いる奇妙な構図をしながら、まるで会議する様に円陣状に座って飲み食いをしていた。


「・・・で、眼福したところで・・・セラさんは一体何がしたいってのさ。」


 僕が鮎のような魚の丸焼きを二足歩行モードで齧りながら、セラさんに尋ねる。味はまんま鮎だな。淡白だけど濃厚な味と噛みやすい白い身が堪らない。


『リトルデザートフィッシュを摂取。肺活量の成長を促進させます。』


 よぉぉぉく味わい、食事を堪能していたところに、頭に響くアナウンスが脳を揺らした。

 またこれかよ。ほんっと新しい食べ物を食うたびにこれだよ。この前僕のお祝いでセラさんが用意した食事の肉とか魚とか食うたびに聞こえてきてたし。

 いや、一度食えば聞こえなくなるし、強くなる成長速度も速くなっていくみたいだから、あって感謝するべきものなんだけど・・・釈然としない何かがある。


「クリパやりたい。」


 セラさんがアイスのようなものをペロペロ舐めながら、僕とリンナに向かって言ってきた。

 思わぬ言葉に・・・まぁ大体は予想していたけど、驚いて間抜けな声を漏らす。


「は?」


「クリパ。クリスマスパーティーの略」


 知っとるわい。


「そんなもんして、何がしたいのさ?」


 そうなのだ。一体そんなことをしてどうしたいのかが謎なんだよね。昨日まではギルドで依頼を受けた後稼いだりして、その最中にアバタールの外で修行したりする日々を送ってたからさ。

 突然急に「今日は休む」とか言い出したから何かあったのかと思ってた。

 なんだ?パーチーすると力とか上がったりすんの?

 とか思っていると、セラさんが首を傾げて簡潔に言った。


「思い出作り。」


 ・・・それだけ?

 僕は少し呆然となってセラさんを見つめる。


「・・・それだけ?」


「ん?それだけ。」


「・・・死ぬの?セラさん。」


「どうしてそうなった。」


 いや、思い出作りとかセラさんなんか不治の病におかされているのかと思ったんだよ・・・。

 しかし、そうか、セラさんが思い出作りねぇ・・・。


「セラさんなにか辛いことあった?」


「ぶっ飛ばしていい?」


 サンドバックはいやだな・・・。


「・・・私がみんなと楽しみたいと思っちゃ悪いか」


 セラさんが「むぅ」と頬を膨らませて僕を睨んでくる。ボケではなく、本気らしい。

 だっていままで色んな事に遭ってきたし、勘繰ってもしょうかないと思うんだけど・・・。

 僕が反応に困っていると、なぜかリンナも怒ったようにほっぺを膨らませて僕の尻尾をベシベシと叩いた。


「カザミ、いつも師匠、疑っちゃダメ!」


 リンナが強めに言った言葉に、セラさんが便乗するように小さく「ソーダソーダ」と言う。そんなことしてるからだよ。だから疑うんだってばよ、セラさん。

 しかし今この場には僕の味方はいない。いつまでも疑っているわけにもいかなくなったので、諦めて信じることにした。


「わかったわかった!セラさんは単純にクリパやりたいんだね!?」


「やりたい。」


 「うむ」とセラさんがあぐらをかいて腕を組み、頷く。

 ・・・信じていいのかこれ。


 セラさんの計画だとこうだ。

 アバタールの外へ行き、レドやトカゲ三兄妹を連れて人が通らない荒地まで行く。どうやら夜になると星空と風景がマッチしてすごく綺麗に見える場所を発見したらしい。

 んで、そこで景色を楽しみながらご馳走やら食物を食って一泊する。ということだ。

 身内だけでやるパーティーだからそこまで凝った内容ではないようだ。まぁその方がやる方も気楽でいいんだけどね。


「というか、こっちにクリスマスがある事に驚きなんだけど。」


「ん。私も。・・・親からクリスマス聞かされたときは爆笑しそうになった。」


 なぜ笑う。


「いや、私の知ってるクリスマスとここのクリスマス・・・だいぶ違うのよ。」


「いや、そりゃぁ・・・そうでしょ。」


 隣にはリンナもいるので、わざわざ「異世界」という単語は使わずにそれっぽく仄めかしながらセラさんと会話をする。

 案の定リンナはすこし意味がわからないと言った風に小首を傾げて「?」を頭上に浮かべてた。かわいいげふんげふん。

 するとセラさんがコホンと咳払いをする。


「む。ならば何故クリスマスができたのか・・・その話を聞かせよう。」


「へぇ、聞きたい聞きたい!」


「私もっ!」


 セラさんの話に興味を惹かれた僕たちは、その話に好奇心を持って行かれた。

 おそらくセラさん的には話題について行けないリンナに気を利かせたんだと思うけど、正直異世界のサンタがどんなものなのか聞いてみたいという気持ちもあった。


 ・・・あとから僕は、聞かなければよかったと後悔した。




   """。・:*:・゜☆メリークリスマス・:*:・゜☆"""



 昔々、あるところに一人の魔人がいました。

 その魔人は、人懐こっこそうな笑みを浮かべながら、トナカイの魔物レッドノーズ・ルドルフを使い魔とし、子供たちが眠る貧しい村にやってきました。

 その背中には白く大きな袋にプレゼントと評した品々を収めながら。


「へぇ、実際にいたんだ。」


 魔人はある一軒家に忍び込むと、ベットの上で寝ている母と父、そして一人息子の眠る三人家族を見つけました。

 毎日土を耕し、作物を育て、一般から見れば辛い暮らし。それでも毎日にささやかな幸せを感じながら生きている一家。微笑ましそうに魔人は一家を見つめると、袋から《プレゼント》を取り出しました。


「お、ここでか。」


 プレゼントは・・・3メートルはある巨大なチェーンソーでした。


「ふぁっ?」


 魔人は振り上げたチェーンソーを容赦なく寝ている一家に叩きつけます。

 突如はじけ飛ぶ血肉。ギュイィィィィィィィンッ!!という回転する不気味な金属音を悲鳴のように鳴らしながら、魔人は一家全員、そして家すらも粉々に粉砕しました。


「どこの殺人鬼だよ!?」


 口を覆うほどの白いヒゲに血液が付着し、魔人はそれを美味そうに舐めます。


「ただのサイコじゃねぇか!」


 着ていた分厚い毛皮の服は血によって真っ赤に染め上げられ、人を喰うように裂けた口で笑いながら、その家だけではなく周囲の家も破壊していき、最後にはその村の全てに血の海が広がり、燃え盛る炎の嵐が飲み込んで行きました。


『ヒャッハァァァアアアアアアアアアア!ハッピィメリィィィクリスマァァァァァス!!』


 と叫びながら。


「どっかにいたぞこんなサンタ!」


 彼の名こそ《サタン=タイニス=クロス》。別名サンタと呼ばれ、12月24日と25日に人々の命を刈り取る悪魔として名を馳せ、世界を恐怖のドン底に叩き落とした張本人であった。


「知らねぇェェェェっ!!んなサンタ知らねぇぇぇぇぇぇっ!?」





 その日のパーティーは、僕だけガクガク震える恐怖のクリスマス会となった。

 レドがゲラゲラ笑ったので飛び蹴り喰らわしといたよ。


 ちなみになぜ祝うのかというと、勇者なるものがサンタを倒したから世界に平和が訪れ、それを祝うためにするものらしいよ。

 きっとサンタは僕ら非リアの化身だったんじゃないかな・・・?









挿絵(By みてみん)


後悔してない。


あ、アクセスが10万突破できましたあざす!ブックマークも200件になれました!今はね。下がるかもだけど。


なぜ200で喜んでるか?

忘れた設定でカンストできたからよ。


さて、ゲームしよっと。狩りゲーをね。クリスマスはゲームに限る。

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